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読書譚9+1「勉強法」、「僕ならこう読む」
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【勉強法】
2018年4月10日 初版発行
著者:佐藤 優
発行所:(株)KADOKAWA
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【僕ならこう読む】
2017年2月15日 初版発行
著者:佐藤 優
発行所:(株)青春出版
▽読書譚9+1
今年は数年ぶりに図書館通いを再開したのですが、面白そうな本を気兼ねなく手にできるというのはやっぱり良いものです。
もちろんお金を払って購入する本は尊いものですが、購入を躊躇するような本を図書館で借りて読んでみる、というのは新たな領域の入口としてはとても良いものだと感じています。
佐藤優さんの著作は、自分にとってまさに「購入を躊躇する」ものでした。特別な理由は思い当たらなく、知識人として優れている著者の存在を十分理解しているつもりではいたものの、これまでなぜか手に取って読むという行為に至ることはありませんでした。
どこかに、外務省-ロシア-北方領土問題-逮捕といった負のイメージがあったからなのかもしれませんが、今回この2冊を手に取ってみて、もっと早く偏見というフィルターを除いておけば良かったと少しだけ後悔をしています。
▽蘇った懐かしい感じ
ここにあげた2冊のうち、「勉強法」は図書館の軍事コーナーで見つけました。本書は2016年に発行された「危機を覆す情報分析 地の実践講義(インテリジェンスとは何か)」に加筆修正をしたものとされています。
ところで、私が20代の頃は落合信彦さんという作家の本にハマっていました。いまなら落合陽一さんのお父さん、といったほうが、ピンとくる人も多いかもしれませんが、当時はオイルマネーの話しとか、CIAやMI-6、モサドとかKGBとか、自分とはまったく関係のないスケールの大きな話しに、そんな世界もあるのか、と空想しながら読んでいたことを思い出します。
ジャーナリストという立場の落合氏と、外務省という実務の立場の佐藤氏とは当然実際のところは違うのは当たり前ですが、佐藤氏の文章を読んでいて、どこか懐かしいと親近感を覚えたのは、両氏の強い意志を感じさせる文章が似ていると感じたからかもしれません。
▽寄り道や回り道でみられる景色
今回読んだ2冊は、いずれも佐藤氏が進める書籍が掲載されています。以前は人が進める本や、新聞の書評欄を読んでその本に興味を持つということはあまりなかったのですが、最近こうした自分の傾向が明らかに変わってきた自分がいます。
なぜなのかと考えてみたのですが、来年50歳を迎える中年にとっては、ひょっとすると寄り道をする時間がもったいなく感じてきたからなのかもしれません。
20代そこそこの頃は、紀伊国屋や有隣堂で2-3時間ブラブラするのも楽しい時間でしたが、最近はそんな時間はもったいないなく、また贅沢な時間となってしまいました。だから、書評を呼んで興味を持った本を読むことも増えてきたのかもしれません。
しかし最近図書館通いを再開したことで、また少し違う感じも湧き上がってきました。気になる本はドンドン借りて読んでみる。つまらないな、と感じたら遠慮なく読むのを止める。そして、また次の本に遠慮なく目移りしていく。
そうして、自分に示唆をくれる新しい出会いの機会を得ることが、楽しみになってきているのです。
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▽思えばよくやってきたものだと思えるのもまた経験
20代の後半。貧乏をしていたころ、TVが壊れたのを契機に3年ほどTVのない生活をしていたことがありました。今のように、スマホがある時代ではありません。だから、You tubeという選択肢はありませんでした。
この3年間はひたすら図書館の本を乱読していました。茶道や落語のCDなんかも借りたりして、あまり興味のない分野のものも借りていたことを思い出します。
でもこんなことができていたのは、まだ独り身で、しかも会社に所属していなかったこともあって、時間が十分にあったからでした。今にして思えば、よく今は東京にある会社に勤めさせてもらっていると我ながら思います。
ただこうした時間を後悔したことは、これまでただの一度もありませんでした。今となってはすべて失敗談になってしまっていますが、当時自分のやりたいことに向かって歩みを進めていた自分が、たしかにそこには存在していました。
「僕ならこう読む」のなかで、佐藤氏も次のように述べています。少し長くなりますが、引用したいと思います。
「たとえば、医学部を目指していたが落ちてしまった。それにとらわれて、もっといい高校にいっていたら入れたのにとか、医者になれなかったから今のように収入が低くなってしまったとか、自分の過去と現在、未来にまでわたって悲観したり否定したりする人がいます。こういう人はストーリーの作り方が下手だといえます。
そうではなく、だからこそ今のパートナーに出会えた、新しい友人を得られた、あの挫折があったからこそ今の自分がある、などと考えることもできるはずです。自分の選択をあたかも導かれた運命のように感じること。それが現状を肯定し、前向きかつ主体的に生きることにつながる、上手なストーリーづくりなのだと思います。
▽景色の広がりを楽しむ
どこかで敬遠していた佐藤優氏の本。でも、今回の2冊を通じて、これから手にとる機会が増えることが確実になりそうです。もっとも著者からしてみれば、若い人にこそ読んでほしいと思っているはず。
本も旅も、食わず嫌いをしないで胸襟を開いて受入れてみると、想像していなかった景色が広がっていることを、いくつになっても忘れないようにしたいものです。
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2021.12.18 阿部 勇司
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