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読書感想文

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海外文学や現代文学の感想文。
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2024年1月の記事一覧

リディア・デイヴィス『話の終わり』 メタ、執着、記憶の曖昧さ

 Xで見かけて、購入した本です。1994年の刊行なので、私が読む本の中ではかなり新しめ。試し読みした時には「若い彼氏との別れを回想する話なのかな」と思いましたし、ざっくり言えばそれで正しいのですが、構成がなかなか複雑なんですね。  私という一人称で過去を語っていたかと思うと、いつの間にか現在の私が登場して、「あれをどんな風に表現すればいいのだろう」と小説の書き方について思いを巡らせたり、「あの時はどうだったっけ」とあやふやになった過去を思い出そうとしたりする。今現在の結婚相手

マーガレット・アトウッド『侍女の物語』

 若い頃、今のアメリカをよく知らなかった。特に、アメリカの翳の部分は。  アメリカの問題といえば、ベトナム戦争とその後遺症ぐらいしか思い浮かばなかった。この問題は高校の授業でオリバー・ストーン監督の『プラトーン』を観たりしたので、何となく理解していた。  アメリカの今を知らない私は、マーガレット・アトウッドの小説『侍女の物語』を現実とは切り離して読んだ。『1984』と並ぶディストピア小説の傑作だと思ったが、オーウェルの話とは違い、モデルとなる現実はない小説なのだと考えていた

2023年12月 読書記録

 あけましておめでとうございます。  元旦の地震、大丈夫でしたか。もちろん、被災地の方々はnoteどころではありませんが、石川や富山以外でも余震の揺れが続き、怖い思いをしている方々がいらっしゃるようです。どうか無理をなさらずにお過ごし下さい。  さて、先月読んだ本、プルースト『失われた時を求めて』は先に記事を投稿しました。また、リディア・デイヴィス『話の終わり』は後で感想を書く予定です。 志賀直哉『暗夜行路』(講談社文庫)  作者唯一の長編。メインテーマはフィクションで