★《続・読書余論》アルセニエフ著『ウスリー探検記』昭和16年訳刊

 こんかいの《続・読書余論》は、黒澤映画の『デルスウザーラ』の元ねたになっている、日露戦争前後のロシア人による沿海州探検記です。巣鴨の武藤章が獄中でこれを読んだと書いているので内容を確認しようと思って古本で取り寄せてみたのですが、ブッ飛んだ。あきらかに戦前のディズニー映画の『バンビ』は、ザルテンの小説ではなく、こっちのロシア人のノンフィクションを参考にしているとしか思えなかったからです。ちょうど子育て中でDVDを数十回は見てたので、もう間違いないと確信して、そのことを雑誌の『正論』に書いたものでした。
 余談ですが映画の『デルスウザーラ』は非常に不自然な作品です。空撮もしくは高所から地平線を広々と見せるカットが無いんですよ。なまじ現地ロケをしたため、当時は中ソが対立中でしたから、中共に最新の地誌情報を与えられないというソ連上層部の判断が働いたのかと思いました。

 オマケとして《旧・読書余論》から、沿海州関係の摘録を二十数点、引っ張り出してきました。
 その中には『軍務局長 武藤章回想録』、金久保通雄『国境』、『榎本武揚 西比利亞日記』、『シベリア東部生物記――ウスリー地方を中心として』、『岩畔豪雄氏談話速記録』、『太田耕造全集 第一巻』、『黒田清隆――埋れたる明治の礎石』、数点の防研史料が、含まれています。おたのしみください。

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