★《続・読書余論》田原嗣郎ed.『日本の名著 12 山鹿素行』昭和46年刊・ほか

 こんかいの《続・読書余論》は、徳川幕府が押し付けようとした朱子学への根本の疑惑を公刊して赤穂藩へ国内流刑されてしまった、江戸時代初期の山鹿素行の主張を、土田健次郎訳『聖教要録・配所残筆』(2001年 講談社学術文庫)と併せて、おさらいしようと思います。

 素行は、日本の武士の存在価値を幕藩体制の初期に理由付けしましたので、武士道を創り直したと評しても過言ではないでしょう。

 素行の次の世代の学者である荻生徂徠は、古代漢文の読み方をあらためて調べなおしてみる、地道な研究眼をもっていたのに、日本人の徳は昔のシナ人に絶対に及ばないというシナ渡りの序列観に終生、囚われたままでした。それに対して素行は四十代にして、日本人のシナ崇拝はおかしいと察したのです。

 じつは当時の日本の儒学者も朱子学の根本説をそもそも理解できずに褒めたり腐したりしているところがあると言われます。しかしその勘違いな論議を通じて、たとえば後代の本居宣長のような人が、儒学の馬鹿らしさを確信できるようになったのです。

 現代中共の世界支配理論も、共産主義ではなく、じつは朱子学です。欧米人はそこが分からなくてもしょうがないが、日本人ならば見破れなくてはいけないでしょう。

 さらに参考とするために、武士道や兵法に関する他の摘録をいろいろと、《旧・読書余論》からあつめて附録しましょう。
 そのコンテンツには、『剣と禅』『孫【月賓】兵法 銀雀山漢墓出土竹簡』『日本兵法全集5・山鹿流』『諸芸指南』『宮本武蔵言行録』『中國武術史大観』『射経』『平家物語評判秘伝抄』『武道極意 第一巻』『警備戦術の要諦』『新釈漢文大系 第37巻 近思録』『中国の家族と社会 I・II』『継統法から見た支那の国家観念』『折口信夫全集 第七巻』『中国古代書籍史』『菜根譚』『本居宣長全集 第九巻』『近世神道論 前期国学』『武士道全書 第八巻』……などなど、です。

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