バレンシアの大量構想外に思うこと

皆様、お久しぶりです。
はじめましての方ははじめまして。

今回は、先日報道された【バレンシアの大量構想外】について、いちバレンシアニスタとして思ったこと。
そして、なぜ構想外という事態になってしまったかというところをつらつらと記していこうと思います。


https://www.soccer-king.jp/news/world/esp/20200715/1096692.html

ラ・リーガ19/20シーズン 第36節のレガネス戦後、このような記事が報道されました。
内容は現地のものを訳していたサッカーキング様の記事がわかりやすいと思うのでリンクで貼っておきます。
細部のニュアンスが現地報道と若干違う部分もありますが、ほぼ誤差なので問題ないでしょう。
今回はこの記事を元に

・選手たちが大量構想外となってしまった理由
・構想外となる選手たちの選定
・フロントの思惑
・今回の件について、いちファンとして思うこと

を書き殴っていこうと思います。


【中心選手の大量構想外、その真相】

まず、この記事を見た時に、バレンシアを常日頃追いかけていない人であれば

「どうして!?」

と思ったでしょう。
実際、今回報道された構想外の選手たちのほとんどが主力です。
バレンシアのキャプテンであるダニエル・パレホ
スペイン代表でもレギュラーでエースを務めるロドリゴ・モレノ
ジョフレイ・コンドグビアフランシス・コクランといった、守備に長けたレギュラー格
その他にもシレッセンガメイロ・・・などなど、本来なら放出を考えるような選手たちではありません。

では、なぜ彼らがチームを追われようとしているのか

それはひとえに、親会社であるメリトンが彼らを邪魔だと思っているからです。

バレンシアのオーナーであるシンガポール人実業家ピーター・リムが代表を務めるのがこのメリトンです。(正確にはメリトン・ホールディングス)
彼らは今までも散々騒動を起こしてきています。
印象深いのは、監督経験のなかった元イングランド代表DFギャリー・ネヴィルを友達人事で監督に抜擢し、クラブの歴史上でも最悪レベルの結果を残したこと。
昨年の夏、国王杯を制し、選手からの信頼を勝ち取っていたマルセリーノ監督を解任した、などでしょう。
昨今のバレンシアの騒動の背景には必ずメリトンが関わっています

今回、大量構想外を生み出そうとしているのも、このメリトンがそう望んでいるからです。
直近2シーズン、バレンシアは成功を収めました。
マルセリーノ監督の元、2シーズン連続でのCL出場権を獲得し、昨年にはクラブ創設100周年のメモリアルイヤーで11年ぶりの国王杯のタイトルも獲得しました。

しかし、この成功にメリトンはほぼ関わっていません
これまでの働きを見ると、メリトンは自分たちの影響が少ないことを嫌がります。
そして、自分たちの言いなりにならなければ、たとえ結果を出していても関係ありません。

2018/2019シーズン、バレンシアはマルセリーノ監督の元、CL出場権獲得、ELベスト4、国王杯優勝を成し遂げました。
この結果を喜ばなかったバレンシアニスタはいませんでした。
ただ一人、ピーター・リムを除いて。
リム(メリトン)の最優先事項はCLに出場することです。
彼はマルセリーノら現場に対し、ELと国王杯から敗退し、リーグ戦でCL出場を確保するように迫りました。
当然、現場はそれを呑むことはできません。
彼らは力の限り戦い、結果的にリーガで4位に入りCL出場権を確保、ELはベスト4、そして国王杯を制しました。
しかし、これだけの成功を収めても、リムにとってはマルセリーノ=自分の言いなりにならなかった反逆者です。
結果的にマルセリーノ監督を始めとした彼の一派は、あっという間にクラブから一掃されました。

そして、次に一掃されるのが、彼を慕っていた選手たちなのです。

【構想外となる選手たちの選定】

構想外扱いとなる選手たちは2パターンに分けられています

・単純にパフォーマンス面で悪かった選手
・メリトンのいいなりにならず、ロッカールームでの発言力を持つ中心選手

単純にパフォーマンス面で構想外となる分には理解できます。
プロスポーツである以上、結果を出せなければ切られるのはある意味必然でしょう。
これにはティエリー・コレイアソブリーノマンガラディアカビ、そしてシレッセンが含まれています。
コレイアは災害と評されてしまうほど、守備面での弱さを露呈してしまいました。
守備の選手としては致命的なまでの守備の弱さに加え、攻撃面でも良いところ無しでは仕方がないでしょう。
ソブリーノも加入から1年半、良い所はほとんど無いままバレンシアでのキャリアを終えようとしています。
マンガラは昨夏マンチェスター・シティから完全移籍という形で"復帰"しましたが、最初の半年はシティ時代の怪我のリハビリに費やしました。
そしてプレー面でも決して優れていたということはできません。
ディアカビについてはもはや説明するまでも無いでしょう。
彼が出場しているということは、すなわち、必ず失点するということと同義です。
そしてレギュラーGKのシレッセンですが、良いプレーは時折見せているものの安定感がなく、ミスも非常に多いです。
これまでバレンシアのゴールを守ってきた選手たちと比べればパフォーマンスレベルはかなり低く、かといってキャプテンシーを持ち合わせているわけでもありません。
代わりのGKを獲得できるのであれば、彼の構想外はある意味必然でしょう。

これら戦力的構想外とは違うのが、次に紹介するメリトンの言いなりにならない選手たちです
それはダニエル・パレホロドリゴ・モレノフランシス・コクランジョフレイ・コンドグビアケヴィン・ガメイロです。
彼らは皆、バレンシアでもレギュラークラスの選手たちであり、昨シーズンの国王杯を勝ち取った主力です。
当然彼らはロッカールームでの影響力も持ち合わせています。
パレホロドリゴコンドグビアはチームのキャプテン達であり、コクランガメイロもプレー面で皆を納得させてきました。
それ故に、彼らはバレンシアを代表する選手として、これまでピッチ内外で振る舞ってきました。
しかし、メリトンにとってはこれは到底看過できない事態です。
メリトンがバレンシアを支配する以上、必要なのは自分たちにとって都合の良い選手たちです。
そしてこの選手たちは、メリトンの言いなりにはならない選手たちです。
セラーデス解任後、初戦となったアスレティック戦後、ロドリゴ・モレノはインタビューでこう語りました。

「チームとして、前の前の体制(マルセリーノ体制)でやっていたことを思い出そうとした。」

マルセリーノ監督はメリトンの言いなりにならず、チームを追い出された人物です。
メリトンにとって都合の悪い人物の体制のことを語ってしまったことは許される行為ではありません。
ロドリゴのみならず、パレホを中心とした現有戦力のほとんどがマルセリーノ体制を支持していた選手たちです。
その中でもピッチ内外で影響力・発言力を持つ選手たちはメリトンにとって危険因子・反乱分子です。

よって、彼らはまたもやメリトンの独裁のためにクラブを追われることになるでしょう。
中心選手であっても、功労者であっても、クラブのレジェンドになるであろう選手たちでも関係無いのです。
なぜなら、彼らはメリトン、いや、ピーター・リムにとってはマルセリーノ監督と同じ反逆者なのです。

【フロントの思惑】

メリトンが望むのは、自分たちが好き勝手をできる構造です。
そのために中心選手たちは構想外となろうとしています。
また、彼らを追い出し、代わりに連れてくる選手たちはメリトンが言いなりにできる選手たちです。
ピーター・リムは敏腕代理人であるジョルジュ・メンデスと友人関係です。
これまでも、リムはメンデスに頼み込んで彼の商品をバレンシアに連れてきています。
しかし、彼の商品で成功を収めたのはごく僅かです。
選手たちは代理人とその友人によって自分にとって不向きなチームへと派遣され、そして失意のまま去っていきます。
リムがチームや戦術にフィットするかどうか、ということは考えていないでしょう。
彼はメンデスに新しい選手を頼み、メンデスはそれをカモにして売り手が付くか微妙な選手たちを差し出します。
結果、チームは低迷し、皆が不幸になる悪循環が発生するのです。
そして、その過ちを、この夏、再び繰り返そうとしているのです。
しかも今回は、これまで崩壊しそうなチームをギリギリのところで支えていた中心選手たちがいなくなります。
これから始まるのは、最悪のシーズンである可能性が高いのです。


【今回の件について、いちファンとして思うこと】

バレンシアニスタの中に、もはやメリトンを支持する人はいないでしょう。
彼らにはクラブを買収し、破産の危機から救ったという恩義はあります。
しかし、それを経て待ち受けていたのは、クラブ史上最大規模のカオスです。
クラブのレジェンドOBであるマリオ・ケンペスはつい先日インタビューで

「昔もクラブの状況は酷かったが、それでも幸せだった。でも今は全てが狂っている。」

と語っていました。
おそらく、ほぼ全てのバレンシアニスタも同じ気持ちでしょう。
クラブを私物化し、カオスを引き起こしたメリトンは、もはや誰の信頼も得ていません。
彼らの話題が出る度に、バレンシアニスタは「LIM GO HOME!」と叫びます。
我々にとってメリトンは破産の危機を救った救世主ではなくなりました。
彼らは混沌をもたらし、クラブを危機に立たせる侵略者となったのです。

今、バレンシアの企業や実業家などが、メリトンからクラブを取り戻そうとクラブ買収を考えています。
しかし、メリトンはそう簡単にクラブを手放さないでしょう。
おもちゃを取り上げられようとして、駄々をこねない子供はいないのです。

来季から始まるのは、十中八九、近年でバレンシア最大の地獄です。
そしてもし成功したとしても、それはメリトンによる支配力の向上に繋がります。

バレンシアがこれから進む道の先は、闇か地獄しかありません。
クラブが再び光の下に立つには、メリトンという巨悪がクラブを去っていくことしか道はありません。

そんなあるかもわからない微かな希望を夢見ながら、バレンシアニスタたちは暗闇の中を彷徨い続けるのです。

バレンシアを讃える「Amunt!」と、合言葉となった「Lim Go Home!」を叫び続けながら、我々はその日を待ち続けます。

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