分子ウィルス学、免疫学研究者の方が日経ビジネス編集者相手に凄いこと言っているので、ブルーインパルスが誰のために飛ぶべきだったか気づいた件
こんばんは。お疲れ様です。
昨晩から原稿準備し始めて、今になりました。
(当日追記)内容が内容だけに記述に気を使って、時間がかかりました。
日経ビジネスの記事の内容
日経ビジネスの記事を読んでいて、目からウロコの専門家意見に(・_・D フムフムと頷いていたのですが、以下はちょっと、と思う部分がありました。
峰:ある病気の人に薬Aを与えた。そして、「治りました!」となったときに、薬Aだけで効いたと我々は絶対言わないんです。というのは、Aを与えなくても治る可能性はあるわけです。たとえば、たまたま自力で回復するタイミングで飲んだのかもしれないじゃないですか。
編集Y:ああ……まあ、そう言われりゃそうですけど。そんなことを考えるんですか。
峰:考えるんです。そして、アビガンに関して日本で行われている観察研究(※編注:通常の診療を通して患者の推移を見るやり方。検査のために介入を行うものは「介入研究」と呼ばれる)は、自分が見た限り、薬の経過なのか自然な経過なのか、よく分かりません。
薬の効果を証明したい場合、科学者としてやることは簡単なんです。ランダマイズド・コントロールド・トライアル(RCT:randomized controled trial:ランダム化比較試験)といって、治療群とコントロール群とをつくるんです。アビガンを与える群とアビガンを与えない同じぐらいの病気の人。しかも1人対1人じゃなくて、必ずもう何十人対何十人などにして、どっちの群に自分が割り付けられているかも分からないようにします。予断がないようにするために。
それで明らかに差が出た場合に初めて「薬が効いた」と言うわけです。なので、ひとつの経験として、この薬を飲んだら良くなったというのは、基本的に科学者としては、「よかったですね、その薬の効果かどうかは分かりませんけれどね」としか言えないんです。プラセボ、プラシーボ(偽薬効果)といって、普通のブドウ糖を「特効薬です」と言って投与したら、実際に元気になる方はいらっしゃるわけですし。
日経ビジネスの記事の内容に対する感想
ちょっと待ってください。
この場合、治療薬を投入するのは、新型コロナウィルスに罹患している人に投与する訳ですね。
「アビガンを与えない同じぐらいの病気の人」=コントロール群が数十名必要と言っている訳ですが、投与されないと死んでしまうかも知れない患者を、研究のために医者が見殺しにしてしまって、いいものでしょうか。
いや、「この薬は未承認なので、確立された治療法ではないですが、他に手段がないので、使ってみますか? 使う場合には、この同意書に署名してもらう必要があります」とA4の用紙に上から下までびっしり難しい用語や表現が並んでいて、その中に「プラセボの場合もあることも、了承しました」って条文が含まれていて、患者さんはそれに署名しなければいけない、という運用をしていると、私の経験でも持病の治験に参加したとき、それらしき文章があったのを思い出しました。
そうした形で同意書を取っておかないと、患者は死んでしまう訳ですから、遺族に医療過誤で訴えられてしまったときに、病院側は敗訴してしまいます。
そして、これから新型コロナウィルスの治療薬のRCTを実施すると、偽薬を投与されて命を落とす方が数十名出てくる訳です。
どれくらいのグループ構成員数で実施するのが適正かは判りませんが。
そうした方々は、姓名すら公表されることはないでしょう。
一方、医療現場の最前線で、感染の危険と闘っている方々に、もし感染してしまったら、まさかプラセボを投与することはないと思います。
医療現場の最前線で、感染の危険と闘っている方々に、感謝と拍手を送ることは当然でしょう。
RCTで命を落としてしまう方々にも、もっと感謝と拍手を送るべきではないでしょうか。
(以下、当日追記)
上乗せ試験について
同窓の医師の一人から、「上乗せ試験」というものがあるよ、と教えてもらいました。
新型コロナウィルスの場合は、標準治療がない訳ですから、医師・看護師、その他の医療スタッフが全員チームワークで、すべての観察研究対象者の治療に当たる訳です。少なくとも日本では、それは期待できるでしょう。
(当日追記ここまで)
ブルーインパルスが誰のために飛ぶべきだったか
ブルーインパルスは、観察研究、RCTで命を落としてしまう方々のためにこそ、飛ばすべきだったと思います。
内閣支持率が30%の危険線を越えて下がり、内閣総辞職か衆議院解散総選挙かの選択を迫られるこの状況から国民の目をそらすために、政権が自衛隊を使ったのは明白ですが、国民の我々は、新型コロナウィルスの「正しい」承認プロセスを経た治療薬を入手するための犠牲を、冷静に覚悟していかなければなりません。
では、また明日。
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