mstdn.jpの大乱調とサンドバッグ

前書き

 いつから始まった障害だか、分散型SNSの一つmstdn.jpは常に障害を抱えるようなサーバーになっていた。なんだか重かったり、なんだかラグがあったり、そういう問題に苦しむことが増えていった。でも僕はmstdn.jpが好きだし、運営企業もなんとかしてくれるだろうと信じている。

 彼らが運営するjp鯖はマストドンの中でもかなり大きな鯖だし、アクティブ人数も多いし、運営はおそらく容易ではないはずだ。明らかに外から見て大丈夫じゃなさそうな動きを見せるmstdn.jpに関し、僕はなんとか運営企業を支援する方法はないかと言い続けたのだが、クラウドファウンディングも、広告の挿入による収益化も、そういったなんとかして運営費を稼ごうという姿勢が運営には見えなかった。ただ外から見て明らかにつらそうな状況だけは明らかだった。

 だから僕はjpをすて、知り合いが運営する鯖へ移住した。マストドンはフォローリストを簡単にインポートできる。だから移住も簡単だ。今となってはこの鯖に移住してよかったと感じているし、後悔はない。それでもjpの運営企業には頑張ってくれと思っているし、もし支援の窓口が開かれたなら必ず支援するつもりだ。

9.21の大乱調

 そして昨日、ついにmstdn.jpが見えなくなった。この障害は過去類を見ないもので、簡単に言えば「他の鯖からはjpの投稿が見えないが、jpからは他の鯖の投稿が見える。ただしjpから他の鯖への通知は届かない」という、ステルス状態になったような障害である。

 この障害の余波は大きく、多くの人間がjpからの移住を検討するなどし、そして一日経った今日やっと問題が解決したが、結果として一日前の投稿がタイムラインに流れるという結果を生み出し、他の鯖にも影響を与えることとなった。

 個人的には一日前に見えないjpに対してメッセージを送り続けた(当然向こうはこちらの投稿が見えている)のがちゃんと向こうに届いていたということを今になって通知が届いてわかったので、なんというかエモい気持ちになったりはした。

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風説の流布

 で、これは結局復旧したからよかったのだが、この問題が出た時にやはり不安が不安を呼ぶというか、色々な噂が立って論争が論争を呼ぶという形になってしまった。
 jpの運営企業の母体であるきぼうソフトのホームページがjpに障害が発生した時期に404 Not Foundを吐き出したこともあり、「夜逃げするんじゃないか」「倒産するんじゃないか」などという噂がまことしやかに囁かれ、404は運営企業による偽装なのではないかとすら言われた。

 改めて言っておくが、このような根も葉も無い噂をそれらしく拡散するのは場合によっては法的責任を問われる危険性がある。これは私もその噂が出て騒がれた段階で言ったのだが、どうにも止められないというか、運営企業への不信感が募りに募った結果どうにも止められないという状況になってしまった。
 こういう噂が出る中で例えば404の偽装は本当なのかとか、そういう噂をちゃんと検証したり、倒産情報が出てるのかどうかを調べたりしていた人間もいたので彼らは正しい検証をしてくださったと思っているのだが、ただなんとなく噂を口にしたり拡散したりして不安をばらまくのは非常に悪手であると言わざるを得ない。
 何度となく見たjpの不調と不安の拡大を見ていると銀行の取り付け騒ぎというのはこういう風に起こるのだろうなという感じがする。

サンドバッグはどれだけ殴ってもいいのか

 で、これは僕の好きなゲームであるBFでも感じることなのだが、BFとその開発会社EA DICEというのはインターネットでは割とネタにされることが多い。それはそのゲームにバグが多かったりする、そういう部分もあるのだが、一旦そういう風潮が作られてしまうと何か起こるとみんなで寄ってたかってバカにし、サンドバッグにする、そういう傾向がある。これはBF以外にもインターネットでよく見る光景だろうと思う。
 きぼうソフトと分社化したマストドン運営会社の合同会社分散型ソーシャルネットワーク機構(以下ゴブソネキと略す)も同様で、とにかくボロカスに言われがちである。もちろん障害も発生しているし、それに対する対応も結局今回も24時間以上かかってしまったので多少の批判は免れない。かと言って、ここまでの規模の鯖を運営した経験のある人間がどれだけいるか甚だ疑問なのだ。鯖缶の皆さんの中でも大御所と呼ばれるべき人たちはいて、その人たちは原因究明や対処法を探るなどしていた。しかしそういうこともせずただ「自分には鯖缶の経験がある」というだけで運営企業をボロカスに叩くだけの人間を見てどう思うだろうか。いわゆる「老害」的な意見になってはいないだろうか、よく考えて欲しいと思う。

 mstdn.jpのメンバーが主体となって作られたLINEのオープンチャットがあるのだが、jpが不調になるとそこにいつも運営企業の悪口めいたものが書き込まれるという状況があった。一人のメンバーがそれに対する不快感をあらわにして脱退するなどし、一時よりは収まったものの、それでもそう言った投稿が根絶されることはない。

万国のマストドナーよ分散せよ

 マストドンは「分散型」SNSである。すなわちいろんな人間が鯖を立てて、その鯖同士が連携しあってある種の宇宙のようなネットワーク、「Fediverse」を形成する。
 ある意味過剰に人間が集中しすぎているjpというのはマストドンの本来の運用法から外れたものであるのかもしれない。でもその一方でjpに強い魅力があるのも確かだ。私もマストドンでいくつかの鯖に参加したものの、一番付き合いが長いのはjpの皆さんというところはある。だからjpは面白い場所なのだが、それは人間が面白いのであって決してjp自体の面白さというわけでもないということでもある。実際私はjpから移住したが、jpの外からでもjpの人間と絡むことはできるので何の不自由もないのだ。
 つまり万国のマストドナーよ分散せよ、ということが私の一つの結論である。私も多くの人間にマストドンを進めてきたが、始めるときは大手の鯖に入って、そのあと人間関係ができてきたらもっと居心地の良さそうな鯖も見つかるだろうし、適宜移住すべきだとも言っている。分散するべきなのだ、我々は。

休日を増やせというけれど

 マストドンを運営しているきぼうソフトとゴブソネキは規模の小さいベンチャー企業である。それでもマストドンの鯖を複数管理し運営しているという点は非常に意欲的だし、特にjpという大きな鯖を運営していることは感謝している。なぜならjpはマストドンの大きな入口だからだ。jpはその混沌っぷりが批判されがちではあるが、マストドンの入口としてjpが今まで果たしてきた役割を見過ごすことはできまい。
 他にも大規模鯖としてpawooの存在が挙げられるが、pawooはすでにマストドンの最新バージョンを使うことはやめていて、定期的なメンテのみにとどめている。しかしmstdn.jpはあれだけの人数を抱え、企業のリソースも限られる中で最新バージョンを実装している。よくjpはpawooと比較されるが、この違いは大きいと思う。

 今まで何度かjpが休日中の障害で問題となったが、休日であろうともゴブソネキは対応してきた。もちろん対応速度が早いとは言えない部分もあるが、休日なのでしょうがないという部分もあると感じている。
 最近の日本では休日を増やして欲しいという意見がインターネットでよく見られるのだが、その一方でこうやって自分の見えないところで人に休日出勤を強いる、残業を強いるような姿勢は如何なものかと思う。自分が人にされて嫌なことを人に強いてはいまいか?もう一度考えて欲しい。

 日本の労働生産性は世界でもかなり低く、その点で「世界でもっとも給料が高い国(労働の成果あたりの給料が高い)」と揶揄されるなどしている。自分はいまフリーランスで、成果を出さなければすぐに契約を切られるような環境に身を置いているからこそ、安定した企業に働いていて「休日が欲しい」と言っている人間を見ると「何を言っているんだ」という気持ちになるが、これはあまり関係がない話なので一旦置いておこう。

ゴブソネキに期待すること

 ここまできぼうソフトおよびゴブソネキを援護してきたが、もちろん彼らにも落ち度はある。それは徹頭徹尾「アナウンスの不足」である。私には技術的な部分はよくわからないので技術的問題についてはこの際置いておくが、例えば何らかの障害が発生したりした時にそれを告知することは欠かさないで欲しいと思う。今回も障害が発生した時には何も告知がなく、原因がわかってから事後報告するという形になってしまったのはユーザーの不信を買う理由たりえるだろう。正確に情報を収集してから発信した方がいいんじゃないかと思ったりするのもわかるが、こう言ったトラブルにおいてはとにかく初動のスピードが大事だ。そのためにももっとユーザーと綿密なコミュニケーションを取れるような動きを今後期待したいと思う。

 今後もjpからの人間の流出は止まらないと思うが、これはさっきも挙げたように正しい流れだとも思っている。マストドンは分散型SNSだし、その特性を生かすためには分散すべきだというのは当然のことだ。

あとがき

 正直私はTwitterに飽きているというところもある。もちろん面白さもあるのだが、Twitterは怒りとマウントに満ち溢れていて本当に疲れる。自分の価値観を肯定するために他人の価値観を傷つける人間があまりにも多すぎる。それに対してマストドンはもう少し過ごしやすい場所なのだ。もう少し生身で話しやすい場所だ。

 きぼうソフトとゴブソネキには頑張っていただきたい。いつも感謝している。

サポートしてくださると非常にありがたいです。