見出し画像

梶原一騎原作漫画読破への道(1)

読破への道・序章

「梶原一騎の原作漫画(※1)を全て読みたい!」
そう思いたったのが1998年。それから21年かけて達成した道程を語っていこうと思います。記録らしいものを何もつけていないので時系列とかは無視してポツポツと思い出しつつ、ゆっくり更新していきます。ペースがつかめる迄は不定期になりますが、よろしくお願いします。
さてまずは、私の読破へ道のキッカケとなった重要な一冊・斎藤貴男著『夕やけを見ていた男/評伝 梶原一騎』(新潮社刊)と、その第一歩の話をしたいと思います。

※1…公式に言われている週刊少年マンガ誌でデビューを飾った1962年(正確に言えば62年正月号が発売された61年末)以降に原作を書いた作品が対象

画像1

1965年の生まれの私は、梶原作品をまずテレビで観て知りました。再放送の『巨人の星』です。もちろん当時はビデオデッキなんてものはありませんから、その作品を好きな時に繰り返し見れる手段として単行本を買う訳ですね。『あしたのジョー』『タイガーマスク』『侍ジャイアンツ』『赤き血のイレブン』『夕やけ番長』…。その頃よくテレビで放送されていたものは買い集めてました。ただ当時は作品タイトル=漫画家で記憶していたので原作者の存在はまったく意識しておらず“梶原一騎”の名前に気づいたのは随分後のことでした。ある時気分転換に本棚の漫画を並べ替えていたら、絵柄の違うバラバラな作品の背表紙に、同じ名前を見つけたのです。さらに大好きな『あしたのジョー』もそうだと知った時の驚きといったら…。しかし、そこから先に深く関心が向く事はなく大人になっていきました。例の逮捕騒ぎ、闘病、復帰、死去…リアルに体験できたことは全てスルーしてしまったことは今でも痛恨の極みです。
 そして時は経ち1995年。ふと立ち寄った本屋で見かけ、気軽なノスタルジー感覚で購入した斎藤貴男氏の評伝本“夕やけを見ていた男”を読んだことが、劇画原作者・梶原一騎と作品たちへの興味へと繋がった訳です。

画像2

この評伝を読んだことで、梶原一騎氏と作品への興味を持った私が始めたこと。まず本の中であげられている作品タイトルを全て書き出し、単行本を持っている作品・読んだ記憶がある作品・知らない作品に分類しました。掲載誌名や連載時期、手がかりになりそうなことも補足につけてリストを作成してからは、休日や仕事の合間をみつけては古書店通いの日々でした。
もっぱらのテリトリーは神保町と中野。店に入って棚を見る。作家別に分けてる場合は“か行”や“梶原一騎(高森朝雄)”をチェック。そうでない場合はおいてある漫画の背表紙の文字を端から端までじぃいいいいいいいっと見てチェック。あとはレジまわりとか、棚の上にあるセット売りの本もチェック。当時はまだ未婚で、“財布の金は俺の金。給与の金も俺の金”とジャイアニズムを発揮できた身分ゆえ(笑)、見かけた未所有本はさくさく買いました(この数年後“お宝本ブーム”がおこり、梶原作品の一部も価値が高騰してしまい入手に苦労し始めるのですが、それはまた別の話…)。部屋の本棚に続々増える梶原作品。情報が少ない中で自作のリストを頼りに収集を始めた私は思ってました。“連載漫画というのは、全て単行本化されており、リストにあるタイトルを読めば読破できる!”しかし、それが大きな間違いであったことに気づくのに時間はかかりませんでした…。

画像3

読破のためにその1・リスト作成

 大きな間違いとは何かを話す前に、1995年当時の状況などを書いておきましょう。現在なら、何かを調べるツールとしてスマホだのパソコンだのがありますが、当時まだ一般的にはパソコンもインターネットも普及しておらず何か探したり調べたりする足がかりとして人に聞くか、図書館や書店を利用する等アナログな方法しかなかったのです。ましてや業界内で今だ根強く残る梶原氏に対する不当な評価から関連情報もないに等しく、私のようなにわかファンには“何をどうやってよいのか”も分からない状況だったのです。
 そんな中、第一歩として作った作品リストを基に古書店巡りをしたことは書きました。そこでは運良く未読作品を見つける嬉しさもありますが、“リストにない知らない作品”と出会える嬉しさもある訳です。もー、すかさずCHECK&MEMO!ですね〜。その時全巻揃いで購入できるのがベストですが、当然巻数がバラバラな時もあります。古書収集の基本理念は“一期一会”。見つけたその時を逃すと次の機会では逃す場合が多いので、“まず3巻をゲット!”ってなこともある訳で…。主人公の背景も分からず展開される熱血ドラマと、この先どうなる!?な次巻への引きに悶えながら、パズル感覚な収集も楽しい記憶でした。
 さて、斎藤貴男氏の評伝本が呼び水となったのか、梶原一騎再評価の動きがじわじわと動きだし、この時期に同種の本が刊行されました。
蕪木和夫著『劇画王 梶原一騎評伝』・高取英編『「梶原一騎」をよむ』そして私の裏聖書(バイブル)といえる植地毅・宇田川岳夫・吉田豪他の共編『マンガ地獄変』です。これらプロのファンによる本との出会いは、梶原氏に関する知識だけでなく作品の読み方・捉え方など大変勉強になりました。が、それ以外にも私を狂気させたのが梶原氏の年表や漫画作品(映画・ドラマ化された作品含む)年表があったこと!これを整理・まとめる事で、これまでランダムな状態の作品リストに時系列の情報が加えられることなる訳です。上記3冊の出会いは私の情熱を加速させたばかりか、自身の考え方に対する大きな間違いに気づかされ、更なるディープな世界へと誘われたのでした。
画像4

画像5

↑当時作成した手書きの梶原作品リスト

(梶原一騎原作漫画読破への道・その2へ続く)