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仕事が出来る人は「道具」を大事にします

随分前に築地の話題の店に行ったときのこと

随分前のことですが、話題になっている築地の和食の店に行ったときのことです。カウンターだけの店で10名も入ればいっぱいです。2週間ほど前にも行ったのですが、満席で入れずに二度目の訪問です。この日も席のほとんどが埋まっていましたが、運よく空いたので、座ることが出来ました。

初めての店って慣れるまでちょっと緊張します。しかもここは常連さんが多いようで、みなさん、親しげに料理人と会話を交わしながら食事やお酒を楽しんでいます。オーナーが築地の仲卸しの方というだけあって、品数は多くはないのですが魚料理がお薦めでした。(画像はイメージです)

何だか居心地が悪いぞ、その原因は?

お刺身や焼き物は、少し量が物足らないけれども、評判通りのおいしさ、煮物の味付けもいい感じでした。しかし、何となく居心地が悪いのです。常連さんに交じっていることもありますが、それだけではありません。しばらくすると、はあ~ん、これだなと感じたことがありました。

料理人は一人です。カウンター席なので料理をしているところが目に入ります。見ていると小さなタッパーウェアから薬味などの材料を出し後、そのタッパーウェアをもとに合った場所に投げるように戻すのです。慣れているようでぶつかる音を気にしていません。しかし、こちらは気になるのです。

タッパーウェアも大事な仕事の道具です

たかがタッパーウェアでも大事な道具です。その道具を投げる料理人は人気店であろうともダメです。料理人特有のいなせなスタイルのつもりかもしれませんが、目の前でやられたらちょっと興ざめ、こちらまで大事にされていないような気になってきます。正直いってプロの驕りさえも感じました。

気に入らなければすぐに出ればいいのですが、注文した料理が出ないうちから帰るわけにもいきません。個人的にそう感じるだけかなあと思ったら同行者も同様でした。些細と言えばその通りです。しかし、これはやはり納得がいきません。追加オーダーもせずに、早々に切り上げて店を出ました。

野球が上手くなるには道具を大事にすること

イチロー選手は道具をとても大事にすることで知られています。子供向けの野球教室でも、「野球が上手くなるには道具を大事にすることです」と繰り返し語っています。イチロー選手は、負けた試合でも試合終了後にロッカーに帰って来ると、必ずグローブをピカピカに磨いて手入れをするそうです。

凡打や空振りでバットをたたきつける選手がいます。イチロー選手も一度だけバットを投げたことがあるそうですが、その後で嫌な気持ちになり、二度としないと決めました。「作ってくれた人の気持ちを考えて、僕はバットを投げることも、地面に叩きつけることもしません」(画像はイメージです)

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道具でコミュニケーションをする大工さん

ドイツ語の通訳をしている方から聞いた話ですが、モーターショーで来日していたドイツ車のブースの施工を担当している職人たちが、言葉は通じなくても日本の大工さんたちと道具を見せ合いながら会話を交わしていたそうです。大事にしている道具でコミュニケーションが出来るんですね。

どんな仕事にも道具が必要です。個人的な印象ですが、仕事が出来る人は道具を大事にします。例えば、話し終えた電話機をそっと戻します。ボールペン1本、クリップひとつでも無駄にはしません。いい仕事をするには、いつでもトラブルなく快適に使える道具が必要だからです。

習慣として身についたものは変えられる

おそらく築地の料理人は自分では道具の扱いが雑だとは思っていないでしょう。なぜならば、積み重ねてきた習慣がそうさせているからです。生まれながらのものを変えるのは難しいかもしれませんが、習慣として身についたものは変えられます。道具の使い方も習慣を変えればいいだけのことです。

商売はオーケストラの演奏のようなものです。弦楽器や金管楽器の演奏がどんなに良くても、打楽器のリズムが崩れれば演奏はバラバラになります。全体のバランスがとれてこそ人を感動させる演奏になります。築地のお店はいまでもやっていますが、以前のように話題にはのぼらなくなりました。


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