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[小説]水族館オリジン

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わたしは日本の海べりの小さな町にすんでいる図書館員。一緒に住んでいる彼氏は岬の水族館につとめている。ない音を拾う耳と見えないものを敏感に感じてしまう感覚が日々わたしをなやませるけ…
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#歴史

【小説】水族館オリジン 1

 釣った魚にえさはやらない、って言葉があるけれど、釣ったお魚を生かしておくのって、すごく大変らしいです。水質管理はもちろん、水流や光の当たりかた、温度、魚ごとに生態や生育環境が違うので、生まれた環境にして生かしてやることはとても難しい。崇くんがいうのだから本当です。  私は水族館のまちに住んでいます。湾に沿った海岸のはずれにポツンと立っています。何年か前の市町村合併の補助金で建てられた水族館に、崇くんは呼ばれて来ました。  小さいですが、山を二つ越えたところには県で二番目

【小説】水族館オリジン 3

chapter: III ビー玉色  崇くんがこの村の水族館に来るとを決めたのにはわけがありました。そのことは私との出会いにかかわります。彼はお魚の事と同じくらい子供のころから歴史が好きでした。武将やお城に憧れて、おこづかいを貯めてはお城めぐりの一人旅もしました。歴史の本や漫画を読むだけじゃなくて、実際に行くので同じ年頃の子供たちよりも物知りでした。あちこち出かけ見つくした頃、彼は一つのことに気付きました。それは、教科書やテレビで教える歴史は、今の国を創るきっかけになった大