マガジンのカバー画像

青空文庫

33
青空文庫で読める作品を紹介しています。
運営しているクリエイター

2023年3月の記事一覧

「まことの詩人」 樋口一葉『たけくらべ』など 【青空文庫を読む】

 不忍池の桜が満開です(カバー写真)。池の蓮も綺麗に刈られて、春の息吹を待っているようです。  さて、前回紹介した二葉亭四迷は、三遊亭圓朝の落語の速記本を参考にして、言文一致の文体=口語体で『浮雲』を書きました。  青空文庫にある圓朝の落語は、読みやすさとしては、同じく青空文庫にある吉川英治さんや山本周五郎さんの小説と同程度だと思います。今の小説と同じとはいきませんが、読みづらくはない。吉川さんも山本さんも、新潮文庫の現役作家ですからね。  なので、圓朝を参考にした二葉亭四

自己嫌悪とリストラ 二葉亭四迷『浮雲』 【青空文庫を読む】

 学校で習った戦前の文学史、最初に出てくるのは、戯作者・仮名垣魯文の『西洋道中膝栗毛』、坪内逍遥『当世書生気質』、そして二葉亭四迷の『浮雲』という感じでしょうか。  青空文庫には、仮名垣魯文や坪内逍遥の小説はないので、今回は、二葉亭四迷の『浮雲』を取り上げます。  二葉亭四迷といえば、「自己嫌悪に陥って、自分をくたばって仕舞えと罵ったことから、ペンネームを二葉亭四迷にした」というエピソードが有名です。自己嫌悪の叫びをペンネームにするなんて…。『余が半生の懺悔』という随筆を読