★《続・読書余論》 坂部護郎『戰争秘録 將軍長岡外史』昭和16年刊

 こんかいの《続・読書余論》は、プロペラ髯のキャラクターがユニークながら謎も多い、長岡外史・陸軍中将の手柄話を、遺族が日記を頼りにまとめた略伝です。

 1923年=大正12年の関東大震災の直後に、これより帝都を再建するにさいし、建物は不燃化しなければいけないと主張した人は多かったでしょう。
 それと比べて、退役中将の長岡は、黎明期の飛行機振興団体の長として、これからの都市建築は「防弾」にする必要もある、と注文をつけた点で、特筆されます。

 日露戦争中、東京の参謀本部の親分は山縣有朋参謀総長でしたが、長岡はそのすぐ下の参謀次長として、いわば山縣から「監視下」に置かれていました。ぎゃくにその立場から、山縣を観察した記録が、貴重です。樺太占領作戦に山縣だけが最後まで反対であった事情は、本書によって確からしく思えます。

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