2022年度診療報酬改定の方向性(5)
こんにちは。ホワイトボックス(株)コンサルティング部の阿部です。
これまで3回に続いてnoteに掲載してきた「診療報酬改定の方向性」シリーズ、今回は第4弾の「慢性期編」の記事と資料をここにあげておきたいと思います。
前回までの記事はコチラ ↓
▽病院にはそれぞれ「役割」がある
以外に知られていないかもしれませんが、病院にはそれぞれ役割があります。
新しい医療や先進的な医療を行う大学病院のような「高度急性」病院。
救急車を年間数百台受け入れているような「急性期」病院。
上記2種類の状態、いわゆる状態が急に悪くなった急性期的な症状は落ち着いたものの、社会生活に復帰するにはいましばらくの治療やリハビリが必要な人を受入れる「回復期」病院。
そして、主に高齢者を受入れている「慢性期」病院。
病院にはこのような機能があります。ときどき「あそこの病院に入院したら死ぬまででてこられない」という話しを聞くことがありますが、そうした病院が「慢性期」機能を有する病院の場合には、むしろそれはその病院の機能を十分に果たしているということにもなります。こうした慢性期型の病院では、多くの「お看取り」が行われているのです。
▽診療報酬は2年に1回改定される
私たちが受ける医師の診察やリハビリ、薬をもらうための処方箋など、あらゆる医療行為にはすべて公定価格が決められています。なおこれは病気やケガをしたために治療が必要な場合に限られ、痩身や美容を目的としたものは、いわゆる「自費診療」と呼ばれ、保険診療の埒外となっています。
ところで、この診療報酬というのは2年に1回改定されます。これには世の中の経済や時代を反映させる必要があるためで、景気の良かった時代は診療報酬はプラス改定が続きましたが、ここ20年近くは必ずしも医療機関側にとっては十分な見直し内容とはなっていないといえます。
というのも、医療機関の利益率というのは必ずしも高くはありません。
基本、医療が看護師さんや理学療法士さんなど「人材」を多く配置することで評価されているため、収益(売上げ)に対して人件費が高くなりがちなことも背景の一つとなっているからです。
結果、利益率はが10%あれば優秀なほうで、2~3%程度といったことも珍しくはないといった現状があります。
▽2022年の改定率は+0.43%?
22年度の診療報酬全体の改定率は△0.94%となりました。診療報酬の中身は、病院などが受け取る医科と、調剤薬局が受け取る調剤、歯医者さんの歯科があり、また薬の公定価格を決める薬価と、治療に使う材料などの材料価格があります。医科+調剤+歯科=診療報酬で、薬価と材料価格の3つの階層があると理解してもらえれば良いかもしれません。
来年の改定では、このうち薬価が△1.35%で、材料価格が△0.02%となりましたが、診療報酬は+0.43%で、このうち医科は0.26%に過ぎません。とはいえ、おそらく新型コロナウィルス感染症の広がりがなかったら、22年度の診療報酬改定はまったく毛色が違ったものになっていたかもしれません。
昨年誕生した岸田内閣は、看護師の給与を段階的に最大で3%程度引き上げることを示唆し、来年度の改定でもこのことが反映されての今回の決定となっているのです。
▽個別の内容は年が明けてから
さて、この診療報酬の個別の内容は、年が明けてからにならないと明らかにはなりません。
しかし、これまでのnoteに取り上げてきたように、「来年の改定はどうなりそうか?」を事前に情報収集しておくことで、少し早めに、かつ余白を持った準備をすることができると認識しています。
とはいえ、いまはコロナ禍真最中。日々の業務に忙殺され、それどころではないという医療機関も少なくないと思います。ただ、それでもやるところと、やらないところでは差がでてしまうことは否めません。
割くことができる時間は少ないとしても、頭の片隅には置いておきたい事項だと考えています。
▽おわりに
診療報酬改定のシリーズ記事は、私が編集を担当しているメルマガをnote用に書き下ろしたものとなっています。
本来であればメルマガの登録読者用記事ですが、診療報酬改定は来年4月。賞味期限もあるものですので、こちらにも転載させてもらっています。
本記事をご覧になってメルマガに興味をお持ちいただいた方は、下記のサイトにもお立ち寄りください。過去のバックナンバーがご覧いただけます。
それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました
2021.12.23 阿部 勇司
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