金玉が痛すぎるので病院に行った

 昨日は昼頃に起きたのですが起きてしばらく仕事を片付けているとどうにも下腹部に痛みを感じた。明らかに金玉が痛んでいる。

「まあどうにかなるだろ」

 と思ってる間に痛みは引き、ほっと胸をなで下ろした。しかししばらくしてまたも金玉に痛みが発生、どうにもならない状況が続き、そしてまた痛みは引いていった。

 痛みの方向性としては金玉を蹴られた時のような痛みに近いもので、男性の皆さんにはわかると思うが結構な痛みだ。正直耐え難い。

「もしかして生理かな」

 なんていう不謹慎な発想が頭を駆け巡り、痛みが発生している間は本当に何もできないぐらいには具合が悪くなり、最終的には床に横になって気合で仕事を片付けていた。痛みは断続的に発生し、横になっている時はそこまで痛みが強くないので横になっている状態がベストだったわけだ。

「寝たらなんとかなるだろ」

 そう思い、僕は23時、痛みがない時間帯を狙って寝た。睡眠中も痛みに起こされることはなく快眠で翌朝7時には目覚めた。しかし目覚めと同時にまた金玉の痛みが押し寄せ、横になって動けなくなってしまった。

 金玉の痛みで真っ先にイメージするのは睾丸捻転症であろうと思う。これは金玉が回転することにより痛みが発生する病気だが、まず発症するのは10代の若者が中心で26歳のおっさんがなるとは考えづらく、睾丸の腫れや鬱血なども確認できなかったのでおそらく違う。しかし睾丸捻転症は睾丸への血管が停止することにより放置すると最終的には睾丸の摘出をしなければならなくなる。放置し続けた場合片玉になってしまう。体の左右のバランスが崩れる可能性がある。睾丸が半分になることにより今まで通りのペースでシコり続けることができなくなるかもしれない。

 他にも前立腺の何らかの病気である可能性があったもののこれは26歳にしてはちょっと早すぎるかなという感じで、なんというか微妙な年齢なんだなこれが。前立腺の場合排尿に問題が発生するということなので試しに排尿してみたところ違和感なし、これは前立腺でもないのか。

 とりあえず病院に行くしかない、この問題には俺の未来がかかっているんだ。

 金玉が悪い時はどうすればいいのか、とりあえず泌尿器科に行って見ることにした。泌尿器科までの道のりを運転している間にもひどい痛みに襲われ、俺は事故って死ぬかもしれないと思いながら泌尿器科に到着。

「予約してないんですが....」とおそるおそる言うと
「完全予約制じゃないので大丈夫です」と受付の人に言われ、そう言う答えが返ってくることもあるんだなと思いました。そして二言目には
「おしっこは出ますか?」と聞かれました。初対面の女性にいきなりおしっこが出るかどうか聞かれるというシチュエーションに少しばかり感動を隠せないながらも残念ながら病院に来る前におしっこを出してしまったことによりおしっこは出そうにない。
「後でまたお聞きしますので問診票を書いてお待ちください。」そう言うと問診票を渡され待合室へと案内された。

 待合室にはいきなりラッセンの絵がかけられており、不意打ちラッセンに驚きつつ問診票を記入。問診票に症状について書く欄があり、症状を書く際に「金玉が痛む」とは書けないため「睾丸」と書きたいところだが睾丸の「睾」が思いだせず、わざわざスマホで調べるのもめんどくさいので「こう丸」と書き、小学生かよと思いながらフグリが痛むとか書けばよかったのかなと後悔しつつ問診票を提出。

「おしっこ出せますか?」再び聞かれるものの待合室で睾丸の痛みに襲われていた俺は
「ちょっと今はダメですね...」と再びおしっこチャンスを無駄にしてしまう。

 そうこうしている間に次々に俺より後にきた患者さんが診察室へと向かっていき、俺の順番は飛ばされ続けてしまい、「おしっこごときが出せないせいで俺はダメなのか」という劣等感に襲われ、なんとかおしっこを出さなければならないと一人待合室の隅っこで覚悟を決めた。

「すいません......」俺が受付に声をかけると
「おしっこですか?」即座に受付の人が紙コップを渡してきた。手際が良すぎる。
「トイレがありますのでそちらで、出し切ったら指定の場所に提出してください。」

 俺は一人トイレに入り、踏ん張ってみたところなんとおしっこが出るではないか!全く問題なく出るのである!全く尿意を感じていなかったが全く問題なかった。もっと早く覚悟を決めればよかった。そう思いつつおしっこを出し切ると指定の場所に提出、待合室へ戻った。

 待合室には雑誌などが置いてあったもののしょうもない週刊誌ばかりで正直読みたいと思えるようなものがなく、意味もなくラッセンの絵を凝視していた。待合室では痛みが徐々に発生しなくなり、「もしかして健康なんじゃね?気のせいなんじゃね?さっさと帰りてえ」と思い始め、正直大丈夫だろと思っていたらまた金玉の痛みが蘇り、死にたい気持ちになった。痛みがない間は無敵なのだが痛みが発生した途端に死にたくなる、そういう最悪のサイクルを繰り返していた。

 しばらくして診察室に呼び出され、すぐ脱げるようにして仰向けにベッドに寝るよう指示される。先生が登場し、痛みに関する簡単な質問をされる。そして下を脱ぐよう指示され、全てを見せる。俺の全てを。
 金玉を触診され、「問題なさそうですね」と言われるのだが、俺はなぜこんなおっさんに金玉を触られているのだろうかという虚無感が対岸の岸辺に見えてきた。金玉を見て問題がないということはおそらく前立腺である。
 そして「前立腺を調べさせてもらいますね」「壁を向くようにして横になってください」そう言われ、ついに俺は前立腺を調べられる。ケツに何らかの液体を塗布され、「じゃあいきますよ」と先生が言うとケツにおそらく先生の指と思しきものが入ってきた。「これもしここでうんこ漏らしたらどうなるんだろうな」と言う不安感しか感じられない。もっと奥まで突っ込まれるのかと思いきや意外と浅いところで止まった。そして先生が中で何かをすると強烈に尿意らしきものを感じた。「おしっこが出るような感じがしたら言ってください」そう言われると俺はつい「先生、もうダメです」と情けない声を出してしまった。
 「仰向けになってください」そう言われると、女性の看護師さんが「すごい出てますね」と言うのだが、俺は一体ここで何をさせられているのか。終わったことを聞いてとりあえずパンツとズボンを履いて横になったままでいると心配されたのか「大丈夫ですか?」「痛みますか?」など看護師さんに聞かれたが、なんと言うか体には一切問題がないのだが精神的な部分がもうぐちゃぐちゃになってしまった。何と言っていいのやらもうわからない。

 とりあえず体を起こし、訳のわからないまま椅子に座り、先生の説明を聞く。どうやら尿検査も前立腺分泌液も問題がなく、痛みの原因はよくわからないと言う結果で終わった。特に問題がないので薬もなし、経過観察でいきましょうと言うことで終わった。

 何だかよくわからないが、とりあえず俺の未来は守られたのだ。そう思いながら、帰りにスーパーで寿司を買って帰った。

おわり

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