★《続・読書余論》アルヴィン・クックス著『ノモンハン 草原の日ソ戦 一九三九(下)』1989 と、日本の科学教育

 こんかいの《続・読書余論》は、「上巻」のない「下巻」のみです。なぜそうなったか?

 この古本は函館市に引っ越した後に町の古書店でみつけたと思うのですが、その時点で「下巻」だけだったのです。
 そしてそれをこれまでずっと、積んだままにしておいたのは、一見して内容が濃密で、到底、すばやく目を通すことは不可能と察したからでしょう。

 しかし2022-2-24のウクライナ事変を機に、あらためて内容を確認しておきたいという気力が湧いてきました。

 じっさい、下巻だけでもすごい内容でした。これはソ連軍研究と、日本軍の組織文化研究のためには、必読でしょうね。

 附録として、科学教育に関連した古本の摘録を、《旧・読書余論》からあつめておきます。ノモンハン事件の反省は当時から今日までいろいろとあるのですが、当時の日本陸軍の最上層が、「ノモンハン・ショック」の危機意識の直接のアウトプットとして、文部省をプッシュして科学教育を振興させたいと思ったことは、出版情況から疑えないと私は思っています。それは珍しく「筋の良い」反省でした。科学的に考える力のある将校が増えれば増えるほど、1939時点の「関東軍幕僚」タイプは、エリート街道から排斥されたでしょうし、兵器にも戦術にも、マシな改善があっただろうからです。

 コンテンツには、『ケインズ革命』『教学叢書 第十一輯』『科学の反省』『科学の生んだ驚く可き独逸の富強』『ロボットの時代[決定版]』『国産ロケットH-II 宇宙への挑戦』『オリンピツク競技の組織的研究(トラツク篇)』『列国科学技術の戦力化』『科学の勝利』『あの日、あの時 科学技術庁40年のあゆみ』『江田島生活』『新しい刑事警察』……などが、含まれています。

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