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逆説的インディーの夏

8月。
クソ暑いお盆休みを超えて、世間はあるゲームに熱狂渦巻いていた。

「アーマードコア6」である。
かなりの時を経て最新作が出るコイツに、世間は熱狂しあらゆる人がハマりまくっていた。

…一方、僕はそっち側を全く気にしていなかった。
僕は「流行の新作には乗ってやんねぇよ」の逆張りをしまくるバケモンキチガイ野郎である。
だからこそ、アーマードコアにも熱狂していなかった…

…実はそういうわけではない。
「もっと注目していたゲームが前々から出ていた」のであり、「そっちにしか目が行かなかった」のである。
今回は、そんな二つのゲームを「逆説的インディー」の言葉に込めて簡単に紹介したいと思う。

①「Bomb Rush Cyberfunk」

「Bomb Rush Cyberfunk」はTeam Reptileから8月18日に発売された3Dアクションゲームである。
スケボーゲーム、音楽、ファンクな世界観、多様なトリック、全てが「Jet Set Radio」を想起させる、とてつもないゲームだ。

「Jet Set Radio」とは何か。
セガによって発売されたスケボーアクションゲームである。
スケボーアクションとしての完成度もさることながら、ファンクでノリノリなBGMと大都会を舞台とした若者らしいスタイルが魅力のゲームである。
次回作「Jet Set Radio Future」はXboxのみの発売となり、その後続編が出なかったこともあって、シリーズは幻となっていた。

そんなゲームのインスパイアを受けていると一瞬でわかるほどの痺れるPVを見て、このゲームに期待するようになった。
そもそも、このゲームとの出会いは任天堂のインディーズゲーム紹介番組「Indie World」である。

4月に放送されたこの番組のラストに、本作が位置づけられている。
痺れるようなファンクなBGM、ノリノリで街を爆走する感覚、全てがサイコーにキマっている。
この数十秒のPVに憑りつかれるように惹かれ、僕はこのゲームを買うことを4月の時点で決めていた。

…即座に買った。
滅茶苦茶にハマった。

求めていた世界観はバッチリそのまま出てきたし、音楽はマジで気持ちいいし、なんも考えずにトリックを繋げてコンボキメまくるのが最高に楽しい。
世間では「音楽が長沼氏に飲まれている」と言われているが、個人的にはそこまでもないし、「Condensed milk」なんかは意外性もありながらかなり良い感じのサウンドに仕上がっていていい。
音楽の挑戦的な感覚も含めて全部が好きだ。

個人的に一番勧めたいのは「コンボするだけで楽しい手触りの良さ」だろう。
スケボーゲームは難化が進みやすい傾向にあると思っていて、新しいゲームになるほど操作がシビアになると思っていたのだが、本作はそういったものがない。
レールを結ぶところに適切なドリフトとジャンプを入れて、レールコンボを決めまくるだけでいい。
それでいて手触りもかなり良く、シビアな判定を要求されることもそこまでないので難しさに対するストレスが少ない。
そして、それを支える操作性も感覚良く動いてくれるので、ストレスフリーなゲームに仕上がっている。
「Jet Set Radio」を求める人に、そしてスケボーゲームを求める人に、ピッタリの作品になっている。

②「Blasphemous2」

「Blasphemous2」は、8月25日にTeam I7から発売されたアクションゲームである。
「Blasphemous」という癖がありながらプレイヤーを惹きこんだ素晴らしいゲームに、新たな要素を入れブラッシュアップを入れた良作だ。

Blasphemous2は、アーマードコア6と同じ日に発売されたゲームであり、世間は完全にアーマードコア一色になっていた。
Blasphemous2はPCオンリーであること、Blasphemous自体の知名度もあって水面下でひっそりと発売された印象がある。
それでも、作り込みや出来栄えは十二分のものであり、求めていたものが確実に作り出された、堅実な作品であるといえる。

Blasphemous2のブラッシュアップは素晴らしい。
前作にあったもっさりしすぎていた操作感は見る影もなく、ソウルライクらしい重さもありながらも、もっさりしすぎている感じもなくなっていると言う点で、動作性が明らかに向上しているといえる。
例えば、前作にあったしゃがみやジャンプなど上下の動作における違和感は一切なかった。
また、トゲの即死判定が亡くなった点など、システムにおける理不尽要素がなくなっている点もブラッシュアップとしては素晴らしい。

かつ、新要素もゲームの味付けに一役買っている。
武器は3種類から選べるようになっており、前作に近い操作感とパリィを扱うシンプルな武器から、連撃を用いて素早く動いていく武器、重いものの範囲攻撃ができるデカい武器と、それぞれの癖がしっかりついていてどの武器でも楽しく攻略ができる。
さらには寵愛の背障による育成や前作からの続投になるロザリオなど、能力強化の幅が広がっており遊び方が違っている点も面白さに拍車をかけている。

ただ、ここまでのブラッシュアップは真に求めているものではない。
真に求めているのは徹底的にグロと美を追求した神秘的ドット絵であり、世界観である。
言うまでもなく、それは忠実に再現されている。
デカい敵キャラが減ったせいで大規模ドット絵が減っているのは惜しい点だが、それ以外のイラストや雰囲気は完璧である。
特に今作は肉体のグロさが丁寧に表現されたキャラが多く、その神秘性と残酷さはまさにBlasphemousが生み出す唯一無二のものである。
個人的にはフラスコ瓶関係の女性が良い。
奇蹟に狂わされた人間というほどではないが、描写のグロさと天使の無邪気さがなんともいえず「Blasphemousらしい」ものになっている。

ブラッシュアップの美しさは傑作という他ない。
初代とのストーリーの繋がりはあるが、難解すぎる上に繋がりが濃いわけでもないのでこっちから始めても問題ない。
是非遊んで、世界観を味わってみて欲しい。

「逆説的インディー」の夏

こうして僕の夏は終わった。
逆説的にインディーを探して発売の時を待って、世間の流行を無視してまで「自分のやりたいゲーム」に没頭できたのは良かったのかな、なんて思う。
逆張りは本来すべきことではなく恥ずべきことだが、それでも自分の信条があればやっちゃうべきだし、それが「カッコいい武器」になる日がいつか来ると思う。

そんな夏にサヨナラ。
冬は大型ゲームばっかやることになると思うので、逆説も何もないね。

 



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