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梶原一騎原作漫画読破への道(5)

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「朝日&太陽&夕日の恋人」思い出の復刻騒動

 「朝日の恋人/太陽の恋人/夕日の恋人(週刊少年チャンピオン連載 画・かざま鋭二)」は、比較的早い時期に読破を達成できました。“一騎に読め!”開設後、リンクページを展開するにあたり梶原一騎と、その作品に関するホームページを検索していくなかで、本作に関するサイトにたどり着き、情報の交流を図るなかで協力していただきました。

 1998年当時は単行本(チャンピオンコミックス全4巻・タイトルは全て“朝日の恋人”)も然ることながら、掲載誌の週刊少年チャンピオンもレアな存在のため現代マンガ図書館にも国会図書館にも揃ってはいません。ヤフーオークション等でたまに出品されれば高額で取引され、個人の行動だけだったら読破までにどれくらいの日数とお金を費やしたことか分かりません。その意味でも本作に関しては幸運だったといえます。
 私は基本“読む”ことを最重要とし、“集める”ことには比重を置かずに行動してきました。とはいえ、それが(可能な範囲で)手に入ることは嬉しいし、手元に残したいと思ってます。ですから、読んだだけの本作が2006年にチクマ秀版社から復刻されるというニュースにはとても喜びました。値段は多少高かったですが、35年振りに発見されたという原画から再現されたこだわり具合と、旧版(チャンピオンコミックス)には無かった(カットされた)頁も収録された決定版といえる内容には納得でした。
 全四巻を予定として、その年の夏に“朝日の恋人”上巻、暮れに下巻を刊行。しかし、そこまでは順調だった刊行ペースが翌年になるとパッタリ途絶えます。冬を越して、春を過ぎ、夏を終わろうとしても、続く“太陽の恋人”の刊行情報はなかなか発表されず、ヤキモキするを我々に知らせが届いたのは秋。その会社の特設サイトには、残り2冊分を1冊として発売するとのこと。値段は更に高額に(確か5千円前後。既刊は2千円前後)。それでも旧版以降の話がまとまって刊行されるならと、購入を決めて発売日を待ちました。
しかし…私たちの耳に突如“チクマ秀版社倒産”の知らせが入ります。詳しいことは分かりませんが、特設サイトには何の説明もないままで、問い合わせの電話もつながらず。結局「太陽の恋人」「夕日の恋人」編の刊行は幻となってしまいました。この作品について思う時、読破の喜びよりも、この時の落胆の気持ちが浮かびます。
 初コンビを組んだ本作、「愛と誠」に次ぐ週刊少年マガジンの大作として組んだ『青春山脈(火乃家の兄弟)』、そして梶原一騎狂気の時代の駄作『さらばサザンクロス』。余談ですが、かざま鋭二先生は梶原作品では貧乏くじを引かされてる印象があります。

「侍ジャイアンツ」バージョン違いにマニア道を磨け!

「侍ジャイアンツ(週刊少年ジャンプ連載 画・井上コオ)」は、過去取り上げた作品に比べるとTVアニメ化もされたメジャー作品。その読破は簡単スムーズと思いでしょうが、ことはそれほど単純ではなかったのです。
 これまで私が書いてきた話を読んだ方なら“こだわればこだわるほど、ディープになっていくのがマニア道”の法則がお分かりか、と。では、いったい本作には何があったのか?をこれから説明しましょう。
まず基礎説明として、昭和40年生まれの私は本作をリアルタイム体験しており、TVアニメは本放送はもちろん、単行本も当時既に読破しておりました。ですから、ホームページ開設後も本作は読破扱いとして作品紹介を更新してたのです。
 さて、突然ですがここで質問。
【貴方には、とても好きな漫画作品があります。もちろん単行本も全巻揃えている。だが新たに別の出版社からも単行本が発売されたら購入しますか?】
…………………………………(シンキングターイム♪)………………………………………
 まぁ、大半の方は(見た目は別でも)既に所有しているものを更に買ったりはしませんよね? でも私「侍ジャイアンツ」は、2種所有しています。集英社のJC(ジャンプコミックス)版全16巻とサンケイ出版の梶原一騎傑作全集全12巻。何故か。それは、その版・バージョンでしか見れないものがあるから、です。
それに気付いたのは、古書店で1冊100円という価格と(既に所有していた)JC版とは異なる版のため何となく購入した1冊がきっかけ。忘れもしない梶原一騎傑作全集の第8巻。主人公・番場蛮の新たなライバル達の一人、ポポ・エンリコが登場する場面がどーにも記憶になく、JC版と比べると…ないんです。その1頁が。そうなれば燃えてくるのが探求魂!
梶原一騎傑作全集版を全巻揃えての比較研究した結果、双方にはそれぞれに抜け頁と未収録頁が存在してるのです。

例1)JC版第1巻P54が、梶原一騎傑作全集にはない(以降の復刻版も同じ)

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例2)梶原一騎傑作全集版第8巻P183が、JC版にはない

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例3)JC版の特徴であるサブタイトルをいれる為にカットしたコマが、梶原一騎傑作全集では復活している。

それぞれのバージョンでしか味わえない楽しみを探し見つける喜びを、私は「侍ジャイアンツ」から学びました。そしてこれ以降、所有している作品でも別のバージョンが発売されるたびに「何かあるかも」と、チェックする心構え…もといマニア構えも学んだのでした。
 今「侍ジャイアンツ」といえば、懐かしアニメ企画でよく見る“ハイジャンプ魔球”や“大回転魔球”等に代表される“トンデモ魔球漫画”のイメージが強いですね。また、主人公・番場蛮といえば、大塚康生氏が描いたTVアニメ版のキャラクターの顔を思い浮かべる人が大半でしょう。かの如く本作は原作漫画よりもTVアニメ版が人気が高く、原作の話で話題になるとすればマウンド上で死ぬ最終回くらいか。
 そんな評価の低い漫画版ですが、前回述べたようなバージョン違い発見をキッカケに腰を据えて再読してみると、これが結構面白かった。昔はまどろっこしかった前半(JC8巻位)も『巨人の星』との差別化を図ろうとする梶原先生の意気込みを感じられるし、後半は連覇に苦戦するジャイアンツの史実に併せて展開する“セミドキュメント方式”なストーリーも興味深かった。作品評論が長くなるので割愛するが、こうして私は「侍ジャイアンツ」という漫画にハマってしまった訳です。V9当時の野球の資料を読みあさり、ご存知・国会図書館に通い、週刊少年ジャンプで連載分全話読み直すだけでなく、全扉絵をコピーしてコレクション。果ては同人誌(!)なんかも作ってしまったのです。しかしマイペースに作りすぎてDVD-BOXの発売に先を越され、やりたかったネタ(連載誌での読破で見つけた未収録エピソード等)をライナーノートに使われたのを知ったときは結構凹みましたね。
 1年近くかけて単行本を読み、雑誌を読み、その面白さについて深く考え、行動した作品として「侍ジャイアンツ」は印象に残っています。
 最後に、もしこれから読んでみようと思う方にクイズを出したいと思います。

Q.『番場蛮は、星飛雄馬と同じ低い身長ながら“球質の軽さ”という欠点を持っていません。それは何故でしょう?』

 正解は…興味のある方のみ漫画を読んで調べてみてください(笑)。それが本作への再評価のキッカケとなれば、ファンの一人として嬉しく思います。

梶原一騎原作漫画読破への道(6)へ続く