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君は「学校であった怖い話」というゲームを知っているか

こんにちは、なるぼぼです。

突然ですが、皆さんは「学校であった怖い話」というゲームをご存じでしょうか?
知ってる人は「あーあれね!」とわかるのですが、知らない人からすると「それホントにゲーム?」と思うかもしれません。
実際僕も、最初にこのタイトルを見たときは小学校の図書室にある怖い話の本を思い出したぐらいです。
なんともゲームらしくないタイトルですね。

しかし、本作はホラーサウンドノベルの草分け的作品としての価値があるだけでなく、ホラーゲームとは思えないほどの奇抜さでファンを魅了してやまない、独特なゲームでもあります。
今回は、そんな学怖シリーズの特徴と魅力をお伝えしていこうと思います。
よろしくお願いします。


1.「語り部方式」を生み出したシステム

本作は、ホラーサウンドノベルの草分け的作品としての価値があるとお話ししました。
とはいっても、本作の発売は1995年。
最初に出たサウンドノベルの「弟切草」が1992年なので、3年後に発売された作品です。
弟切草発売から3年も経過しているとはいえ、チュンソフトのゲームと何が違うの?と比較される状態での発売でした。
差異を作らなければ負けてしまう。
そこで、本作が出したシステム的な差異が「語り部方式」でした。

本作は、新聞部に所属する主人公が、学校の七不思議というテーマのもとで、先輩が呼び出した7人(実際には6人しか来ない)の話を順番に聞いていくという進行スタイルを取っています。
6人の話をそれぞれ順番に聞いていくので、彼らの話に一貫性はなく、それぞれが独立した物語として展開します。
こうすることで、本作は「短編集」としての面白さをプレイヤーに提供することに成功しています。

そもそも、本作より前に出た「弟切草」や「かまいたちの夜」、「夜光虫」などは明確なストーリーラインと目標があり、ゴールラインまでの筋書きがある程度予測される内容になっていました。
だからこそ、大きな筋書きが決まっているので、エンディングを集めるたびに新鮮さが失われていき、飽きやすくなってしまうという問題点がありました。
しかし、本作は6人のうちだれの話を何番目に聞くのかで、彼らの話す物語がガラリと変わります。
6人×6通りの話があるので、最低でも36話分の物語がそれぞれ楽しめるようになっているんです。
ジャンルの切り替わりもしっかりしており、学校というテーマ以外は全く違った物語が展開されるので、何周しても飽きません。
しかも、それぞれの話に「弟切草」のような選択肢で展開が変わっていくシステムを盛り込んでいるので、バッドエンドを含めても相当量のエンディングや結末があり、プレイヤーを飽きさせないようどこまでも工夫がなされています。

また、話が区切られていることで、「大体このぐらいで終わるな」とプレイヤーが時間の指標を立てられる点が良い。
しかも、話が区切られていると、サウンドノベル初心者も遊びやすくなるんです。
話の内容が区切られていることで、1話ごとにプレイヤー側は休憩を挟んで頭を休ませることができます。
さらに、話をずっと覚えていなくてもよいので、しばらく放置していてもプレイを再開させやすくなっています。
一気に遊んで「おもしろかった~!」ってやるよりも、ちょびちょび遊んで「良いゲームだったな」とずっと覚えられるような作りは、本作の妙だと思います。

この区切りは遊びやすさのメリットだけでなく、ゲーム的な面白さを与えている点にも注目すべきでしょう。
本作は語り部の順番で話す内容が変わっていくので、プレイヤーは「次は誰を選ぼうか」「この周回はこの順番で話を聞こう」と、語り部の順番による攻略チャートを作ることができます。
これが戦略的な面白さと、次に何を話してくれるのかというワクワク感を生んでくれます。
ちょっと戦略的にキャラクターを選ぶ、というだけでも、文章と選択肢に頼り切ってしまうサウンドノベルでは新鮮な頭の使い方です。
一周が少なく作られている学怖ならではの遊び方を楽しめます。
順番と選択肢によって到達できる隠しルートもあるので、ゲーム的な楽しみには事欠かないでしょう。

ルートによっては語り部がいなくなることも

こんな感じで、本作の「語り部システム」という作りは、サウンドノベルの型破り的な手法を取りつつも、様々なプレイヤーの希望を柔軟に受け入れる、とんでもなく間口の広いシステムだったんです。

2.実写を取り込んだ先進性と、強烈なキャラ付け

さて、ここまでシステムについてお話してきましたが、それだけでは本作が名作と言われるにはあまりにも弱い。
システム以上に、本作を魅力づけているもの。
それは、間違いなく「実写取り込みとそれについている強烈なキャラクター性」でしょう。

本作、特に原版となるSFC版は、スーパーファミコンで発売されたにもかかわらず、スチルや一枚絵、キャラクターの絵に実写が用いられています。
スーパーファミコンは実写を用いた作品がほとんどなく、正直僕もこれと次回作となる「晦 -つきこもり-」以外知らないぐらいです。
なのに、あえて実写を取り込み、先進的な技術を用いようとした点はすごかったと思います。
「ドラマと変わらないじゃないか!」なんて言われても文句言えませんもんね。
でも、それを言われないぐらいに語り部システムが完成されていたのもまた事実なので、凄いことだと思います。

「晦 -つきこもり-」より

で、実写にしたことによって何が起こったのかというと、キャラクターとプレイヤーの距離感が縮まりました。
「弟切草」や「かまいたちの夜」はキャラクターがシルエットになっているので表情や顔のイメージは自分の頭で補完するしかなかったのですが、本作はキャラに顔グラがついているので「あー、あの人ね!」と共通認識が作りやすくなっています。
また、基本的に聞き手となる主人公に話しかけてくる方式になっているので、「自分に話しかけてくれる」親近感がちょっとわきます。
これにより、語り部とプレイヤーの距離感が縮まり、キャラに愛着がわくようになっていきます。
そうして、キャラクターに輪郭ができるようになり、キャラゲーのように語り部たちが愛されるようになっていきました。

SFC版荒井

さて、実写により印象付けがされやすくなった語り部たち。
それを知ってか否か、本作は強烈なほどに語り部の個性が爆発しています。
彼らの話すテーマでイメージを残す人もいれば、名言を吐き出して印象付けてくるやつもいます。

特に自分が強烈な印象を持っているのが「細田友晴」
細田は基本的にしっかりとしたホラー話を展開してくれるのですが、なぜか全部の話が「トイレ」にまつわるものになっています。
そう、彼はトイレの怖い話しかしないトイレ野郎なのです。
見た目は太っていて汗っかき、ちょっと根暗な印象を与える彼ですが、見た目通りのちょっとジメジメした話が連発します。
そして、展開によっては主人公に友達宣言してすり寄ってきたりしますし、人殺しの癖してひ弱な一面を見せたりするという謎のギャップ萌えも狙ってきます。

SFC版。お前は高校生に見えないよ
PS1版では顔グラも増え、愛嬌が増しました

…これだけでもわかると思うんですけど、このレベルの強烈なキャラがあと5人もいるんです。
スポーツマンでイケメンな新堂誠。
超根暗で正統派な怖い話をする荒井昭二。
ひょうきんでキザ野郎の風間望。
冷たい美女で魔王様の岩下明美。
明るいけど話はかなり怖い福沢玲子。
そりゃあ彼らの魅力に虜になりますよね。

SFC版岩下。有無を言わせぬ気迫があります
これはPS1版福沢。これでも結構可愛くなったんですよ…

3.バリエーションが豊富すぎる、学校であった怖い話

さて、本作はキャラクターが魅力的であると話してきました。
だからこそなのか、本作の話のバリエーションはとんでもなく広いものになっています。
いくつか抜粋して(ネタバレにならない程度に)ご紹介していきましょう。

まず、有名どころの「飴玉ばあさん」

謎の飴を配って回る校門のおばあさんの話。
飴をなめた人は色々なことが好転し、素晴らしい学校生活を歩めるように。
しかし、おばあさんの渡した飴玉には一つだけやってはいけないことがあり…?

シンプルな構成ながら、落とし穴を一つ用意していることでずるずると悪い道に進んでいってしまう、学校の怪談の典型例。
とはいえ、終盤の展開は「これ小学生向きか…?」と思わせるほどに衝撃的です。
小学生向きな話なのに、小学生の背筋が震え上がるよりもたちの悪い終わり方をする話、実は結構多かったりします。

続いて細田の話に出てくる「トイレツアー」

細田はトイレに霊感が集まりやすいことを話したうえで、主人公に霊感があることを伝える。
そしてトイレに行ってほしいとお願いしてくる。
霊感のあるトイレに行けば何かがいる、主人公の選んだトイレは…

この話、なんと細田にお願いされて新校舎のトイレを全部回るという、イカれた展開になっています。
主人公が選んだトイレで霊現象が起こるというものなので、全部のトイレをしらみつぶしに回るわけではありませんが、それでもえげつない量の選択肢が待っています。
どのトイレを選んだかで話が分岐するというだけで、相当なボリュームがありますね。
また、主人公が直接霊的体験をするという、伝聞ではない直接体験という点でも、他の話との差別化ができています。

…とまぁこのように、本作のストーリーは、恐ろしいほどにバリエーションが充実しています。
正直これだけではなく、主人公が襲われたり、語り部が怪異に巻き込まれたり、話をした後急に雲隠れしたり、なんだかよくわからない現象に遭遇したり…。
実際にやってみないとわからないぐらい、本作の話の内容やジャンルは様々なものがあります。
ジャンルとしても霊的体験が主ではあるものの、人間の悪意がにじみ出た話や、サイコホラーのような話も用意されています。
また、語り部が他人の体験談を語る、いわゆる伝聞による話の展開だけでなく、実際に体験することで展開が全く分からなくなるような話も多く用意されているので、「他人の話聞いてもね~」と思っている人にも結構刺さります。

さらに、本作を引き立てるのが選択肢。
本作は所々で選択肢が出てくるのですが、選択によってはストーリーの前提から全く違う話に分岐することがあります。
一つ一つのボリュームは大きくはないものの、同じ順番で同じ語り部を選んでも、全く違う話をすることがあるのです。
語り部が最初にたわいもない質問をしてきたと思ったら、そこで話が一変していた…なんてことはしょっちゅうです。
こうした選択肢による話の変わり目も、本作のバリエーションの多さに関わっています。
さらに、リメイクのPS1版では選択肢が増え、さらに話のレパートリーが広がったことでより周回を楽しめるようになっています。

PS1版で追加されたエンディングもいくつかあります

本作はこのように、あの手この手で話を切り替えるポイントを用意してくれているので、周回で飽きることがありません。
このボリュームをスーファミのソフトに突っ込んでいるのもすごいですね。
本当に恐ろしいゲームです。

4.学校であった怖い話は「怖い話じゃなくても良い」

さて、ここまで本作がいかにボリュームがあり、ジャンルの広がりもあって飽きないかを説明してきました。
ただ、本作の最大の魅力はもっと別のところにあると思うのです。
最後にその魅力を持った人物(?)の紹介をしましょう。

本作の語り部の一人には、「風間望」という人物がいます。
彼はかなりのお調子者かつナルシストで、どんな時にでも冗談と武勇伝を忘れない、かなり癖の強いキャラです。
ひょうきんな語り口で怖い話を…なんと、してくれません。

そう、こいつはなんと怖い話をしないのです。
「一人七不思議」では金太郎の像が真夜中に動いているなどの超絶しょうもない怖い話(?)を一人でしてそのまま終わります。
しかも話を引き出すように主人公が誘導してあげないと、「なんだこの人は?」とか言い出して勝手に話が終わります。
一話ごとに風間に「終わりなんですか?」と聞かないといけないうえ、聞いても全部「人魂が出るんだよ。終わり。」とか言い出すうえ、あげくのはてには「食堂の飯がまずい」とか怖い話ですらない次元に到達します。
無茶苦茶すぎる。
他の話でも、こんな感じでま~~~~ったく怖くない話をします。

初めて選んだ時には「こいつ何しに来たん?」とは思うのですが、僕はこいつがいたことで大いに救われました。
というのも、このゲーム、他の語り部の話は結構えげつないんです。
怖い話、悪霊関係ならまだいいんですが、四肢が取れていくだとか、かなりむごい死に方をするだとか、虫がそこら中にいるだとか、結構グロかったりキモかったりと、ろくな話がないんです。
そりゃそうなんですが、現CEROでD判定(17歳以上推奨)を食らうほどには結構残酷な描写が目立つんです。
だからこそ結構げんなりするんですが、風間がめちゃくちゃしょうもない話をしてくれるおかげで、休憩というか緩衝材というか、落ち着けるんですよね。
この落ち着きのおかげで、かなり残酷な描写があっても、「まぁ風間もいるしな…」と思ってじっくり進めることができました。
「ホラーゲームなのに怖い話をしなくていい」という風間の立ち位置に、僕は驚かされました。

しかも、こうした風間という意味不明なキャラが出せるのも、「語り部システム」で怖い話をある程度補完できるからなんです。
本作は語り部システムを採用していることで、「かまいたちの夜」みたいに隠しシナリオとしてギャグ話を用意するのではなく、一周の間に必ずギャグ話を通るように組み込めるようになっています。
そのため、絶対に一話はギャグ話を聞けるようになっており、プレイヤーが落ち着ける時間が必ず用意されています。
このギャグ話の配置も非常によく、シンプルに怖がらせるだけではない、ホラーゲームにはないような優しさがとても良いです。
続編「晦 -つきこもり-」ではギャグキャラが消えてしまい、特定の語り部順で発生する隠しシナリオでしかギャグ話に到達できなかったため、本作特有の特徴になっています。
もったいないと思うんだけどな…。

5.終わりに

いかがでしたでしょうか。

このゲーム、10年ぐらい付き合いがあって思い出してはちょこちょこやっているのですが、今回PS1版を買ったことで再燃して記事にしてみました。
滅茶苦茶お勧めしたいんですけど、今はWiiUVCが終了したことで実機プレイでしか遊べなくなっているんですよね…。
派生作の「アパシーシリーズ」は結構違うところもありつつ、学怖収録予定だったシナリオが入っていることもあるので、そっちの方が今は遊びやすいかもしれないです。
ただ、個人的にはSFC版から始めるのが一番いいと思うんですよね…。
Revin氏の実況動画を見ることもおススメかもしれないです。

さて、次回ですがな~んも決めてません!
記事かく手が完全に死んでいるので、なんか思いついたりえげつないゲームに出会ったらまた更新しようと思います。
気長にお待ちください。
それでは~。









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