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歴史&文学散歩

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各地の史跡をめぐった記録です。
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#展覧会

出光美術館『江戸絵画の華 京都画壇と江戸琳派』を見る

出光美術館  出光美術館の特別展『江戸絵画の華 京都画壇と江戸琳派』を見てきました。  この美術館は、出光興産の創業者・出光佐三のコレクションがもとになっています。収蔵品のメインが日本と東洋の古美術なので、これまでは全く縁がなく、よくそばを通っているのに存在さえ知りませんでした。  今回の展覧会では、江戸時代の絵画を収集なさっているプライス夫妻(カリフォルニア在住)から出光が買い受けた江戸期の絵画190点のうち、80点が前期と後期にわけて展示されています。  私が鑑賞したの

パリと下落合、広告 『佐伯祐三 自画像としての風景』

 東京駅にある東京ステーション・ギャラリーで開催中の「佐伯祐三 自画像としての風景」を見てきました。  noteでは小説や映画の感想を書いていますし、音楽も、言語化はできないのですが、好きな曲やいい曲はわかります。  でも、絵画は、優劣どころか、自分がどんな絵を好きなのかもよくわからない…。学生時代、女子美の友人たちの個展やグループ展に何度か行った時も、感想が思い浮かばずに苦労したものです。一応好きなジャンルもあるのですが、その一つ、フランドル地方の画家たちに興味を持ったき

上野の森で悲劇の画家の最高傑作を見る 「国宝 東京国立博物館のすべて」 後篇

 トーハクの国宝展で一番見たかったのが、渡辺崋山の「鷹見泉石像」です。田原藩の家老、蛮社の獄で自死に追いやられる政治家としての崋山のことは前から知っていて、尊敬もしていたのですが、画家としての崋山には興味がありませんでした。浮世絵以外の日本の絵に興味がなく、江戸時代の文化についてもよく知らなかったので、「家老なのに、絵まで描いていたなんてすごい」程度の認識だったのです。  それが、森鷗外の史伝小説『渋江抽斎』と『伊澤蘭軒』を読んで、江戸時代後期に活躍した崋山のような文人に興

上野の森で国宝を見る 「国宝 東京国立博物館のすべて」 前編

 上野にある東京国立博物館(トーハク)で開催されている特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」に行ってきました。  トーハクは、上野公園の西郷像のある場所を手前とすると、一番奥にある博物館です。今回の特別展では、博物館の創立150年を記念して、国宝89点を始めとする所蔵品中の逸品を展示しています。 私とトーハク  私にとってトーハクは、特別展で何度か訪れただけの馴染みの薄い博物館でしたが、森鷗外が総長を務めていたと知って、改めて訪問したくなりました。  それで、トーハクに