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【感想?レビュー?】十三機兵防衛圏 SFへの驚異的なまでの愛情

こんにちは、なるぼぼです。

ついに、ようやく、重い腰を上げて「十三機兵防衛圏」をプレイしました。
元々すごく気になっていたんですが、RTSというジャンルがあまり好きではなかったので渋っていたんです。
ただ、どうしても「ストーリーがいい」という言葉が忘れられず、思い切って購入することにしました。
結果に関してはお察しの通り、ハマりにハマったわけですが…。
今回は、そんな十三機兵防衛圏のレビューもどきです。
よろしくお願いします。


1.あの頃のノスタルジア

最初に本作の世界観から。

本作はSFモノとして、あらゆる兵器が出たりクローンやAIなど様々な「未来」のものが出てくるうえ、未来のフィールドが舞台となることもありますが、中心となる世界は「1985年」です。
今から40年ぐらい前の世界が中心になっているわけですが、その「解像度の高さ」は目を見張るものがあります。
数々の食べ物はともかく、「VHSの3倍再生」や古めかしいテレビ、バスを中心としたどこか懐かしい横町通り…。
連絡手段も公衆電話になっているところなど、リアリティに溢れています。
僕は00年代生まれなのでこの風景を目の当たりにしたことはありませんが、そこにはノスタルジーがありました。

そして、そのノスタルジーを強調してくれたのが「夕焼け」です。
本作は基本的に夕暮れの背景になっています。
この夕焼けの赤い空が妙なノスタルジーを感じさせてくれました。
昔遊んだ「トワイライトシンドローム」の10章でも夕焼けの景色にノスタルジーな背景を重ねて表現するというのがあったんですけど、夕焼けってそういうイメージ付けに繋がるんですかね…?
この夕焼けが(個人的には三浦編などで)印象付けられていたと思います。

さらに、こうした世界観の表れが、SFという本来は相反するものに絶妙にマッチしているのが素晴らしいです。
後述しますが、本作はありとあらゆるSFストーリーを混ぜ込んだSFのバーゲンセールです。
このバーゲンセールの舞台をあえて80年代にしたことで、当時のSFの盛り上がりを表現しながらも、相反するものの融合を実現しています。
これが絶妙に美しく映るため、最高の世界観になっています。
在りし日の街並み、本当に良かったです。

2.狂気的なまでのアニメーションと、2Dアドベンチャーの真価

さて、次はアニメーションなどの表現について。

本作のアドベンチャーパートは、基本的に2D平面になっています。
平面の街のなかでキャラを動かしていくというものですね。
これはどこか懐かしい、オールドな2Dアドベンチャーを思い起こさせました。
先ほども挙げましたが、「トワイライトシンドローム」にかなり近い印象があります。
どちらのゲームも、道を引き返したらゲームが進んだり、行動によってゲームのストーリーが分岐したりと、似た部分があると思います。
そうしたところに、オールドな感覚を覚えました。

しかし、そうしたオールドなシステムとは対照的に、アニメーションの作りはとんでもないことになっています。
特に2Dフィールドでのロボの動かし方が凄い。
機兵の躍動感、ダイモスのガチャガチャとした動きなど、ダイナミックな動きがゲームの臨場感を煽ってくれます。
戦闘パートの小画面でのアニメーションもガチのロボアニメになっており、ロボに対する執念のような作り込みを感じました。
キャラクターに関しても、コミカルな動きが多々あるので見ていて飽きません。

総合して、アニメーションに関しては恐ろしいほどに完成度が高かったと思います。
そうした部分が、懐かしさを感じさせつつも「このゲームは新しい」と思わせる一助になっていたのでしょう。
真価としては次にお話するSFの作り込みだと思うのですが…。

3.あらゆる方向からのSF

さて、先ほどは本作のアニメーションの執念についてお話してきましたが、本作は「SF」というジャンルにも異様なほどの執念を感じます。

まず、僕はプレイ前はSFなんて「陳腐」だろうと考えていました。
だって、「バックトゥザフューチャー」とかでタイムトラベルは擦られまくった題材ですし、SFというものにも「スターウォーズ」のような「固定概念」がついて回ります。
だからこそ現状打破が難しく、ありきたりな話に埋没するのではないか、だから微妙なんじゃないか、そう思っていたんです。

しかし、全くそんなことはなかった。
しかも、意外性のあるストーリーなどで打破したわけでもないんです。
何をしたかというと、「既存のSFあるあるを全部突っ込んでまとめあげた」のです。
とんでもないです。

AI技術、クローン技術、タイムトラベル、UFO、ロボット技術、宇宙計画、惑星開拓…。
本作はこうしたSFに出てくるワードが全部突っ込まれており、それでいてそれら一つ一つの単語にかなりのストーリーが乗せられています。
要はSFのごった煮状態なんです。
それでいて散らばっているわけでもなく、それらが一つのストーリーとしてまとまっている。
恐ろしいほどに、SFへの愛が作品のストーリーに散りばめられています。

本作は(タイムトラベルものであることもあって)時系列がぐっちゃぐちゃになっており、どこがどう繋がっているのかわかりにくいという難点はあります。
しかし、その難点があってもSFの面白さを全部突っ込んで作品に落とし込んだというのは、ありえないレベルでの執着です。
SF作品が好きだという、ある種の執念を感じました。

4.時代を飛び交い、中和するメロドラマ

さて、本作が重厚なSFであるとともに、タイムトラベルによる時系列の崩壊があることをサラッと言いました。
ただ、この時系列の崩壊が、ストーリーを極端にややこしくしているのは、いささか問題です。
どこがどうなっているのか、誰がいつ何をしてどうなったのか、非常にわかりにくくなっています。
そしてこのぐちゃぐちゃな流れはエンディングで整理されることもないので、自分で何とかしないといけません。
要は頭がこんがらがるわけです。

このこんがらがりの中で、「誰がこの事態を引き起こしたのか」というのを予測し振り回されるのも本作の魅力ではあるのですが、普通に遊ぶにはちょっと厳しいものがあります。
ゲーム序盤の出来事をずっと記憶できるわけではないですからね…。
その難解さにつまずく可能性があります。

しかし、このつまずきを抑える要素がこのゲームには隠されています。
それは、各キャラの「ジュブナイルな恋愛劇」です。
本作は時空を飛び交う中で、各々の恋愛模様が時を超えて展開されます。
過去と未来のキャラが出会って恋に落ちたり、問題解決をしている中で少しずつ惹かれていったり、ミステリアスな彼(?)に惹かれていったり…。
多種多様な恋愛模様は、SFと混ざり合いながらもプレイヤーに意識づけるように配置されています。

この恋愛物語の一番良い所は、「難しくなく、プレイヤーが覚えていられる」点です。
SFな諸々は新ワードの応酬に時系列の前後の把握と色々な要素を必要としますが、恋愛模様はそうしたものが(あまり)必要なくプレイヤーが追いやすいものになっています。
一人の友情を除き基本恋愛関係なのは「いくらなんでもできすぎでは…?」とは思いましたが、SFの中で時空を飛び越えて愛し合う関係性というのは最高だったと思います。
SFだからこそできるロマンですよね。

5.ゲームを「分ける」難しさ

さて、ここまでいいところを語ってきましたが、最後に一個だけ不満というか微妙だったところを。
それは、「戦闘パートの絡みが薄くなっている」点。

本作は、戦闘パートとアドベンチャーパートが別に設置されています。
そして、戦闘パートでは「戦闘しか起こらない」ようになっています。
戦闘パート中にプレイヤーが起こす指示は、あまりストーリーの本質に関わらないんですね。
ここが、個人的に微妙な点だと思いました。

僕はSRPGやRTSをほぼ遊ばず、「ファイアーエムブレム」ぐらいしか遊ばないのですが、FE(特に封印の剣や聖魔の光石)にある「敵に話しかけたら仲間になるドラマ」とか、「戦闘中に増援が細かくきたり、その増援にもドラマがある」といったような、戦闘中の展開の変化を無意識に求めていたようです。
だから、本作での増援が「なんか出てきたわ」ぐらいで終わっちゃったのは、アドベンチャーパートが良かっただけにしっくりきませんでした。
ただ、本作はアドベンチャーパートが戦闘パートの前日譚になっており、どうしても介入できないことになっているので仕方がないといえば仕方がないのですが…。

とはいえ、本作の本質が「アドベンチャーパートにある」と考えると、戦闘パートが関わってこなくてもいいのではないか、とも思えます。
戦闘パートのRTSが、システム的に悪いわけではないからです。
RTSが味気なさ過ぎたり、ゲーム性として中途半端だったらちょっとムッとくるかもしれませんが、本作のRTSは良くまとまっているうえに、役割による選出の面白さや、育成システムによる強化の方法など、ゲームとして進めて行く楽しさがあります。
そこは、一つのゲーム性として評価されるべきだと思いました。

色々言いましたが、戦闘パートに関しては「ゲームとしてはいいけど、リアルタイムでストーリーが動かないのはもったいないと思った」という意見です。
アドベンチャーパートが200点ぐらいの出来だったので、総合的には面白かったと思います。

6.交錯する二人の少年(ネタバレ注意!)

ここまでずっとゲームのシステム面を話してきたので、好きなキャラクターの話をしようと思います。

僕は最初「三浦慶太朗」が見た目で好きだったのですが、ゲーム終了時には「網口愁」が好きになっていました。
プレイボーイでなんでもできる彼の中にある、「ある男」との関係性に、本作のSF的な面白さがあったと思いますし、僕はそこが好きでした。
改めて詳しく見ていきましょう。

網口は1985年の咲良高校の生徒です。
鞍部や冬坂と同じく、機械を通じて世界が崩壊していき、自分たちがそれと対峙している夢を見ていました。
不思議に思いながらもあまり気にしていなかった網口。
そんな彼ですが、紆余曲折を経て二人の少女と出会い、彼の運命が徐々に明らかになっていきます。

二人の少女は「鷹宮由貴」と「因幡美雪」。
網口は鷹宮に惹かれていく一方で、テレビに映る因幡の依頼に耳を傾け、世界の真実に迫っていきます。
そんな中、三浦との接触によるインナーロシターの停止や薬師寺とのエンカウントが起こったことで彼は機兵能力に目覚め、夢の真実を知ります。
そして、最後には自身の前のループ存在であった「井田鉄也」の名前を知り、因幡美雪との関係性を知ることになります。

このストーリーの面白い所は、井田と網口という二人の人間の正反対さです。
井田は如月のことが、網口は鷹宮のことが好きですが、両者がループ間で同一人物でありながら、性格が真逆の人間を好きになっています。
また本人の性格も真逆で、井田はネットの歌い手を追いかけるオタクファンボである一方、網口は鷹宮のようなサバサバした女の子を好きになるイケイケボーイです。
知能が高い所が一致しているぐらいで、あとはほとんど真逆のようなキャラです。
如月以外の女に全く興味がなく、ロボットの器に入れ込んでまでも彼女を復活させたいと思う執念の塊である井田と、女の子であればどこへでも行ってしまうような網口の対比は、実質的に同一人物でありながら不思議な印象がありました。

その一方で、因幡美雪となった如月が網口に助けを求めていた点や、彼女が井田のことを好きだった点は、ラブコメとしてとても良かったと思います。
井田のことを信じていたから、ループ後の記憶がない網口に対してメッセージを送り続けていたというのは、何とも一途でいいものです。
それでいて、2-10の戦闘シーンの網口のセリフ「歌を聴かせて欲しいな」は素晴らしい演出でした。

ただ、唯一微妙だったのはその順序です。
因幡美雪が前ループの如月であったことは、2-10の戦闘後に語られます。
つまり、プレイ中は「急に歌を歌い始めたぞ!?」となってしまうのです。
この順序だけはノベル→戦闘にした方が良かったと思います。
そうするのが難しいのは重々承知の上なのですが…。

7.終わりに

いかがでしたでしょうか。

個人的に色々言いましたが、「重厚なSFを味わう上で本作以上の傑作はないのではないか」というほど、このゲームは厚みのある作品だったと思います。
SF好きな人、謎が謎を呼ぶストーリーが好きな人には是非ともおススメです。

あと、個人的に言っておきたいのが「アドベンチャーは好きだけどストラテジー苦手なんです」という人におススメしたい、という点。
ストラテジーの難易度はかなり抑えられるので、苦手でも十分楽しめると思います。
おススメです。是非。

さて、次回は相も変わらず未定です。
最近遊んだ「Milky Way Prince - The Vampire Star」あたりを話せたらいいな、と思ったり。
ちょっと話の内容が抜けているので、再プレイもあり得そうかも…。
要検討ですね。

それでは今回はこの辺で。
さようなら~。

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