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書こうと思っていた小説の怖い部分を抜粋


 梨花は気付いていた。気づいていたが敢えて気付かなかった、というより目を向けないようにしていたのだ。寝室のクローゼットの横にあるわずかな隙間を。見てしまえば現実のものになってしまう。目を背けていれば、見さえしなければ、今まで通り何事も無い。しかし梨花はもう意識してしまった。脳内から消すことはできないのだ、あの暗い隙間を覗き込んだときにこちらを凝視してきた二つの血走った眼を……

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