裏ひよこ日記。わたし結構頑張ったんじゃない?
掃除してる時に自分の部屋のカオス具合に自分でドン引きした。
…宝の持ち腐れ。てこういう事言うんじゃなかろうか。と
その日はアナイスとアレックスの内々のサプライズ婚約祝いを我が家でするために、他人が来るからいつも以上に丁寧にお掃除をしていたのだった。
掃除機をかけながらいろいろ考えてみる。
仕事は楽しいけどいつまでもこんな働き方をしていたらいつかわたしが詰むかもしれない。とか、スイスに交換留学していろいろ教わったあれこれがちっともわたしの実生活に活かされている気がしないとか、なんかそういうのが頭をよぎる。これは一回一人で書き出して整理する必要があるなとか。わたしは一旦部屋に戻って
ポストイットにメモしておいた。
*週末に書き出しワークすること
それからまた掃除を再開した。
昼頃にフレッドが約束した通りに帰ってきた。
わたしは朝の約束は多分無理だろうと思っていたからちょっと驚いた。
フレッドはまだ手を付けていないゲストルームのベッドメイキングとか買い物とか花屋に行くとかパティスリーに予約したケーキを受け取りに行くとかそういうのを引き受けてくれた。
で、帰ってきたばっかりなのに熱心に超本気だして窓拭きをしている。
なんかもうえらくピカピカになった窓をみて
手垢つけたりしたらぶん殴られるんじゃなかろうかという美術館レベルで磨き上げられた窓を見上げた。
なんかものすごいキレイになった
…ああ。
さながら煩悩を吹き飛ばす勢いの熱心さだったとなんの気なしにいうとフレッドは
ハハハ…と何故か空笑いしていた。
とりあえず家はどうにかなったので買い物に出る。必要なものを買い揃え花屋でコーディネートに結構時間を費やしてしまう。
部屋や玄関に飾る花やプレゼントとしてわたすブーケとかフローリストさんとあーだこーだと話していたら1時間は過ぎようかと言う具合になってしまい、てフローリストさんがアレンジしてくれ始めたくらいに
オレいまからケーキ受取に言ってくるからここで待ってて。
あ、うん。ありがとう。わかった待ってる。
と答えて花屋さんでウロウロしていろんなお花をみていた。
うーん、お花をじっくりみるのも久しぶりかもしれない。
座って待っててもいいですよー。と椅子を出してくれたフローリストのお言葉に甘えて椅子に座ってしばらくぼんやりする。
いろんなお花の香りが混じってなんか落ち着くわ…インテリアと花がベストマッチしてるなぁーとか。花の香りを嗅いでたら酔ったみたいに意識が彼方に飛んでいく
…ここにきた最初のころってお花が欲しくても言葉が通じなくってすごい苦労したんだよなー。たった一輪の花さえ満足に買う事が出来なくて、外に出された見切り品になりそうな小さいブーケを手にとってこれくださいしか言えなかったんだよね。で、それを買うにも今度は値段が聞き取れなくて店員さんイライラさせちゃったりして半泣きで家に帰りついたんだよね。
とかを思い出した。買い物しようにも何書いてるかわかんない、どこかに出かけたくても地理がわかんないし乗り物の乗り方もよくわからない。ここの景色は好きで空がキレイで高かったけど心は不安で仕方ないとかそんな感じだったな。
いまはこうやってお花も買いにいけるし、こういうのが欲しいとかってのも言えるし、買い物するのにも困惑しないし、乗り物にだってちゃんと乗れる。髪切りに行くときも美容師さんにあれこれ細かい注文つけられたりできるようになった。マルシェでちょっと立ち話して少しオマケしてくれたりとか。お気に入りのお店で待ってたよ!最近どう?て声かけてもらえたり
焼き立てだから早く買いなとパン屋さんから呼び止められたり、お肉やさんで今日はこれが買いだよ!これすきでしょ?て言ってくれたり
ニュースで流れる専門用語みたいな難しい言葉はわからないときもあるけどだいたいの意味はわかる。
…結構頑張ったほうじゃないの?
と窓越に映る自分に問いかけてみる。
窓越に映るわたしは髪が伸びてなんだかちょっと大人びてみえる。こっちに来たばかりでなにをするにもおどおどした年齢よりもおさなく見えてたわたしはこんなふうになったのか。
ケーキの箱を抱えて少し早足でスタスタ歩いてくるフレッドが向かいの道路越しに見える。
反対側を歩いてる女の子2人連れがフレッドをみて2人でつつきあってる。
それに気づいてるのか気づいてないのかわからないけどそのまま真っすぐ前見て歩くフレッドがなんか頼もしく見えた。
わたしこの人でよかったー的ななにか。
やれるかもしれない。て唐突な予感がした。
今ならもう少し理解ふかめられるかもしれない。あのときは誰かを見返したくて認めてほしくて躍起になってた。今なら別の角度からきちんと勉強できるかもしれない。
かえったらスイスのあの学校に問い合わせてみよう。
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