★《続・読書余論》『日本は世界第5位の農業大国』と『永田鉄山 軍事戦略論集』・ほか

こんかいの《続・読書余論》は、二本立てです。
 『日本は世界第5位の農業大国』(2010初版)は、腐敗した農水省労組の利権のために当時の民主党政権が日本国の農産ポテンシャルを破壊し続け、一般消費世帯のエンゲル係数を先進国としてありえないほど高くして貧困層を苦しめている構図を抉り出して、余すところがありません。むかし読んだとき、よくぞこれを出版してくれたと絶賛したくなった名著です。今でもインパクトがあるでしょう。

日本経済はこれからエネルギー高騰の苦境に突入するでしょう。石油や輸入肥料を使わずに食料自給率を高める方法を、農水省はいまだに考えてくれていません。

永田鉄山は、戦前の日本軍部の「統制派」の旗手です。満洲に良い鉱山がないので、北支を満洲のようにきりとって、鉄鉱生産力を欧米並にしないと、WWI で国際標準となった砲弾の準備量が、日本はいつまでも実現できない――というのが彼の問題意識でした。

それと、中国大陸で戦争する場合には、おびただしい馬もしくはトラックが必要でした。兵員の動員限界は、人口がいくら多くても、馬もしくはトラックが少なければ、それによって上限が決まってしまうのです。WWI 中のロシア軍が、兵隊だけはやたらいたのに、兵に持たせる武器と弾丸が足りずに、低いパフォーマンスで敗退しているのも、永田にとっては、他山の石でした。

今の露軍は、昔の日本軍のようになっているのだと、よく分かります。

例によって《旧・読書余論》から関連摘録をあつめて附録しました。コンテンツには、『米国の土木工事と生産性』『日本港湾修築史』……などが、含まれています。

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