とてもグレーなことだけど

#3 12月27日2021年

 大阪のメンタルクリニックで起こった痛ましい事件。犠牲になった方が25人にもなった。1フロア1店舗の恐らくはそんなに広々していない造りの雑居ビルに、30人近い人間が一度に集まるようなクリニックだったようだ。案の定、亡くなった方々の人となりが報道されているのを目にした。「いつものことか」とは、ちょっと言えない違和感を覚えた。今回に限っては。恐らくは、遺族の方の思いがあって故人への弔いの気持ちや世間への警鐘の意味もあるのだろうとは想像できる。だけれども、それとこれとをないまぜにしてはいけないのじゃないか?と思う。

 つまり、亡くなった患者は、病院と契約書を取り交わしていると思う。病院の責任者である先生も亡くなってしまっているけれど、契約内容は解除されてはいないはず。つまり、秘密保持の義務があるはずだ。契約書の存在の有無にかかわらず、倫理としても人物の詳細を公表して良いかNGかを肉親と言えども勝手に判断してはいけない。それほどに高度なプライバシーが守られるということが安心材料になる場所であるはず。こんな風に報道の演出材料に使われて消費されるんではおちおち死んでもいられないということになる。

 ここの先生は患者の立場に立って素晴らしい診療を行っていたという。そうであるなら、先生もこれに関しては天国で悔やんでいると思う。プロならば、自分の死よりも、この情報の取り扱いを残念に思っていると思う。

 私のこの感覚は、違うんだろうか?精神科の学会や臨床心理に関する権威の方々から何も意見は無いのだろうか?とてもグレーな所だとは思う、だけど、敢えて、こういう時に世間に発信することで、心理界隈の社会的な認識がより良くなると私は思うのだけれどね。人の尊厳というものの取り扱い方を示す好機だと私は思った。

*この記事を書いた少し後に、心理界隈の団体がこれについての意見を出していた。それを見て少しほっとした。地位向上のためにも意見を発信するべきだよね。


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