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[小説]水族館オリジン

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わたしは日本の海べりの小さな町にすんでいる図書館員。一緒に住んでいる彼氏は岬の水族館につとめている。ない音を拾う耳と見えないものを敏感に感じてしまう感覚が日々わたしをなやませるけ…
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#言葉

【小説】水族館オリジン 1

 釣った魚にえさはやらない、って言葉があるけれど、釣ったお魚を生かしておくのって、すごく大変らしいです。水質管理はもちろん、水流や光の当たりかた、温度、魚ごとに生態や生育環境が違うので、生まれた環境にして生かしてやることはとても難しい。崇くんがいうのだから本当です。  私は水族館のまちに住んでいます。湾に沿った海岸のはずれにポツンと立っています。何年か前の市町村合併の補助金で建てられた水族館に、崇くんは呼ばれて来ました。  小さいですが、山を二つ越えたところには県で二番目

【小説】水族館オリジン 9

chapter IX: ご馳走 横読みってわかります?こういう風に呼ぶのが正しいかどうか不安が残りますが、1つのテーマを追いかけて『横に』、分野を横断して本を読むことを私はそう呼んでいます。 高校生になって英語の勉強は90%は単語の理解だってことがわかったときこの横読みを始めました。まあ必要に迫られてなんですけど。 英語は当たり前の教養というかスキルですが、英語の勉強をしなければ知りえなかった日本語の世界、そういうものがあるような気がします。 たとえば、英語で知らない単