シータ001

【3分間ラノベ】親方ぁ、空から女の子がぁ。

「親方ぁ、空から女の子がぁ」
「おいおい、今日は金曜日じゃねーぞ」
「いや、それが……」
「まあ、降ってくるなら男手の方がありがたいがな」
「いや、でも……」
「ああ?なんだってんだ?」
「いや、ほら、あれ……」
「ん?おお、本当に人が降って……ってえらく速いな」
「ほぼ自由落下ですね」
「……」
「……」

「お前、スカイダイビングの落下速度がいくつか知ってるか?」
「えっと…」
「時速200km~300kmだ」
「え?」
「新幹線とあまり変わらないな」
「……」
「逃げるぞ」
「……」
「緊急事態だ!総員退避、総員退避!」
「……」
「おい、お前も早く逃げろ」
「……」
「おいっ」
「嫌です」
「何ぃ!?」
「だって、だって、女の子が落ちてくるんですよ!このまま逃げるなんてできません!」
「お前にはあれを無事に受け止める方法があるのか?」
「それは……」
「できないことはさせられない。逃げるぞ」
「でも、でも、空から女の子が降ってくるのは、男のロマンじゃないですか!」
「まあ、わからんでもないが」
「俺の夢なんですよ!」
「帰ってこい、現実に!」
「俺はラピュタへ行くんだー!!」
「だから今日は金曜日じゃねえー!!」

「だって、だって……」
「それにな、よく考えろ」

「何を、ですか?」
「あれは本当に女の子なのか?」
「え?だって……」
「お前はなぜあれが女の子だと思う」
「それは、服はひらひらしているし、髪形もおさげっぽく見えるし」
「そんな格好した男なんて、この町に何人もいるぞ」
「そうなんですか?!」
「ああ、二丁目になんて掃いて捨てるほどいる」
「親方、まさか……」
「えっ?!違う、おれは違う!」
「そんなことより、あれは男かもしれません。でも女の子かもしれないじゃないですか」
「その通りだ」
「だったら!」
「お前は、命をかけて助けたのが女装野郎だったとき、その事実を受け止めることができるか?」
「できません」
「即答かよ」
「俺は、それでも……」
「わかった。あれが女の子だったら受け止めろ。男だったらあきらめろ」
「でも、どうやって確かめれば」

「もしもし、山さん?急で悪いんだが……ええ、今すぐに。お願いします。この借りはいつか精神的に、ええ、じゃ」
「親方、いまのは?」
「あのビルを見てろ」
「あっ、超大型ビジョンにあぶない水着の女が!」
「試験中なのを、無理言って動かしてもらったんだ」
「まさかあれに反応したら、落下してくるのは男だということですか?」「そうだ」
「えええ……」
「なんだよ?」
「いや、何でもないです」
「落下対象に変化は?」
「ありません。やっぱり女の子なんですよ!」
「まだだ」
「え?あ、画像が今度は、あぶない水着のマッチョに!!」
「念のために……あっ!」
「あっ!女の子が!そんな、そんな!マッチョへ飛んでいく!」
「あんな器用にスカートを」
「笑っている……」
「笑い声、男のだな……」

「……」
「泣いているのか」
「だって、こんなの、あんまりです」
「お前はこの現場を守ったんだ。胸を張れ」
「……はい」
「今晩、飲みに連れていってやる」
「あ、ありがとうございます!で、どこへ?」
「二丁目にいい店をしっている」

(終わり)

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