★《続・読書余論》豊田穰著『激流の孤舟 提督・米内光政の生涯』講談社 昭和53年刊

 こんかいの《続・読書余論》は、米内光政と三国同盟に焦点を当ててみました。

 米内光政をタイトルにした本は数々ありますが、私の感想では、この豊田穰版が、いちばん《読み甲斐》があります。ただし「三国同盟」の成立経緯に関心がある人、限定かもしれません。

 著者の豊田氏のすごいところは、海軍大臣をつごう5回務めた米内が軍政家として大活躍したのは「日独伊三国同盟」阻止の努力にほかならず、その次が終戦政治なのだと見抜いて、とにかく三国同盟成立経緯に関して当時を理解したい人はこれ1冊読めばいい、というくらいにまで整理をしてくれていることです。

 その作業の準備として豊田氏はまず松岡洋右についての上下2冊の大著をまとめたという(これは今日、古本にプレミアムがついているために未だに私は手が出せません。泣き)。

 この本は、タイトルで大損をしてます。「激流の孤舟」では、まるでネガティヴなイメージしか喚起しないでしょう。
 日本を外交的に破滅させた戦前のドイツとの軍事同盟がいかにして成立しているのか、その時代のドラマとして、これこそはよくできた参考書なのであるというヒントも、このタイトルには1ミリもない。営業的には、とても惜しい気がします。

 あと、どうでもいいのですが小生は豊田穰[とよだじょう]〔本名は みのる〕(1994没)と児島襄[こじまのぼる](2001没)を以前は混同していました。ハッキリ申しましょう。面白い作品を見出せるのは豊田穰のほうです。

 附録として、《旧・読書余論》から、関連の摘録を集めてみました。
 『畑俊六 巣鴨日記』『芝草はふまれても――巣鴨戦犯の記録』『昭和動乱の真相』『平和はいかに失われたか』『経済倶楽部講演 第13輯』『暗黒日記 II』などです。
 字数の関係で小磯の自伝を入れる余地がなくなってしまいました。いずれ別の機会に……。

ここから先は

238,210字

¥ 400

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?