マガジンのカバー画像

青空文庫

33
青空文庫で読める作品を紹介しています。
運営しているクリエイター

2023年5月の記事一覧

三鷹 太宰治ゆかりの地をめぐる

 三鷹駅で少し時間があったので、太宰治ゆかりの場所をいくつか回ってみました。 三鷹跨線橋  JRの線路をまたぐ跨線橋です。太宰治のお気に入りの場所だったとのことで、ここで写した太宰の写真も何枚か残っているようです。橋の上からは富士山がきれいに見えました。太宰も、同じ富士を見たのですね。当時は、眼下に武蔵野の平野が広がっていたのでしょうか。  残念ながら、近々取り壊されてしまうので、最後に見ることができてよかったです。  網がかかった以外は、太宰の時代と変わらぬたたずまい

異郷への憧れ 国木田独歩『武蔵野』と大岡昇平『武蔵野夫人』 【青空文庫を読む】

 中学・高校時代は主に海外文学を読んでいたのですが、日本の作家では芥川龍之介と谷崎潤一郎、それに大岡昇平さんが好きでした。  大岡昇平さんのことは、スタンダールの『パルムの僧院』の翻訳者として知りました。当時は海外文学の訳が古く、「こんな言葉、日常では絶対使わないよなぁ」と感じたり、日本語の単語の意味がわからずに、適当に読み飛ばしたりすることがよくありました。  そんな中で、大岡さんの翻訳だけは古い言葉づかいがかえって魅力的に思える素敵な文章だったんですね。実は有名な作家だと

2023年4月 読書記録 白樺派、芥川の親友たち

プルースト『失われた時を求めて5 ゲルマントのほう2』(井上究一郎訳・グーテンベルク21)  光文社版の翻訳が途中でとまっているので、グーテンベルク21版で読むことにしました。多分、学生時代に読んだ訳。明治生まれの人の訳は避けたいと思っているのだけど(できれば戦後生まれの人がいいけど、そうも言っていられない)、この訳は悪くない。貴族の(フランスでは廃止されているが、旧王族を含めて爵位で呼ばれている)サロンでの会話が延々と描写されます。軽薄で偽善に満ちたサロンの様子はよくわか