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読書感想文

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海外文学や現代文学の感想文。
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2023年4月の記事一覧

【祝・映画化】 池波正太郎 仕掛け人・藤枝梅安 【ハードボイルド時代劇】

 今年2023年は、時代小説界の大家池波正太郎さんの生誕百年の年です。それに合わせて、池波さんの小説を原作とする映画『仕掛け人・藤枝梅安』(主演・豊川悦司さん)が公開されているので、今回は梅安の話を中心に、池波さんの作品について少し書いてみます。  池波正太郎さんは、戦後(昭和期)を代表する歴史&時代小説作家です。歴史作家としては、直木賞を受賞した『錯乱』や『真田騒動 恩田木工』『真田太平記』など戦国〜江戸時代にかけての信州・真田家を題材にした作品が特に有名です。中でも『真

2023年3月 読書記録 殉死、最後の武士、耽美派

山本博文『殉死の構造』(角川新書)  殉死について、歴史学者が読み解く新書。森鷗外の『阿部一族』を読んだ時に気になっていた作品です。  主君が亡くなった時に、家来が後を追って死ぬ殉死。武士道と結び付けられがちですが、実際に行われていたのは短い期間なんですよね。最初の例は1607年に松平忠吉(徳川家康の四男)が死んだ時、1663年には口頭で殉死禁止令が出され、68年には家来が殉死したという理由で、奥平氏が石高を減らされています。『阿部一族』の元ネタになった『阿部茶事談』は殉死