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読書感想文

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海外文学や現代文学の感想文。
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2023年9月の記事一覧

正岡子規と漢詩 糸瓜忌に寄せて

 今日は正岡子規の命日です。獺祭忌または糸瓜忌と呼ばれ、秋の季語にもなっています。  獺祭といえば、日本酒を思い出しますが…。  獺が自分のとった魚を並べる様が、人が物を供えて先祖を祭るのに似ていることから、獺祭という言葉ができたそうです。  また、そこから転じて、詩文を作る時に多くの参考書をまわりに広げておくことも、獺祭と呼ばれるようになったそうです。  子規は「獺祭書屋主人」という号を使っていたので、命日が獺祭忌と呼ばれているのですね。  糸瓜忌の方は、子規が最後に詠

カフカ『変身』など

 近いうちに、村上春樹さんの長編小説『海辺のカフカ』の感想を投稿する予定なので、その前振りとして、カフカの小説について少し書いてみます。  上の引用にあるように、『海辺のカフカ』の主人公と大島さんは、カフカの短編の中では『流刑地にて』が一番好きなようです。  これはちょっと、変化球の答えかもしれません。『流刑地』も好きですが、普通はカフカといえば『変身』…十代の頃、私が一番好きだったのも『変身』でした。  十代の頃は、谷崎潤一郎の『細雪』、ジェイン・オースティンの『高慢と

2023年8月読書記録 17世紀のメタフィクション、子規の弟子

 今月は村上春樹さんの小説をまとめ読みしました。『ダンス・ダンス・ダンス』〜『アフターダーク』までの長編と、初期短編集『カンガルー日和』『回転木馬のデッド・ヒート』。これで長編は全部、短編も八割ぐらい読んだかな。村上さんの作品の感想は、また別に書く予定です。  それ以外では、三つの作品を読みました。 セルバンテス『ドン・キホーテ 前篇』(牛島信明訳 岩波文庫)  『源氏物語』を読むたび、千年以上前の作品なのに、これほど共感できるなんてと意外の念に打たれます。  海外の作品