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読書感想文

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海外文学や現代文学の感想文。
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#推薦図書

名刺代わりの谷崎潤一郎10選

 先日、谷崎潤一郎の作品がテーマの読書会をしました。もともと敬愛する作家ですが、皆さんのお話を聞いて、ますます谷崎愛が深まった気がします。  ということで、青空文庫で読める谷崎作品のうち、特にお勧めしたい10作を年代順に選んでみることにしました。   『刺青』   実質的な第一作です。この小説を永井荷風に認められた時の話が随筆『青春物語』にありますが、そりゃ、荷風も認めますよね。ここまで完成度の高い第一作って、そうはないのでは? 足フェチをはじめとする、谷崎文学を語る上で

【読書感想文】 川端康成『山の音』

 川端康成の小説を初めて読んだのは小五か小六の時です。当時は、中学受験界にSAPIX(大手の塾です)が参入する前だったので、受験勉強用のメソッドが確立されていなかったんですね。国語は漢字や熟語・慣用句などを暗記して、あとはひたすら名作と言われるものを読むだけでした(私は暗記が嫌いだったので、本を読むだけでしたが)。  川端は『伊豆の踊り子』と『雪国』を読んだはずです。『古都』も読んだかも。小学生には早すぎる内容ですよね。自分や自分の親に似た人たちの話を読むだけでは世界が広がら

【祝・映画化】 池波正太郎 仕掛け人・藤枝梅安 【ハードボイルド時代劇】

 今年2023年は、時代小説界の大家池波正太郎さんの生誕百年の年です。それに合わせて、池波さんの小説を原作とする映画『仕掛け人・藤枝梅安』(主演・豊川悦司さん)が公開されているので、今回は梅安の話を中心に、池波さんの作品について少し書いてみます。  池波正太郎さんは、戦後(昭和期)を代表する歴史&時代小説作家です。歴史作家としては、直木賞を受賞した『錯乱』や『真田騒動 恩田木工』『真田太平記』など戦国〜江戸時代にかけての信州・真田家を題材にした作品が特に有名です。中でも『真

川端康成『みずうみ』 【読書感想文】

 私が中学受験をした時には、日本人のノーベル文学賞受賞者といえば川端康成しかいなかったので、『伊豆の踊り子』が必読図書でした。  確かに小学生でも読める作品でしたが、あまり印象に残りませんでした。  関東在住の友人たちは、この本を読んで天城峠に行ったりしたようですが、関西人の私にとっては、伊豆なんて、全くなじみのない場所ですし。  その後、中学生の時に『雪国』と『古都』を読みましたが、私には縁のない作家だという気持ちが強くなっただけでした。日本的な美しく繊細な世界なんて興味