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クラブ化粧品-近代美粧-

先日入手したクラブ化粧品中山太陽堂編『近代美粧』。近代美粧は2冊目ですが、今回の冊子は大正末〜昭和一桁頃に発行されたものだと考えられます。内容は商品カタログ兼美容指南書としてまとめられており、既に入手している冊子と重複している箇所ばかりです。それでも、これはこれで簡易的に紹介しておこうと思います。ただ、所有している冊子の発行時期が近いため、化粧法に大きな変化はありません。ですが、この頃には戦前の化粧法が確立したともいえるのではないでしょうか。

♣表紙と見返しの図案

アールデコを意識した可愛らしい花のイラストが施された表紙です。このように抽象化した花は、同時期の染織図案でもよく見られます。各百貨店や染織会によって命名はことなりますが、大丸百貨店では「サンボリズム」模様と名付けられ販売されていました。

一見簡素で面白みに欠ける図案に感じられますが、金箔を使用した凝った作りをしています。見返しは洗練された唐草模様がお洒落で、化粧品の包み紙に使用できそうな気がします。


♣目次

♣気品と魅力
♣顔と洗うには
♣フェース・マッサージ(家庭美顔術)
♣盛装のお化粧
♣御訪問・観劇・御外出のお化粧
♣簡単な淡化粧
♣非常事態化粧(三分間化粧)
♣色白粉の使い方
♣お化粧直し
♣脂性の人
♣肌荒れと日焦け
♣手のお化粧
♣頭髪の手入れ
♣歯の磨き方
♣男子の髭剃り
♣顔と洗うには
♣フェース・マッサージ(家庭美顔術)
♣盛装のお化粧
♣御訪問・観劇・御外出のお化粧
♣簡単な淡化粧
♣非常事態化粧(三分間化粧)
♣色白粉の使い方
♣お化粧直し
♣脂性の人
♣肌荒れと日焦け
♣手のお化粧
♣頭髪の手入れ
♣歯の磨き方
♣男子の髭剃り


♣気品と魅力

容(かたち)を整えるということは、人がこの社会に一人でない限り女と謂わず男と謂わず若いと老いとを論ぜずなさねばならぬ務めであります。
髪の乱れ、顔の汚れ、衣服の着崩れ、それがどんなにその人を醜く見せるかと云うことを考える前に、それが見る人をどんなに不快にさせるかということを考える時、容を整えるということは自分自身の為であると同時にまた社会人として礼節の一つであります。
整った容姿は整った心を要求し、整った心は整った容姿を要求します。整容は心です。よき心の表れです。よき心はやがて美しき容姿です。即ち真の美は清き心と美しき容姿と相俟ったものです。それ故に化粧は特に世の婦人の身嗜みとして清く正しく生きる上に最も必要な美的修養であります。
その純真な化粧美は如何にせば得られるや、それは良き化粧品の選択と、それらの合理的使用であります。


♣顔を洗うには

日常の洗顔は入浴と同様、皮膚の若返り法で、従ってお化粧を美しくするためには誠に大切なことです。

♧石鹸の使い方

石鹸の泡は皮膚の垢や汚れを綺麗に落とし新しい力を皮膚に与え、皮膚の美しさをいつまでも保たしめるのであります。

  1. まず、掌の中で充分に泡立てます。

  2. その泡を顔や襟につけて適度に擦ります。

手拭に石鹸を擦りつけてその手拭で顔や襟を擦ってはいけません。これは却って柔らかい顔の皮膚をそこねるため効果はありません。

洗顔料は、石鹸の他に洗粉があります。クラブ洗粉はどんな皮膚の性質の方にも合う定評ある優良品です。


♣フェース・マッサージ(家庭美顔術)

顔の血行を改善しながら皮膚の弛みや皺を延ばし、脂肪や汗の分泌を調節することで色艶が良くなら効果があります。更にニキビ、ソバカスなどを防ぐことも期待できるため、今日では、その効果からフェース・マッサージを推奨する美容大家が大変増えています。

♧マッサージ方法

  1. 蒸しタオルで二、三分間よく顔を蒸します。

  2. クラブコールドクリームを襟から顔に軽く擦り込み、カップですっかり吸い取ります。残っているクリームはガーゼで拭き取り、もう一度蒸しタオルで顔を蒸します。

  3. クラブマッセークリームをお湯または水で溶かし顔全体に塗ります。

  4. 両手の指先で、顔の中央部から左右へ水平にマッサージします。

  5. 眉頭の間から上へ擦り上げ、生え際の下で指を左右へ開いて顳かみをマッサージします。

  6. 目の下を鼻柱から左右へ目尻に向かって小円を描きつつマッサージし、鼻は左右の中指で両側の小鼻から鼻先および上方へ向かって擦ります。

  7. 両頬は鼻の側から左右へ耳下に向かって両手の指先で大きい円を描きながら摩擦します。

  8. 最後に、顎の中央部から左右へ開きながらマッサージするのです。

顔が済みましたら、次は襟をマッサージします。

  1. 襟にクラブマッセークリームを塗ります。

  2. 左右の指先で、耳の後ろから襟足に添って小円を描きながら首筋まで撫で下げ、その手を更に前方顎の下部分まで撫で延ばします。

  3. 最後に喉のあたりから左右へ撫で上げます。

マッサージが終わったら、再び蒸しタオルで顔を蒸し、クリームをよく拭き取ります。仕上げにクラブ化粧水あるいはクラブ美容液、もしくはクラブ美身ゼリー(荒れ性の方)をつけましょう。


♣盛装のお化粧

華やかな盛装をされた場合は、お化粧も濃化粧でなければ調和がとれません。

  1. 顔や襟をカテイ・クラブ石鹸あるいはクラブ洗粉でよく洗います。

  2. 荒れ性の方はクラブ美容液かクラブ美身ゼリーを使用します。脂性あるいは普通肌の方はクラブ化粧水で地肌を整えましょう。

  3. クラブ水白粉を板刷毛で付け、水気を軽くガーゼで取ります。

  4. クラブ頬紅を少し濃い目に付け、それを水刷毛で綺麗にぼかします。ガーゼで水気を取り、刷毛で白粉と頬紅をなじませるように刷きます。

  5. 襟は白粉下クラブつぼみかクラブ美の素を掌で充分にならし、よく擦り込みます。

  6. クラブ固練白粉を板刷毛で付け、牡丹刷毛でよく叩き込み、水刷毛で落ち付かせてから、刷き刷毛でムラをならします。

  7. クラブ美身クリームを掌で充分ならし、軽く襟から顔を叩き、その上からパフにクラブはき白粉を付け、充分に含ませます。

  8. ガーゼを指先に巻き、眉やまつ毛についた白粉を拭き取ります。最後にクラブ眉墨を濃く引き、唇にはクラブコールドクリームを一寸引いてからクラブ口紅を濃い目に付けます。

白粉下のクリームを付ける際は、必ずクリームを両掌で充分ならしましょう。襟や顔へ満遍なく擦り付けると、クリームがムラなく付き白粉のノリが良くなります。

固練白粉は二回、三回と重ね付けして自然に濃くするようにしましょう。そうすると、一度に濃く付けるより化粧崩れしにくくなります。


♣御訪問・観劇・御外出のお化粧

  1. 顔や襟を洗顔します。

  2. 荒れ性の方はクラブ美容液かクラブ美身ゼリーを使用します。脂性あるいは普通肌の方はクラブ化粧水で地肌を整えましょう。

  3. クラブはき白粉をパフに付けて顔を叩き、その上から水刷毛でならします。水気をガーゼで軽く吸い取ってから、クラブ頬紅を付けます。再び水刷毛でならすと頬紅がなじみ、ほんのりと自然の血色のようになります。ガーゼで水気を取り、刷き刷毛でよく白粉のムラを取ります。

  4. クラブ美身クリームを少量取り掌で延ばし、鼻から両頬のあたりを軽く押さえるように付けます。

  5. パフに少量のクラブはき白粉を付け、軽く叩くよう落ちつかせます。

  6. 襟は、白粉下のクラブつぼみまたはクラブ美の素を、掌でムラなく擦り込み、クラブ煉白粉を板刷毛で付け、牡丹刷毛でよく叩き込みます。水刷毛で白粉を軽く落としてから、刷き刷毛でムラを取ります。

  7. 指先にガーゼを巻き、眉やまつ毛についた白粉を拭き取ります。クラブ眉墨で眉を引き、唇にはクラブコールドクリームを薄く引いてからクラブ口紅を形よく付けます。


♣簡単な淡化粧

  1. カテイ・クラブ石鹸、もしくはクラブ洗粉で洗顔をします。

  2. 脱脂綿へクラブ淡白クリームを付け顔によく擦り込んでから、パフにクラブはき白粉を含ませよく叩き込みます。

  3. クラブ頬紅をほんのりとぼかすようにつけます。

  4. クラブ眉墨を引き、クラブ口紅を一寸差します。

  5. 襟はクラブ化粧水をつけ、クラブ水白粉を板刷毛でよく塗り込み、水気をガーゼで取ります。最後に、パフにクラブはき白粉を少し含ませムラを取りながら仕上げます。


♣非常事態化粧(三分間化粧)

俄に人前に出るとか、兎に角非常に急ぐ場合の化粧法です。

  1. 洗粉の代わりにクラブ乳液を脱脂綿に浸し、顔と襟の脂や汚れを拭き取ります。クラブ乳液は石鹸や洗粉で洗うのと同じように、脂や汚れ、残った白粉を綺麗に落とします。

  2. クラブ化粧水(荒れ性の方ならクラブ美身液)を襟から顔へ付け、クラブビシンを少量取り、クラブ化粧水か水で一寸薄めて襟と顔へよく擦り込みます。(クラブビシンの代わりにクラブクリーム白粉をそのまま使われるのも一法です。)

  3. クラブ頬紅を刷き、パフにクラブはき白粉を含ませて軽く叩きます。

  4. ガーゼで眉を拭いてクラブ眉墨を引き、最後にクラブ口紅を適宜差します。

もっと簡略化した方法もございます。
1の手順

クラブ美身クリームを掌に少量取り、襟と顔へよく擦り込みます。

クラブはき白粉をパフで叩き込みます。

クラブ頬紅を一寸ぼかし、クラブ眉墨で形を整え、唇にクラブ口紅を差します。


♣色白粉の使い方

白粉は白いものと昔から定まっていましたが、最近では肌色、桃色、水色を始め数種の色白粉を必要とするようになりました。色白粉といっても、顔に強く色づくというものではなく、地肌の色を調節する程度のものです。色白粉を使用する場合は、その人の顔色に応じて使うのが良いでしょう。

  • 色白の若い人…華やかに見える桃色。

  • 色黒の人…黒い生地を目立たぬようにする肌色。

  • 赤味がかった人…赤味を調節するのに適した水色。

また、着物の色が顔に反映することがあります。
例えば、納戸色の着物の時には白い白粉でのお化粧は、白さが余りにドギツク感じて生彩味の失われることがあります。この場合には、それに応じて後から色のはき白粉で調子を直して行くと良いのであります。
さらに、外出・在宅、昼・夜によっても色味を調節することが肝要です。
要するに、自分に似合う色味を丹念に研究する努力が必要となります。


♣お化粧直し

外出時にハンドバッグに入れておくと便利な化粧品

  • クラブ紙白粉

  • クラブコムパクト

  • クラブはき白粉と小刷毛

  • クラブ美身クリーム

化粧直しの方法は、クラブ紙白粉でそっと脂や汗を吸い取り、コムパクトのパフで軽く押さえて直します。
化粧崩れが酷い場合は、紙白粉で崩れた部分を綺麗に拭き取り、少量のクラブ美身クリームを塗り込みます。コンパクトのパフか、小刷毛でクラブはき白粉を刷くと綺麗に仕上がります。


♣脂性の人

脂性の人は白粉のノリが良い代わりに崩れやすく、ニキビや吹出物などが出来やすい性質です。原因は皮脂腺の分泌異常から来るもので、こういう方は、適度の運動を心がけ、消化、便通、血行を良くし、食物も脂肪性のものは避けるようにしましょう。
朝夕、カテイ・クラブ石鹸でよく顔を洗い(脂性の人は、水よりも微温湯を用いて洗顔する方が良いです。)クラブ化粧水もしくはクラブ乳液をよく擦り込み、クラブタルカンを薄く刷いてからお化粧をしましょう。


♣肌荒れと日焦け

♧荒れ性の対策

寒い風が吹く頃になると、皮膚が荒れて思うようにお化粧ができない方があります。これは貧血や血液循環の不完全などが原因で、皮脂腺から分泌物が少なくなり皮膚が乾燥することが原因なのです。

  1. フェース・マッサージで顔の血行を良くし、皮膚に栄養を与えます。

  2. 洗顔はクラブ洗粉を使用し、洗顔後は必ずクラブ美身クリームを充分に擦り込みます。よく擦り込むことで肌を整え、自然に脂の分泌を促し、完全に荒れを防ぐことができます。

顔や手を洗ったあとは、水気湿り気などをきちんと拭き取りましょう。

♧日焦けの対策

日焦けは、太陽光線の中の紫外線が皮膚の色素を変化させた結果です。夏の外出、海水浴などの場合は当然起こることで、肌の色が黒くなるばかりが、キメが非常に荒くなることがあります。

  • 白粉下にクラブ美身クリームを濃く地肌に擦り込み、クラブ水白粉でお化粧をしましょう。クラブ美身クリームには紫外線を防止する効果があります。


♣手のお化粧

手も綺麗にしませんと汚いのが目立って見苦しいものです。次の方法を用いれば、見違えるように美しい手になるばかりか、冬は凍傷、罅、アカギレを防ぐことが出来ます。

♧通常

  1. カテイ石鹸かクラブ美の素石鹸を充分に泡立て、よく洗い、湿り気を拭き取ります。

  2. クラブ美身ゼリーかクラブ美身クリームをよく擦り込みます。

  3. クラブはき白粉を万遍なく刷き、仕上げに堅く絞った濡れ手拭いで押さえます。

♧濃化粧

  1. クラブ煉白粉または水白粉を刷毛で擦り込みます。

  2. 水刷毛で充分に落とします。

  3. 最後に乾いた手拭いで押さえます。

この方法ならば着物の袖に付くことなく、顔のお化粧と調和した美しい手に仕上がります。また、夏は汗予防にクラブ天瓜粉かクラブタルカンを刷いておくと良いでしょう。


♣頭髪の手入れ

頭髪は少なくも一ヶ月に一度は洗わなければなりません。洗髪料は、クラブ石鹸かカテイ石鹸、もしくはクラブ洗粉に限ります。粗悪な洗髪料は却って毛髪を傷め、抜け毛や切れ毛の原因になります。

♧洗髪の手順

洗髪は水よりも微温湯で行いましょう。

  1. 石鹸ならば充分に泡立て、洗粉ならばたっぷり微温湯に溶かしてよく洗います。

  2. 生乾きのうちにクラブキニーネと頭髪に振り掛け、指先で頭の地へ揉み込みます。

  3. 髪が自然に乾いたら、クラブ香油を全体に付けます。

フケや痒みの原因は、この手順を怠ることで生じます。ことにフケは抜け毛の原因になり、やがては醜いハゲになる恐れがあります。
普段、髪を結う場合も必ずクラブキニーネを充分に振りかけてから髪を梳くようにすると良いです。そして、クラブ香油を付けて結髪されるとなお良いでしょう。
洋髪の場合は、クラブポマードをブラシに付けて毛の乱れを整え、後れ毛をまとめると良いです。

男子の場合
フケの発生を防ぐために、クラブベーラムかクラブキニーネを用いることをお勧めします。整髪にはクラブポマードを櫛に取って使用すると、思いのままに形を整えることができ、髪の艶も誠に美しくなります。


♣歯の磨き方

美しい容姿は健康でなければ望めません。健康は何よりもまず胃腸が健全でなければなりません。胃腸の健全は歯の健康を必要とします。

♧クラブ歯磨粉の特長

口中に入れると比較的早く溶け、香気味爽やかで殺菌清掃力に優れています。

♧クラブ歯ブラシの特長

毛の硬度と植え具合が歯の隅々まで届くよう工夫した作りになっています。

♧磨き方

全面も左右奥も、上部の歯は歯ブラシを上から下へ擦るようにします。下側の歯は下から上へ、要するに縦に磨くのが合理的な磨き方ということです。なお、表面ばかりではなく裏側もよく磨き、歯石が出来ぬようにしなければいけません。


♣男子の髭剃り

  1. カテイ・クラブ石鹸を充分に泡立たせ、髭に塗布します。

  2. 熱い湯で絞った手拭いを上から当て、しばらく蒸します。

  3. 新たに石鹸の泡をブラシでたくさん塗布し、剃刀を当て、逆剃りせぬように髭を剃ります。

  4. 剃り終わったら、お湯でよく洗い流し手拭いで水気をすっかり拭き取ります。

  5. カテイフードまたはクラブ美身ゼリーを付けて軽く擦ります。

  6. 最後にクラブタルカンを擦り込みます。

この手順を行うことで、剃刀負けを防ぐことが出来きます。


オワリに

クラブ化粧品を収集していると、その使用方法や効果が知りたくなるのは明白であり、それを詳細に知ることができる貴重な資料です。
当時、どの化粧品会社も同様に冊子を作成していましたが、その化粧法に差異はないように感じます。
気になるのは、婦人方が化粧法指南書を参考にしていたのか、評判はどうだったのか、さらに婦人同士の四方山話の話題に上がることもあったか。そんな記事や資料がどこかにないでしょうかね。ご婦人方の声を聞いてみたいです。



クラブ化粧品の小冊子に関する記事はこちらです。