ミルクのにおいは、もうしないけど

先日、6か月の赤ちゃんを職場の先輩が連れてきていて、久しぶりに赤子に触れた。

ぎゅっと強く握り返す小さな手が、いじらしくてどこからどう見ても、かわいいのオンパレード。そんな彼を抱っこさせてもらうと、彼の頭から懐かしい匂いがした。ミルクのようにやさしくて、あまいにおい。赤ちゃんのときにしか嗅ぐことのできない何とも言えないあのにおいだ。


ふんわりとくすぐられた嗅覚が、5歳と4歳の弟たちが赤ちゃんだった頃のことを思い起させる。
母が高齢だったこともあり、切迫早産で、彼らは1000gにも満たない小さな体で、生まれてきた。牛乳パックくらいの大きさで、ある程度の大きさに成長するまでは触れることもできなかった。ちいさくて壊れそうだった赤子だった彼らは、生まれたときと打って変わってわんぱくで、手が付けられないくらい元気な男の子に育った。


そんな彼らが、走り回り、はしゃいだあとの、少し汗ばんだ頭からは、大人とさして変わらない、じめっとした匂いがする。

もうミルクのにおいはしなくなったけれど、成長の証である、ちょっと臭い彼らの頭を嗅いで、心がじんわりとあたたまり、あのときより優しく握り返してくれるようになった小さい彼らの手をそっと握る。


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