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シェアリング・エコノミーと旅行業界—世代を超えたサービス普及へ

 気軽にツアー旅行を楽しみたいとき、頼れるのは旅行代理店だけではない。近年、何かと耳にすることが多いシェアリング・エコノミーが旅行業界でも目立ち始めている。旅行だけに限らないユーザー同士の関係構築を目指すサービスも展開される。

 
 総務省のサイトによると、シェアリング・エコノミーとは、個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出を仲介するサービスだ。若者を中心に普及が進むこのサービス形態では、ソーシャルメディアなどを介したユーザー同士のコミュニケーションで信頼関係が築かれる。

 
 ソウルへ友人と旅行予定の45歳女性は、旅行マッチングサイトを通じて現地在住の35歳男性会社員と知り合った。3人での旅行中、現地情報収集や価格交渉を請け負った韓国在住のユーザーが、現地在住ならではの旅行ノウハウと言語力を「貸し出した」形だ。

 
 旅行などを目的に海外で活動したいユーザーと、それを手助けしたい海外在住のユーザーをつなげる場を提供するのが株式会社トラベロコだ。トラベロコの平林磨衣さんによると、2015年1月に開始されたこのサービスは、言語・文化が異なる国での行動に不安を覚える日本人の存在に着目。着実に利用者を増やし、ユーザー数は15万人まで増加した。(2019年7月時点)

 
 特筆すべきは、利用者の年齢層だ。年代別に登録者数の割合を見ていくと、40代が32%、50代が17%と、この2つの世代で半数近くを数えることになる。「国内シェアリング・エコノミーに関する意識調査2019」によると、「シェアリング・エコノミーのサービス」の利用経験の有無は40代と50代を合わせても4分の1に満たない。シェアリング・エコノミーを用いたサービスの利用者の年齢層としては特異であることがわかる。

 【図】2019年7月現在の年代別登録者数
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000024321.htmlより

 平林さんは、「時間やお金に余裕があり、一般的な旅行に飽きて本サービスを利用する人たちの年代がこの世代に多いのではないか」と語る。   

 
 観光ビジネスを通じて広い世代にシェアリング・エコノミーが普及する可能性はあるが、ユーザー同士の世代が離れれば、世代による価値観の違いが浮き彫りになることも考えられる。どの世代に利用されてもユーザーの満足度を保つことができるか、関係者は注視している。

この記事を執筆するに際し、株式会社トラベロコさまの平林磨衣さんにご協力いただきました。厚く御礼申し上げます。

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