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読書感想文

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海外文学や現代文学の感想文。
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#巨匠とマルガリータ

2023年9月 読書記録 村上さんのエッセイ集、デルフト眺望など

 9月は、宮本百合子の超鈍器本『道標』に取り組んでいたので、他の作品をあまり読めませんでした。10月初旬にようやく読み終えたのですが、『カラマーゾフの兄弟』や『戦争と平和』に並ぶ長さだった気がします。青空文庫って分量がわからないので、気楽に読み始めてしまうんですよね…。 村上春樹『ポートレイト・イン・ジャズ』(新潮文庫)  ジャズの基本を知りたくて、読んだ作品。ですが、村上さんがジャズを通して人生を語った作品としても読めますね。55人のジャズ・ミュージシャンとその音楽につ

2023年5月読書記録 海外文学・歴史篇 ロシアのアネクドート、フランスの国民作家

 今月は青空文庫の作品を多めに読んだので、読書記録を二回に分けます。 網野善彦『海と列島の中世』(講談社学術文庫)  歴史学者である網野善彦先生の講演をまとめた本。  ネットで網野先生の名前を検索すると、まず出てくるのが『もののけ姫』との関係です。『もののけ姫』の世界観は、網野先生の歴史観に基づくものなんですね(宮崎駿監督と対談もなさっています)。  先生の歴史観を一言でまとめると、「日本には、農民以外の庶民も大勢いたのだ」ということになるかと思います。中世や近世の庶民と