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ミスチル歌詞から紐解く アルバム全曲解説 18thアルバム「REFLECTION」{Naked} ① [fantasy]

18thアルバム「REFLECTION」最初の曲。歌詞全文引用します。

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隣の人に気づかれぬように僕らだけの言葉で話そう
知られちゃマズイ たいそうな話は特にないけれど

ごみ箱に投げ捨てたファンタジーをもう一度拾い上げたら
各駅電車をジェットコースターにトランスフォームして[不可能]のない旅へ

「誰もが孤独じゃなく 誰もが不幸じゃなく誰もが今もより良く進化してる」
例えばそんな願いを 自信を 皮肉を
道連れに さぁ旅立とう

想像を超えた猟奇殺人さえ今や日常 ドキュメンタリー
いちいち心動かないよ 免疫ができ右から左

「事件」{こと}の裏側」すら簡単に閲覧{のぞ}けて分かった気になる
でも本当は自分のことさえ把握しきれない なのに何が解ろう?

「出来ないことはない」「どこへだって行ける」
「つまずいても また立ち上がれる」
いわゆるそんな希望を 勘違いを 嘘を
IDカードに記して行こう

昨夜{ゆうべ}見た夢の中の僕は兵士
敵に囲まれてた
だから7人の敵と吠える犬を撃ち殺して逃げた

「僕らは愛し合い 幸せを分かち合い
歪{いびつ}で大きな隔たりも越えて行ける」
たとえばそんな願いを 誓いを 皮肉を
道連れに さぁ旅立とう
日常の中のファンタジーへと

<出典>fantasy/Mr,Children 作詞:桜井和寿

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桜井さんはこの曲の解説で

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イメージはスピッツの「ロビンソン」。でも僕らがやるとちょっと強いものになるというか、押しつけがましいというか(笑)。そういう感じになるんですよね。ツアーの一曲目はこの曲で始めたいと思っていました。

<出典>Sound &Recordingインタビューより

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「REFLECTION」のツアーは新曲中心に行うという斬新な試みで行われました。この「fantasy」はBMWのCMソングに起用されていたためサビの部分は。ミスチルファンなら事前に繰り返し聴いていたでしょう。ただ、このキャッチーなサビからは想像がつきにくい、曲のイントロから始まるわけで、手探り状態のオーディエンスはサビが来た時にあぁあの曲かと気づいたことでしょうね。そんな狙いを込めてツアーはこの曲からとしたのかもしれません。

「ファンタジー」の意味は[空想][夢想]、「fantasy」と英語になると[夢物語](かないっこない的ニュアンス)の意味がありそうです。タイトルの字面も「fantasy」とあるので「夢物語」意味の方で捉えると歌詞全体のストーリーは捉えやすいと思います。根拠は<<ゴミ箱に捨てたファンタジーをもう一度拾い上げたら>>ってありますが、この一文で捨てちゃった、諦めちゃった「夢物語」って捉えるとしっくりきますよね。

全体としては「空想」や「夢想」ではなく、諦めた夢を日常に取り戻そうという「希望」を抱かせる内容だと思います。ただ「希望」の中にそりゃ非現実的な叶わない夢をおいかけるのもどうなんだ、あきらめちゃったんでしょ?君たちサラリーマンはみたいな。皮肉のニュアンスも込められていると思います。根拠の歌詞は<<各駅電車をジェットコースターにトランスフォームして[不可能]のない旅へ>>この歌詞よく見ないとなんか、各駅電車をアップグレードしてジェットコースターでビューンと前進みたいな感じがしますが、冷静に捉えると、頭が混乱してる様子を言語化していることがわかりますね。「不可能」のない旅って言ってるのに、各駅電車をジェットコースターに変形させるって、それ「不可能」やんってことですよね。それに一見ジェットコースターって猛スピードで前進する希望の乗り物みたいに感じますが、実際は遊園地内をグルグル回って、元の位置に戻るっていうループを繰り返すだけで、前進は一切しない。確実に前進するのは各駅電車の方ですね。こんな夢想、幻想に気づかぬうちに洗脳っぽくされちゃってるよねっていう皮肉が込められていますよね。まさしく

一筋縄でいくような希望の歌は書かないでしょう、このお方は。

スピッツのロビンソンでは「猫」が登場します。この曲には「犬」が出てきますから、これはやっぱりロビンソンをイメージしているんでしょうね。こんなふうに多面的にとらえられるストーリーをキャッチーなサビで表現した曲をど頭に持ってくることでの、このアルバム「REFLECTION」の傑作性を大きく担っている、深い曲だと感じます。

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