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歴史&文学散歩

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各地の史跡をめぐった記録です。
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2022年11月の記事一覧

漱石山房記念館訪問記 特別展『夏目漱石と芥川龍之介』

 新宿区区立漱石山房記念館に行ってきました。夏目漱石の最後の家である、漱石山房の跡地に建てられた記念館です。  高校生の時に芥川龍之介の随筆『漱石山房の秋』と『漱石山房の冬』を読んで、漱石山房のことを知りました。芥川が亡き師の家を訪ねる冬の随筆が特に好きだったので、上京後、どこにあるのか探してみたところ、当時は漱石公園として名をとどめるだけでした。  以前、『吾輩は猫である』の文学散歩の時に書いたように、明治村には猫の家(漱石と森鷗外の旧宅)、石川啄木の下宿、幸田露伴邸と

上野の森で悲劇の画家の最高傑作を見る 「国宝 東京国立博物館のすべて」 後篇

 トーハクの国宝展で一番見たかったのが、渡辺崋山の「鷹見泉石像」です。田原藩の家老、蛮社の獄で自死に追いやられる政治家としての崋山のことは前から知っていて、尊敬もしていたのですが、画家としての崋山には興味がありませんでした。浮世絵以外の日本の絵に興味がなく、江戸時代の文化についてもよく知らなかったので、「家老なのに、絵まで描いていたなんてすごい」程度の認識だったのです。  それが、森鷗外の史伝小説『渋江抽斎』と『伊澤蘭軒』を読んで、江戸時代後期に活躍した崋山のような文人に興

太田道灌の江戸城 【歴史散歩】

 皇居乾通りの一般公開に行ってきました。毎年、桜の時期と紅葉の時期にだけ、一般に公開されるエリアです。植物にはあまり興味がないのですが、乾通りからは、道灌濠を見ることができるんですね。  同時代の文章や絵図が残っていないので、はっきりしたことはわからないものの、太田道灌の頃の江戸城は、今の本丸部分にあったとされます。この堀は、道灌の名前が残るだけあって、当時の堀だったんでしょうね。  幼い頃から敗者や滅び去った者、悲劇の人に肩入れする性格だったので、主君に暗殺された太田道灌