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梶原一騎原作漫画読破への道(3)

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今回から、読破した各作品毎に取り上げ、アレコレと語ってみたいと思います。ちなみに時系列(読破順)ではなく、私の思いつくままです。で、記念すべき1作目は『おれとカネやん』(週刊少年キング連載 画・古城武司)
 
 ホームページ開設当時、私は雑誌に掲載された漫画というのは“単行本化されるもの”“単行本化されないもの”の2つしかないと思ってました。故に単行本化された作品は全巻読めば、読破は達成出来ると考えていた訳です。しかし!それが間違いであった事に気付かされた作品こそが、この『おれとカネやん』なのです。
 それは渋谷で行われた古本市で、何気なく手にした週刊少年キングを読んだ事から始まりました。そこ掲載されていた『おれとカネやん』は、当時既に持っていた単行本(少年画報社刊・全2巻)にはない話だったのです!
「おれの野球人生は いよいよ本格的な段階にはいった!そんな気がするぜカネやん!!」 主人公の勝三四郎は2巻のラストで第二の金田正一になるべく新たな闘志を燃やすシーンで終わっています。その時の彼はまだ小学生。でも今手にしてる週刊少年キングでは高校生で甲子園のマウンドで投げていました。
……?(一旦雑誌を閉じる)……??(もう一度開き読み直す)……???(再び雑誌を閉じる)

…なんじゃぁこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

その時、渋谷東急百貨店の催事場内中には悲鳴にも似た叫び声が響き渡った…ということはなかったがw)、でも衝撃的な出来事でした。つまり、雑誌に掲載された漫画は“単行本化されるもの”と“単行本化されないもの”と、もう一つ。“途中まで単行本化されたもの”があるということを知った訳です。
「私は『おれとカネやん』を読破していなかった!」 この新事実が私の探究心に火を一騎…もとい一気につけました。しかし、2巻以降の続きを読む為に訪れた国立国会図書館に、私は苦しめられたのでした。

国立国会図書館の貸出方法の面倒臭さを文章で伝えるのは難しい。
現在デジタル化によって随分と改善はされたが、10年位前はまだアナログで、凄く、すごぉぉぉぉく面倒くさかった。あの苦労は、行ったものにしか共感してもらえないのではないかと思うので、詳しい説明は省く。

さて、まだ見ぬ「おれとカネやん」を求め国立国会図書館に行きました。
幾つかの手順を踏んだ後、1973年の週刊少年キングを申し込んだ私の目の前に出てきたのは、号数が飛び飛びで歯抜けな1977年の週刊少年キング!?
『NO!ミーが読みたいのはこれじゃない!!』『いやコレで正しいです』
『ホワイ?ミーは1973って書いてあるよ!』『いえ問題ありません』
…みたいな受取カウンター上での大バトル口論の末、国会図書館には少年キングの欠号が非常に多いことが判明する。しかも「おれとカネやん」連載期間の号は全滅。その日はまったく無駄足に終わってしまいました。翌週、無料がダメなら有料施設とばかりに現代マンガ図書館へ。そこでようやく目的の少年キングの存在が確認できました。閑話休題。ココの場合、問題は1回の利用で入館料に加え、雑誌1冊につき金額が発生すること。実はこの時、2巻の続きが何号からなのか分からず(連載開始号数は分かっていた)、かといって上記の事情から当てずっぽうに借りる訳にもいきません。
そこで私が考えたのが…当時のストーリ−漫画の掲載頁数と各話の流れで推理して号数を導くやり方。単行本の1頁目から扉絵分を引いてカウントし、だいたい23頁目のコマが次回への“ヒキ”(あ!あれは…とか、意外な真実とは?とか)ならば、そこで1号分とカウントして計算します。
そうやって単行本2巻分を分析し割り出した号数は1話分前…つまりは2巻最後の号でしたが、無駄出費は1冊分に押さえることに成功。幾多の苦労の末、ようやく「おれとカネやん」の続きが読めるようになったのです。

 さぁ、「おれとカネやん」読破に向けて早稲田の現代マンガ図書館に通う日々が始まりました。(※その後の調べで開始時期は1998年の5月)
 隔週土曜を基本に、1日10号分位のペースで読み進める。この頃HP開設の準備も同時進行してたので、どうせ読むならコンテンツの一つとして加えようと計画。それが未収録作品の続きを紹介する“あの作品を追え!(現在は“未収録を読め!”に変更)”であります。
 読書テーブルの左に積み上げられた週刊少年キング、右にノートを広げ 「おれとカネやん」を読んでポイントを箇条書き。気になる台詞は正確にメモ。しかし、作業はそれだけでは終わりません。雑誌内には思わぬ所に見知らぬ情報がある場合も多いのです。例えば週刊少年キングなら少年画報社の関連雑誌(月刊少年キング、別冊少年キングなど)の広告頁に連載予告があったり、本誌の特集記事や読み物頁にも執筆していたりするので、隅から隅まで目を通して新たな情報の捜索もします。
 こうして、その日読んだ分のメモをまとめて“あの作品を追え!”を更新し、また現代マンガ図書館に通う繰返しは10ヶ月にも及びました。「おれとカネやん」は、1973年〜75年の約2年有余の連載で話数にして133話だから単行本未収録分を少年キングで113冊読んだ計算になる。読破完了は1999年3月でした。

 私にとって「おれとカネやん」は、HP開設当初の想いや1冊づつ読み進めていく苦労の記憶と相まって思い出深い作品になりました。内容的には(斎藤貴男の評伝にも書かれているように)決して傑作の部類ではありません。でも古城先生の親しみやすい絵柄とか、当時連覇を続ける巨人人気に迫る勢いをパ・リーグに巻き起こした金田正一監督とロッテオリオンズの記録漫画として、私の好きな作品なんです。だから、読破後も作品を手元に残したくて古書店で週刊少年キングを買い集めたりネット仲間とコピー交換をやったりもしました。そうしてまたも苦労して6〜7割ほどあつめた後、盛り上がった復刻本ブームの流れにより、「おれとカネやん」は2006年にマンガショップから完全版が刊行されてたのです。orz。
 さらにオチとして、刊行後この完全版の1巻には旧少年画報社版の2頁が欠落(巻末の扉絵集は8話分誤収録)してることが判明するのです。出来の悪い子ほどかわいいの例えのように、こうした不遇さも本作を愛する理由かもしれません。

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梶原一騎原作漫画読破への道(4)に続く