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足利銘仙の図案

写真フォルダを遡っていると、2018年に足利学校で撮影した銘仙行灯の写真が出てきました。記憶にないので調べてみると、「足利灯り物語」なるイベントのために設置されていたようで、行灯の周囲は足利銘仙の図案が貼られています。
ライトアップの写真は撮っていなかったようで、その様子は改めてネット記事で見ました。

足利学校付近には、足利織物伝承館なる施設があり足利銘仙の歴史を学ぶことができます。織物館のWEBサイトでも、歴史が解説されているので、興味のある方は覗いてみてください。
さらに詳細を知りたい方は、『VIVID銘仙 煌めきのモダンきもの』がお勧めです。2016年に開催された「VIVID銘仙ー煌めきのモダンきもの」の図録も兼ねて制作したそうで、戦前から戦後昭和までの銘仙の写真、宣伝ポスター、技術、図案などについて詳細な解説があり、銘仙を知る上で勉強になり一冊です。

『VIVID銘仙 煌めきのモダンきもの』

書籍には、栃木県産業技術支援センター、繊維技術支援センターに保管されている図案集(一部)が紹介されています。どのような図案が収録されているか気になり、国会図書館デジタルコレクションで検索してみると、閲覧可能なものがいくつか見つかりました。ただ『百選会標準図案集. 第25回』以外は、閲覧のために利用者登録が必要となります。

また、まちなか遊学館では着物着付け体験ができます。施設の入り口には可愛い着物が展示されていました。

まちなが遊学館

まちなか遊学館からちょっと先の足利うさぎやは、アンティーク着物を取り扱っており、銘仙を購入することができます。

うさぎや

ちなみにこの5枚は、うさぎやで購入した銘仙です。おそらく上段左は、伊勢崎銘仙だと思います。

では、図案一覧の前に、銘仙について簡単に触れておくことにします。しかし、技法や工程については長くなるので省略します。


銘仙のこと

美人図(足利本銘仙ポスター原画)鏑木清方筆 ポストカード

銘仙は、規格外の屑繭を利用した実用的な絹織物でした。丈夫であっても、見栄えのしない地味なもので、柄も縞ばかりなことから銘仙縞と言われたほどです。このようなことから、銘仙は年寄り向きの着物とされていました。丈夫だけが取り柄だった銘仙が変化したのは、大正時代からです。
銘仙の産地として一等有名な伊勢崎から華やかな模様銘仙が生まれ、これが世の女性達の間で大流行しました。
今和次郎『考現学入門』の銀座街頭調査では、「着物と羽織の地質」は銘仙を着ている女性が一等多く、錦紗や御召と一括で見ると全体の7割が絹織物だという結果が出ています。銘仙は富裕層にとっては平常着だったでしょうが、絹織物であることに変わりなく、庶民にとっては外出着として重宝していたことが分かる一例です。


足利銘仙図案一覧

銘仙行灯に使われている図案について調べてみましたが、詳細に書かれた記事を見つけることができませんでした。しかし『VIVID銘仙 煌めきのモダンきもの』に、「足利銘仙会」機屋旧蔵に図案原画が所蔵されている旨が書かれており、その原画を元に銘仙行灯が作られたのではないかと考えられます。一覧にしたのはほんの一部ですが、書籍で紹介されている図案原画と同じものもあります。
さらに、図案原画について次のようなことが記されています。

原画は型紙におこされたとき画面が汚れ廃棄されることが多いため、不採用のものでないときれいに残らない。

『VIVID銘仙 煌めきのモダンきもの』より

それでも残された図案を通し、当時の流行を探るには貴重な資料です。

目が眩むような色のぶつかり合い、実に目を惹く見事な華やかさがあり、その中に面白い芸術性が含まれています。人によっては、着ることを躊躇してしまうかもしれません。
銘仙市へ出かけると、幅広い年齢層の方がこのような華やかな銘仙を着て、買い物を楽しんでいる姿を見かけます。他の絹織物以外では、あまり華やかなものを買うことはないのですが、銘仙だとこの思い切った大胆さに惹かれ、つい手を伸ばしてしまいます。

ちなみに、足利の観光エリアはコンパクトではありますが、古い建造物がちらほらあるので、レトロな雰囲気を求めて街歩きを楽しむことができますよ。