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新茶と普通のお茶、味の違いはわかるのか?

一年で日本茶界がもっとも盛り上がる、新茶の季節が到来しました。

1899でも新茶フェアが始まり、たくさんの方に新茶メニューをお召し上がりいただいています。

新茶、とってもおいしいですよね。
その味わいは、青々しい、若々しい、新鮮、などと言われており、一般のお茶にはない特有のおいしさがあるとされています。

しかし・・・その違いって、はたして誰にでも分かるものなのでしょうか?

きっと飲む人が飲めば分かるのでしょう。
でも、日頃から日本茶をたくさん味わっているわけではない、「たまに飲む」というライトな感覚で楽しんでる人にも感じ取れるものなのでしょうか。

今回は、そんなお茶業界の禁断の領域(?)に足を踏み入れてみたいと思います。

成分に違いはあるのか

新茶と、そうでないお茶。
まずは成分の違いをみてみましょう。

オチャノキは常緑樹ですので、秋冬に葉を落とすことなく一年中緑の葉を付けています。
そのため、お茶の葉は一年に複数回摘むことができるのですが、その年に最初に芽吹いた新芽を摘んで製茶されたお茶をだけを「新茶」と呼びます。
そして、2番目に摘んだ葉で作ったお茶を「二番茶」、3番目に摘んだ葉で作ったお茶を「三番茶」と呼びます。

新芽の見た目はこんな感じ。
新しく芽吹いた芽は、緑色もまだ淡く、見るからに柔らかそうです。

そんな新茶の葉には、葉を摘まない期間である秋から冬にかけて貯蔵された旨み成分「テアニン」がたっぷり含まれます。その量は、2番茶以降の3倍以上とも言われます。一方、苦みを感じさせるカテキンは、新茶の方が少ないのです。その香りは、“青々しく若々しい”、“爽やか”などと表現されることが多いようです。

旨みが強くて、苦みが少ないという新茶。成分を聞いているだけで、なんだかおいしそうですよね。

「やぶきた」と「新茶 やぶきた」を飲み比べる

さて、ここからが本題です。
新茶は、そうでないお茶と味が違うのか。

それを知るには試してみるのが一番!ということで、CHACHACHAブログの制作に携わるメンバー6人に協力いただき、同じ品種の新茶と新茶でないお茶の2種を飲み比べてみることにしました。

用意したのは、日本茶の王道品種「やぶきた」です。新茶と新茶ではないお茶、どちらも同じお茶屋さんで製造されたものを揃えました。

お湯を入れるまえの茶葉を比べてみると、これは・・・ほぼ違いがないと言って良いのではないでしょうか?
我々には違いが分かりませんでした。

新茶と新茶ではないお茶、どちらもティースプーンで2杯を急須に入れ、少し冷ましたお湯を同時に入れて30秒。

どちらも同じ回数急須を傾けて、同時に注いだのがこちら。
右が新茶です。

水色の違いも、大きな違いがあるとは言えなそうです。


ではいよいよ飲み比べてみましょう。

味わってみると・・・微妙に何かが違う。しかし言語化するのが非常に難しい。
同じ茶種、同じ茶園で製茶されたものですので、味わいの大枠?は同じ方向ですが、ちょっと違うところがあるような・・・
わたしは、新茶の方が香りも味も深いように感じられました。

CHACHACHAメンバーに聞いてみたところ、こんな感想がでました。

・新茶でないお茶の方が、日頃家で飲んでいる味に近い印象。新茶は最初にまろやかさや甘みがあった。

・新茶でないお茶は、新茶に比べると旨みも苦みも弱いような気がしたのと、若干水っぽいような感じ。新茶は旨みも苦みも強く、余韻が長い。

・色や味の違いはわからなかったが、新茶でないお茶の方がの香りがやや強いと感じた。

・新茶でないお茶の方が、味の濃さ、香りの強さを感じた。新茶の方が爽やかで、香りもやさしい。


全員が同じお茶を飲んだのですが、味の感想が違うのがおもしろいですね。

味の違いがわからないと感じた人もいるし、違いを見出した人もいる。
違いを感じた人の中でも、「香りが強い」と感じたお茶が逆だったり、別の感想があがったりする。

実は最初はどちらが新茶かを伏せて味見をしてもらったのですが、「こちらが新茶だと思う!」と言い当てた人もいました。

お茶には、「苦み」「旨み」「渋み」などのひと単語だけでは表せない、いろいろな味わいが複雑に混ざりあうことで、絶妙なおいしさを醸し出しています。
味の感じ方は、その人が普段食べるものによっても変わります。
個人的な感想になりますが、どの人の感想にも不正解はなく、この複雑な味わいのうちのどの部分を強く感じたのかが、人によって違ったのかなと思いました。

茶殻も比べてみる

お茶を味わった後は、せっかくですから茶殻も見てみましょう。

すると・・・明らかに色が違うではありませんか。

右が新茶です。
写真だと分かりにくいですが、実物は見てしっかりわかるくらい、新茶の方が黄味が強いです。

お湯を入れる前の茶葉も、浸出液も、色味に大きな違いがなかったため、ちょっと驚きです。
オチャノキの、新芽と成長した葉の色の違いが思い起こされる色合いですね。

せっかくだから、と集まったメンバーに茶葉を食べてもらったのですが・・・

新茶でないお茶の方が苦い!という意見で満場一致。

お茶の味についてはいろいろな感想がありましたが、ここへきて初めて参加者の意見が揃いました。笑

新茶のやわらかくて苦みが少ない茶殻は、とってもおいしく食べることができますので、ご自宅で新茶を飲んだ後にはぜひ食べてみてくださいね。
私は、ポン酢をかけて食べるのが好きです。

“日本茶のプロ”、坂上にも聞いてみた

最後に、1899のドリンク開発責任者をつとめる坂上克仁にも飲み比べてもらいました。
日本茶インストラクターの資格をもち、1899を代表する茶バリエの一人でもある坂上の感想はいかに?

先ほどと同じようにお茶を淹れて、味の違いはどうですか?と、2種を一口ずつ飲み比べてもらったところ・・・「違いますね」と即答。
どちらが新茶なのかは、飲む前に茶葉を見て当てられてしまいました。いやいや、さすがです。

新茶でない方のお茶には、火入れの香りをしっかりめに感じ、
新茶には、特有の青々しさを感じることができたそうです。

もう少し詳しく、新茶の味の感想を聞いてみると、
・火入れの香りが控えめで、素材の味を感じられる
・渋みや苦みが強くなく、程よい
・深蒸しらしい、マイルドな仕上がり
・新茶らしい青々しさも残しながら、トゲがなく、バランス型の味わい
ということでした。

印象的だったのは、新茶だからこういう味がした、という話ではなく、今年の「この新茶はどんな味か」という視点から感想を話してくれたことです。

お茶は、新茶か新茶でないかという違いだけではなく、同じ地域で育った同じ茶種でも、その時の天候や、製茶の仕方によって大きく仕上がりが変わります。

例えば昨年の新茶は、新芽がでたあとに寒くなってしまったため、霜にあてられてしまい厳しい環境の中で育ったのだそうです。
しかし、だから去年の新茶はおいしくなかったのか?というと決してそういうことでは無いのです。

お茶は、葉を摘んだら終わりではなく、「製茶」という工程に入ります。
この時、茶師さんたちはその年の葉の状況をみて、揉捻や火入れなどの具合を調整して、その年のその葉にとってのベストな状態に仕上げていきます。まさにプロの仕事です。

そのようにして、その年の、その時期、その葉だけのお茶ができあがるのです。

そうして仕上がった茶葉を、どのように淹れるかによってまた味が変わってしまうわけですから、茶バリエの仕事もまた責任重大だな、とも改めて感じさせられました。

今回たどりついた結論

今回試してみた結果、新茶ならではのおいしさというのは、成分としても、味としても存在していると感じました。

しかし、お茶の味はとっても沢山の要素によって決まり、人によって好みや受け取り方も異なる為、「新茶だからこういう味!」と一言で説明はできないものなのだとも感じました。

お茶との出会いって、ほんとうに一期一会ですね。
今年の新茶は今しか飲むことができませんから、ぜひとも一度は味わってみてくださいね。


本記事のライター:山口沙織