[応募作品]『三匹の竜と荒天の庭』:3話

ガタイのいい男)「おい、警察にさっきの爬虫類のことチクってこい」
いじめっ子A) 「え、黙っておくんじゃないの?」
ガタイのいい男)「お前なぁ、そんなんだから女に馬鹿にされるんだよ。金も貰うし、秘密も守らねぇ。あんな爬虫類がこの街にいて良いと思ってんのか。いいから行け」
いじめっ子A) 「そっか、兄ちゃん頭いいね。行ってくる。」
ガタイのいい男)「さーて、何が起きるのかなぁ。」

ヴェルとホーガンは気まずい空気のまま帰路についた。帰り道の間、二人は一言も言葉を交わすことはなかった。

ホーガン)「おい、晩飯の用意ができたぞ。降りてこい!」
ヴェル)「いらない!お腹空いてない!」
ホーガン)「勝手にしろ」

ヴェルはベッドでうとうとしているうちに寝入ってしまった。起きた時には外は暗くなり始めていた。少し眠って気分も落ち着いたのか、ヴェルはホーガンに言い過ぎたことを心配し始めた。

ヴェル)「ジジイに悪いこと言っちゃったな…。謝らないとな。」
ヴェル)「あれ。どこ…」
???)「警察にお前たちのことで通報があった。うまく隠れてたようだけど、ボロが出たみたいだな。
ホーガン)「あの野郎、喰えない奴だ」
???)「交渉するか?ホーガン。そうだなぁ、明日までに100万ゴールド用意できるなら黙っといてやるよ。あ、秘密は守れないかもしれないがなぁ、がははは」
ヴェル)「ん?外にいるのジジイ」
ホーガン)「来るな!ヴェル!」
???)「おやおや、起こしちゃったかな。こんばんは。」
ヴェル)「誰?友達?」
ビガー)「そう、私ホーガンの友達のビガーと申します。あなたがヴェルちゃんですね。会いたかったんですよーあなたにずっと。」
ホーガン)「いいから中にいろ。」
ヴェル)「そんなこと言われたって、なんの話しているのよ。」
ホーガン)「お前には関係ない」
ヴェル)「また関係ない?関係ない関係ないって、そればっかり!」
ホーガン)「黙ってろ、いいから中にいろ。」
ビガー)「喧嘩しないでくださいヨォ。聞かせてあげても良いじゃない。」
ホーガン)「お前も口を出すな!」
ビガー)「(肩をすくめる)おぉ怖い怖い」
ホーガン)「教えろ!俺はまだ監視対象だったのか?」
ビガー)「そうだね。あの事件からずっとだ。ずっと監視されてるよ。今日は別件で街にきたんだが、通報を聞いてね…運命だと思ったよ。逃げられないねぇ」
ホーガン)「警察にも手を回していたとはな…」
ビガー)「だって基本でしょうー。それにお前に教わったことなんだけどなぁ。」
ホーガン)「詰んでたってことか。」
ビガー)「そういうことになるねー。それにしても彼女、親そっくりだ。母親?いや父親似かな?」
ヴェル)「私の親?!なんのこと?なんの話をしてるの?」
ビガー)「あらー、何も聞かされてないんだぁぁ。可哀想に。そりゃあ知ってますよ。あなた有名人ですもの。何せあなた…」
ホーガン)「やめろ!!!」
ビガー)「なんで止めるんです?」
ホーガン)「それ以上言うな」
ビガー)「どうして?本人も知りたがってるのに。教えてあげましょうよ」
ビガー)「住民、全員殺したんですから。」
ヴェル)「え?」
ビガー)「申し遅れました。私、反竜人派のビガー。そこのホーガンも同じ組織出身なんですがね。宗旨変えかな。」
ヴェル)「どういうこと・・・」
ビガー)「いやー、あの時の爆発は強烈だったなぁ。炎の紅ってのはああでなくちゃね。それに私は涙が出るほど感動して…」
ホーガン)「もう止めろ!!このクズが!」

我慢しきれずにビガーに殴りかかったホーガン。しかし、ビガーは鋭い刃物でホーガンの腕を切り付けた。

ビガー)「止めてよー、急になんですか?驚いて思わず切っちゃったじゃない。」
ヴェル)「ジジイ!?」
ホーガン)「クっっ…」
ビガー)「新しく作ったこの水竜の剣がもう使えるとは…。しかも初戦が旧友とは…感動で涙が止まりません!」
ホーガン)「ヴェル!捕まってろ!」
ビガー)「逃しませんよ!」
ホーガン)「ぐわぁぁ!クッ…」
ホーガン)「ハァ……ハァ…」
ヴェル)「大丈夫かジジイ…」
ホーガン)「大丈夫だ…けど少し休ませてくれ…ハハ、もう金を払わなくてよくなったな。」
ヴェル)「ジジイ…どういうことだ。私、私がお母さんたちを…殺したの…?」
ホーガン)「お前じゃない…お前は悪くない。おれだ。俺が悪いんだ…。」
ホーガン)「組織の命令でな、俺の部隊は故郷に潜入してお前を攫うつもりだった…。けど結果がこれだ…。情ってのは怖いもんだ。村の奴らと戦うことなんて出来なかった…裏切れなかったんだ…。」
ホーガン)「組織は俺が裏切ることも見越して保険をかけてたのかもな。部下が最終的には全部やったよ、せめてお前だけは守りたかった。親になる資格なんてかけらも無いのにな…」
ヴェル)「何いってんだよ!ジジイ。さっきは”親じゃない”とか言ったけど、そんなの思ったこと一度もない!私のお父さんだよ…!」
ホーガン)「ヴェル…」
ヴェル)「だからお願い…!死んじゃだめ!」
ホーガン)「ヴェル…あの時は怒鳴ってしまったが、お前が人をいじめから救ったことを聞いたとき、おれはすごいと思った…。おれが教えることはもうなにもない…。もう、立派な10才になったんだな…。おめでとう…。」
ビガー)「もう良いですか?昔から話が長くて空気読めないの変わらないなぁ・・

ビガーの水竜の剣がホーガンの心臓を貫いた。

ヴェル)「おい、ジジイ、ジジイ!」
ヴェル)「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ビガー)「(鼻歌を歌っている)あいつの火を使って〜♪最強兵器を作るのさ〜♪一発でまるこげさ〜ん♪木っ端微塵で大喝采!♪。おっとまさか聞かれてました?お恥ずかしい!」

ヴェルは感情のままに泣き続ける。

ヴェル)「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ビガー「では、ヴェルさん一緒に来てもらいましょうか。」
ヴェル)「止めろ、離せ!離せ!!お前を燃やす。燃やす!」
ビガー)「おぉ、怖い。まったく最近の子は礼儀ってものを知らない。それに学校にも行っていないのかな。理科は知っていますか?大抵の子どもはみんな知っているはずなんだけどなぁ、水と火はどちらが強いでしょうか?答えは馬鹿でもわかるんだけどな!ホーガンに何も教わらなかったのかなかな、ハッハッハ!」

ビガーの剣がヴェルの太ももを貫く。紅い血だまりができ、徐々に大きくなってくる。

ビガー「あ、もう1本あったんだった。」

ビガーは2本目の剣をヴェルの腹に突き刺す。

ヴェル「うぅぅぅぅ、痛えぇぇぇ」
ビガー「こんな手荒な真似は、らしくないんだけどなぁ。でも、こうでもしないと連れて行けないからさぁ。気絶するくらいは血を流してもらうかぁ。
ヴェル)「お前ぇぇぇ、絶対に許さないぃぃ。」

涙と鼻水に濡れた顔でビガーを睨みつけるヴェル。

(ヴェルの回想)ヴェル、腹の底から力を込めろ。そして溜めたものをありったけ相手にぶつけてやれ。

ヴェル)「うわああぁああ!」
ビガー)「何!?剣が蒸発して…!ぐあわあああああっあつああ!?」

ヴェルが腹に溜めたエネルギーがビガーの剣を溶かし、思いっきり吹いた炎でビガーを焼き尽くした。黒焦げの死体になったビガーが足元に転がっている。

ヴェル)「ジジイ…これからどうして行けばいいんだよ・・・。もう何処にも行くところないよ」


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