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釣った魚にえさはやらない、って言葉があるけれど、釣ったお魚を生かしておくのって、すごく大変らしいです。水質管理はもちろん、水流や光の当たりかた、温度、魚ごとに生態や生育環境が違うので、生まれた環境にして生かしてやることはとても難しい。崇くんがいうのだから本当です。 私は水族館のまちに住んでいます。湾に沿った海岸のはずれにポツンと立っています。何年か前の市町村合併の補助金で建てられた水族館に、崇くんは呼ばれて来ました。 小さいですが、山を二つ越えたところには県で二番目
chapter VI: 村のお地蔵さん 「お地蔵さんて呼んだらしつれいかしら」 ときどき崇くんは突然こんなふうに女ことばで質問します。 なんのこと? 「いやね、水族館のパートの坂口さんとこ、おじいちゃんいるでしょ、知ってる?」 もちろん知っています。私が高校生のころからずっと寝たきりです。寝たきりといってもどこか具合が悪いというのではなく、単純にお歳なのです。もうハンドレットをゆうに過ぎていらっしゃる。 百をすぎて有余年。 村の最長老でいらして、村の要。 集落には要