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ストレイプトカーパス

今日もおつかれさまです。

その双子は、布リボンのハンドルが付いた可愛らしいキャット柄の袋に入ってやってきました。紫の花の萼の根元にひょろりと一本細く出ているところがホクシアの雌蕊のようで、繊細で美しい。葉は、さきごろみられるようになったアイスプラントのようで微細で銀色の産毛のはえた厚みのある葉。それがインパチャンスの熱帯系の無防備な茎から広がっている。

庭についてしばらく書いていません。実際の庭仕事が忙しかったからです。椿の余計な枝をおろし、綿菓子の形に整えました。フキが密生する生垣の下は、盛り土をしてチューリップの球根をいれるつもりです。駐車場近くの乾いた捨て地に植えていたチェリーセージの枝を数本、根出しをしてそおの生垣の下に植えるつもりです。いずれにせよ、硬くしまってしまった地面はなんとかしなくては。アガパンサスですら、花をつけなかったのですからもう本気で取り組まなくてはならないでしょう。

話がとびました。依然、他人に誇れる庭ではないけれど、前の住人からの借り物という感覚も抜け、ようやく自分の庭として見られるようになりました。毎年無駄に雑草を生やしてきたけど、秋になってみれば草抜きの葛藤の成果がわずかに出ていて、大概の不用の植物とそうでないものとの区別がうっすらですができていました。これなら電動の草刈り機を大胆に使えそうです。広すぎて畑にしていた梅の木の根元に小道をつけ、盛り土をしてハーブを密生させようかなどと考える余裕も出てきました。

やはり秋の気候は人を庭へと誘います。あたりのお家も庭仕事が盛んです。角のお宅のフェンスぎわに紫の可愛らしい花をみつけました。おうちの方に思わず「可愛いですね」と声をかけます。こちらはウッドチップを敷いて手入れの行き届いたお庭で、グリーンをこんもりともりつけたバスケットのようなお庭で、いつもさまざまなグリーンに目を奪われてしまうのです。

すると昨日、そのおたくの方が、ストレイプトカーパスの双子を持ってきてくださったのです。「お友達に話したら、どんどん増えるからって」と手渡されたそれは、可愛がってそだてていらしたことがすぐわかるおしゃれをしていました。

なんだか欲しくてお声をかけたみたいで、申し訳ない気持ちもしました。が、胸に懐かしい感じが蘇りました。あれは高校時代でした。友人のあいだである植物の栽培が流行ったことがありました。ご存知でしょうか、セントポーリアという花です。アフリカンバイオレットという別名もある小さな花です。電車通学でしたので大きな鉢をもっていくのは無理です。交換の仕方は葉っぱでした。清潔な刃物で厚手の葉っぱを根元から切り、湿らせたティッシュで包み銀紙で保水したものを学校で交換するのです。それをこれもまた清潔なあたらしい土にさし、キッチンの出窓の蛍光灯の下あたりに置いて育てました。すぐに小さな葉がバーミキュライトのきらきらした切片の隙間から顔をのぞかせます。それを見つけた時のよろこびと言ったら、もううれしいものです。花が咲くようになったら友人から別の花色の花粉をいただいて受粉させてみたり、株を増やしてみたり。ファンタジックで、それでいて交配だとか、日当たりだとかなかなか工夫が必要で、手のかかる子供みたいで楽しかったのを思い出しました。

さて、いただいたストレプトカーパスは、早速土を買ってきて二鉢に植え替えました。小さく書かれた名前のメモを頼りにインターネットで育て方を調べました。すると、あの懐かしいセントポーリアとおなじ岩タバコの仲間だとわかりました。

「簡単にふえるのよ」という言葉とは裏腹に、とても手をかけられていたのを感じます。可愛らしく咲いた花をいただくのは、あのときとおなじ。大事なものをお預かりするみたいで、心が引き締まります。

 さてお返しは何にしましょうか。秋も深まって甘いものが美味しい季節。チョコレートシフォンなどどうでしょうか。

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