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青空文庫

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青空文庫で読める作品を紹介しています。
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#宮本百合子

本が私を育ててくれた 【読書エッセイ】

 母は他人の意見に流されやすい人だったので、子どもの頃、誰かが言っていたという理由で、自分には合わないことをあれこれやらされたものです。いつかひとこと言いたいと思いつつ、言ったことがないのは、「流されてくれて良かった!」と思うことがいくつかあるからです。  その一つが、祖母の家の近所にあった本屋さんのアドバイス。その本屋さんのアドバイスに従って、季節ごとに本を買ってくれたのです。今でもたまに話題になるようなロングセラー本が多かったのですが、どれも夢中で読みました。  母は本を

2023年10月読書記録 青空文庫篇 プロ文と転向文学 

 去年の10月から青空文庫を読んでいます。長年海外の小説ばかり読んでいて、日本の近代文学といえば谷崎と芥川、あとは夏目漱石ぐらいしか読んでこなかったのですが、読んでみると面白い。自分の国の話なので、時代背景や地理もわかりやすいですし。海外文学と比べると、コンパクトな作品が多いのもいいですね。  年代順に読んで、今は昭和初期のプロレタリア文学と転向文学を読み終えたところです。 宮本百合子『道標』  『伸子』『二つの庭』から続く自伝小説の三作目です。伸子がパートナーである素子

2023年7月 読書記録 血の呪縛、毒親

プルースト『失われた時を求めて7 ソドムとゴモラ2』(井上究一郎訳・グーテンベルク21)  村上春樹さんの小説『1Q84』の主人公を真似て、寝る前に20ページずつ読んでいる作品です。去年9月の読書記録に第1巻の感想を書いたのに、あと3巻も残っている…。  ソドムとゴモラは聖書に出てくる都市の名前で、住民が同性愛行為を行ったために、神の怒りにふれて滅ぼされたとされます。  同性愛者だったプルーストが、同性愛を否定するような表現を使わなければならないことに、時代の制約を感じます