「また明日」で今日の終わり 冬空についた溜息は色を失いながら 空へと向かう 見上げれば雪 静かだからきれい このままつもって ずっと残ればいいのに けれどそれは嘘 瞬きすれば雪なんて降ってはいなくて 溜息は大気へと溶け込んでしまった 明日も「また明日」が言えたらいい 明後日も「また明日」が言えたらいい その次の日もその次の日も 突然の閉幕は嫌 手帳に印をつけるようなのも嫌 今も嫌 宙ぶらりんのカウントダウン 朝 カーテンの隙間から光が射しこんでくる カーテンをゆっ
「鑑賞」 初めて映画館へ行った 隣の人の顔を見て この映画は良い映画だったのだとわかった
委員長はタバコを喫う 校舎の屋上で喫っていた 烏を眺めながら 「さすがに学校はまずいですよ」と僕は言う こっちを見向きもせず「私、休憩中」 (何をですか?) 耳の中で風が暴れている 荒れた濃紺の海 それを眺めながら喫っていた 僕がとらえている背中は触れたら冷たい 「排他的だよね」と委員長が息を吐く もう委員長の声しか聞こえない 焚き火 勢いを増す炎を前にしてタバコをくわえた けれどタバコに火をつけたのはいつものマッチ 「ここが境だから」とけむりを吐く 炎は熱く委員長の瞳
「遠いね」 月が雲に隠れている 雲が月を隠している あっ! 空が点滅した
問い駆ける 何を言われかは忘れたわ ただ、私の中を突き抜けたのは覚えているの まるで電流が流れたみたい その衝動は忘れない 問い掛ける 言われたのはだいぶ昔 けれど覚えている いいえ。忘れてはいけないこと 今では私のテーマ 問い欠ける 別にいいのよ 言いたいときに言えば 言いたくないのなら言わなくとも 言いたいことを持つことはすばらしいわ けれど 言いたくないにしても 言うべきことがないにしても 言わないということは一つの幸せよ すばらしくなくとも 幸せでなくとも 生
「ゴール」 運動会 迷子の応援 声援はどこへいく?
「ねえ、読書中悪いけど散歩へ行こう」 「本、まだ途中なんだけど」 「うん」 僕がつけるのは、あきらめのため息だけ 肩を並べて歩く 海と空を見渡せる草原 草たちが緑豊かになびいている 僕が持っているのは読めるはずのない本だけ 「ねえ、気持ちがいいね」 「そうだね」 「ここはいいところだったね」 「そうだね」 「君はいい人だったよ」 「そうかな」 「私はどうだったかな」 僕が思考するのは 君にイヤな思いはさせたくない それだけ いや、それを言葉にする余裕も力も持っていない
「酷暑」 太陽が腰をおろして言った 「暑いな」