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読書感想文

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海外文学や現代文学の感想文。
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#トニモリスン

2024年3月 読書記録 川端、太宰、モリスン&マッカーシー

3月は海外文学を2冊、日本の作家では川端康成・牧野信一・太宰治の小説を読みました。 トニ・モリスン『ジャズ』(大社淑子訳・早川epi文庫)  モリスンの小説は、これまでに初期に書かれた『ソロモンの歌』と『ビラヴド』を読んだのですが、この二作に比べて『ジャズ』はとても読みやすかったです。タイトル通りに、リズム感のある音楽的・詩的な文章が続くので、休日に一気読みできました。読者を選ぶ小説だとは思いますが。愛についの小説なんですね。欠落を抱えた者や自分を見失った者が他者とのつな

2023年10月読書記録 海外文学篇 二十世紀の二巨匠など

 どこも人手不足なのか、夫の転勤先の部屋も決めてから一ヶ月近く入居できませんでした(室内清掃等の人手がないらしい)。ということで、いまだにバタバタしています。でも、落ち着くまで私の仕事はお休み、それに転勤先の家にはパソコンやテレビがないので、ゆっくり読書ができました(向こうとこっちを行ったり来たりの生活です)。今回は、先月読んだ本のうち、海外の小説について書いてみます。 トニ・モリスン『ビラヴド』(吉田廸子訳・早川epi文庫)  南北戦争前後が舞台。奴隷だったアフリカ系の

2023年7月 読書記録 血の呪縛、毒親

プルースト『失われた時を求めて7 ソドムとゴモラ2』(井上究一郎訳・グーテンベルク21)  村上春樹さんの小説『1Q84』の主人公を真似て、寝る前に20ページずつ読んでいる作品です。去年9月の読書記録に第1巻の感想を書いたのに、あと3巻も残っている…。  ソドムとゴモラは聖書に出てくる都市の名前で、住民が同性愛行為を行ったために、神の怒りにふれて滅ぼされたとされます。  同性愛者だったプルーストが、同性愛を否定するような表現を使わなければならないことに、時代の制約を感じます