駄作モビルスーツ、始めます!

駄作兵器との出会い

 私は駄作兵器が好きだ。世界の歴史の中で燦然と輝く駄作機たち、その駄作機への興味を持ったのは小学校高学年の頃だった。そのきっかけは、実家の本棚にあった一冊の父の本である。

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 世界の駄っ作機。軍事評論家の岡部いさく氏が書いた本なのだが、この本が実に素晴らしい。駄作兵器への愛に満ちていて、この本によって私は駄作兵器への歪んだ愛情に目覚めたと言っても過言ではない。この本の中には「どう考えても失敗するだろ」という飛行機から、「成功する気しかしない」のになぜか失敗した飛行機まで、様々な飛行機が収録されていた。

 そして私はいつしか自分の脳内で駄作機を妄想してそれを勝手に本にしてまとめるということをはじめた。その当時は他に架空戦記も執筆していた私だが、結果としてそれらは私の黒歴史となり、そして今やどこに行ったのか行方不明である。

駄作モビルスーツのはじまり

 そしてそれから10年以上もの月日が経った。私は25歳になり、もう架空戦記を書くということもなくなった。架空戦記を書くということのためだけにあらゆる資料を読みあさった私は現実にぶつかり、あんなものはただの幻想であると気づいてしまった。そう気づいた時から私は架空戦記を執筆するということから離れていった。
 しかし私は妄想を止めることはなかった。架空戦記を完全に架空の国で行うということを始めた。完全に架空の国ならば、自分の好きなように物語を作ることができるからである。これは高校時代からずっとだ。夜寝る前、トイレに入っているとき、お風呂に入っている時などに架空国家の架空戦記について妄想していることが多い。特に寝る前にそういったことを考えているとなぜか寝付きがいいのだ。

 そして新たな妄想の種として、先日私は「架空モビルスーツについて考えたら面白いのではないか?」という結論に至った。何を隠そう私はガンダムオタクであり(見たことのある作品はあまり多くないが)、宇宙世紀の架空の駄作モビルスーツを考えるというのは今までやったことがありそうで実はやったことのないカテゴリーである。「僕の考えた最強のモビルスーツ」は子供時代に何度も考えてきたが、「僕の考えた最弱のモビルスーツ」は今まで一度も手を出してこなかったのだ。そしてそのカテゴリーに私は新たに参入してみようと思うのだ。

駄作MSの条件

 駄作MSについて書いていく中でやはり重要なのは「リアリティ」であろうと思う。というのも、架空のメーカーが架空のモビルスーツを作ってダメでした、では物語として面白くない。宇宙世紀の軍隊が実際に行っているような意思決定方法で、宇宙世紀の中で存在することが明らかになっているメーカーが試作し、そしてありそうな理由で不採用にならなければならない。
 そこで私は地球連邦軍やジオン公国軍の内部の組織について調べ、ある程度想像をしてみることにした。

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地球連邦軍組織図

 地球連邦軍の組織というのは首相のもと内閣が作られていて(公式設定)、その中に地球軍省と宇宙軍省があり(公式設定)、そしてその下に陸海空軍の局(想像)、そしてその下に各種の課があるだろう(想像)と想像した。これは日本陸軍の組織からだいたいこういう感じだろうというのを想像したのだが、注目すべきは「兵器課」で、おそらくここが兵器の開発を主導しているものであろうと思う。
 陸海空宙それぞれの軍に兵器課があり、それぞれがメーカーに対して開発を要求したり、自力で開発したりするわけである。例えば陸戦型ガンダムの開発を主導したのは「陸軍省」であるとされている(この辺の設定の相違は誤差だと思っていただきたい)。このように、それぞれの軍の兵器課が開発を主導したに違いない。

 ただ地球連邦軍における海軍はかなり空気で、空軍すらも影が薄い。おそらくフライマンタやデプロッグといった爆撃機に関しても陸軍が管轄していた可能性が高く、空軍はいわば「防空軍」的存在で、あくまで制空権の確保が主任務だったのではないかと思う。おそらく連邦軍内部は陸軍vs宇宙軍という派閥争いが強かったに違いない。
 そして一年戦争時の地球連邦軍の総司令官はレビルである。彼は英語でかくとGeneral Revilである。Generalは英語で将軍だが、これは陸軍の将軍を意味する。海軍の将軍の場合は提督となり、Admiralと表記するのが普通である。つまりレビルは陸軍出身であることが明らかであろう。一方参謀総長を務めていたゴップは「提督」と言われている。おそらく彼は地球連邦宇宙軍の出身であったのではないかと思う。総司令官を陸軍、参謀総長を宇宙軍とすることである程度軍内部のバランスを取ろうという動きが垣間見える。

 ここにおいて問題となるのはレビルの「総司令官」という肩書で、つまり彼は具体的にはどういう部署のどういう役割なのかというのが正直見えてこない。つまるところ、旧日本陸軍における総司令官は参謀総長を指す場合が多く、米軍も昔は「総司令官」という役職があったものの参謀本部と参謀総長の設置により廃止されている。そして連邦における参謀総長はゴップであり、以上のことから考えると本来総司令官はゴップなのである。
 これを打破する一つの案は、地球連邦内部にそもそも「サイド3派遣軍」のような組織があり、そこのトップがレビルだったのではないかという説である。サイド3派遣軍がそのまま対ジオン戦闘で主力となった結果、一年戦争において彼は「総司令官」と呼ばれていた。しかし立場上はゴップよりも下で実務側の人間、という見方もできるように思う。
 もう一つの案は、そもそも総司令官と参謀総長が別であるという考え方である。地球連邦軍はあまりにも規模が大きく、地球全体の指揮をとっていることから参謀本部の仕事が膨大であることは容易に想像できる。よって、総司令官という役職を作った、ということである。
 これはどっちが正解ということもわからないのだが、個人的には後者の案の方が物語には忠実な気がする。ただ前者の方が現実的であるという感じはある。

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ジオン公国軍組織図

 次にジオン公国軍の組織図なのだがこれが面白く、そもそも軍隊の統帥権はどこにあるのかというところが正直いってよくわからないが、おそらくデギン・ソド・ザビ公王にあるのだろうと思う。ただ、そのデギンはギレンの決定したことを追認するという形だったのではなかろうかと思う。
 そして兵器の開発なのだが、おそらくは技術本部が主導的に開発をしているのではないかという感じである。しかし、NT専用MAの開発などでは「フラナガン機関の協力のもと」という言葉が使われる。すなわち、技術本部で開発を主導するものとは別に宇宙攻撃軍や突撃機動軍が技術本部に対し開発を要求する場合が多かったのではないか、または、それらの軍が独自に直接ルートで開発させるパターンというのもあったのではないかと思う。ジオン製のMSが種類ばかり大量にあるのは実はこれが影響しているのではないかと。
 技術本部というのは基本的に政治力があまり強い部署ではないだろうと思う。実際責任者もザビ家の人間ではなく技術者(と推定される人物)である。技術本部としても次期主力MSの開発に集中したいところはあっただろうが、あらゆる前線からの要求が集まってくるような地獄の部署であったのではないかと思う。そして例えばキシリアからのNT専用MAの開発プランをもし技術本部が蹴ったとしても、直接メーカーに圧力をかけて作らせるということもキシリアにはできるであろう。詰まるところこの技術本部は非常に難しい組織であったことが想像できる。

 そして、ジオン公国軍には陸海空宙の区別がないのも特徴である。「海兵隊」というワードは登場するが、これもあくまで「最前線に投入し前線を切り開く」という目的の部隊ということであって、基本的には全ての戦力を統合して運用するのがジオン軍という感じである。この辺を見ていると効率的な気もするのだが、代わりに宇宙攻撃軍と突撃機動軍という揉めがちな組織があるのでこれはこれで厄介というか、問題が起こりそうな部分である。

 とにかく、これらのことからあらゆるシチュエーションを想像することができるようになったと言える。それらの情報を元に、いろいろ考えていくことができるようになった。

最後に

 話が大きく脱線してしまったりしたが、つまりはそういうわけで、駄作モビルスーツを想像してそれらしい物語を考えてこれをここでちまちま書いていけたらいいなと思っています。ネタはいくつかあるので、それをもう少しブラッシュアップして書いていけたらという感じです。

 そんな感じなので、ぜひよろしくお願いします。

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