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読書感想文

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海外文学や現代文学の感想文。
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2023年12月の記事一覧

プルースト『失われた時を求めて』を読む 後篇

 これは、鹿島茂さんの『「失われた時を求めて」の完読を求めて 「スワンの家の方へ」精読』という本の冒頭部です。タイトルからもわかるように、プルーストの大長編『失われた時を求めて』を完読するための第一歩として、第1篇の「スワン家の方へ」を鹿島さんが細かく解説して下さっています。  『戦争と平和』や『アンナ・カレーニナ』を再読し、次になに読もう? と探していた時にこの本に出会いました。『失われた時を求めて』が挫折しやすい作品なのは知っていたので、解説書から読むのもありかなと思っ

時を超える物語 タイムトラベル小説を読む楽しみ

 ここ何ヶ月かnoteで小説を読ませていただいているのですが、作風の幅広さに驚嘆してしまうのが、吉穂みらいさんの書かれる小説です。シリアスな物語から幸せな気分になれる楽しい物語まで、主人公やジャンルも多岐にわたります。  そんな吉穂さんが、共作という新たなチャレンジをなさいました。共作といえば、レノン=マッカートニーにしても、エラリー・クイーンにしても、作品によって主たる創作者がいる印象なのですが、吉穂さんと共作者のひらさわたゆさんは、イーブンな関係で創作をなさっている(よ

プルースト『失われた時を求めて』を読む 前編

 プルーストの『失われた時を求めて』を読み終えました。  去年の9月の読書記録に『失われた時を求めて』(光文社版)の1巻を読み終えたと書いてあるので、1年と4ヶ月ほどかかったことになります。 大長編を読む楽しみ  いやー、長かった。『失われた時を求めて』光文社版は途中までしか出ていないのですが(なので、途中からはグーテンベルク21版を読みました)、岩波文庫版は14巻、集英社版は13巻。大長編ですよね。  フォローしている楠本栞さんが『なが〜い小説を読む醍醐味』という記事を

2023年11月読書記録 青空文庫で読む海外文学など

 脚本家の山田太一さんが亡くなりました。  山田さんのドラマで、リアルタイムで観たのは『ふぞろいの林檎たち』の3と4だけなのですが、林檎の1・2や『男たちの旅路』を再放送等で観て、とても感動しました。ふぞろい〜のテーマは今に通じるものがありますし、男たちの方は、鶴田浩二さんが何ともかっこ良く……。  また、大河ドラマ『獅子の時代』の脚本を高校時代に読んだことが、大学で日本史を学ぶ契機の一つになりました。  私にとっては、忘れがたい芸術家の一人です。  再放送やストリーミングで