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読書感想文

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海外文学や現代文学の感想文。
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2022年11月の記事一覧

意識の流れに親しむ ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』 【読書感想文】

 ヴァージニア・ウルフは20世紀前半に活躍した英国の作家です。モダニズム文学の代表的な作家と言われています。  この説明の後に並んでいる作家名を見ると、大半が詩人です。小説家はウルフ、ジェイムズ・ジョイス、プルースト、ジッド。ジッドは『狭き門』のような青春小説しか読んだことがないのですが、残りの三人に共通するのは、意識の流れ手法をとっていることです。 *  小説には、三人称の作品と一人称の作品があります。  三人称小説の例。  夏目漱石の『門』の冒頭部分です。主人公・

2022年10月 読書記録 娘が見た太宰治、青空文庫など

 noteで紹介するために、本腰入れて青空文庫の作品を読み始めました。10月に読んだのは7作品。そのうちの2作品をここで取り上げます(残りは後日、個別に感想を書く予定です)。 島崎藤村『桜の実の熟する時』   島崎藤村は、村上春樹さんが選ぶ国民作家リストに名前が挙がっていたので、代表作以外も読んでみたのですが……この小説、『破戒』で有名になる前の習作? と思いながら読んだのに、実は中期の作品。その割に、まとまりがなく冗長でした。『夜明け前』も二度挫折しているので、藤村の文