見出し画像

裏ひよこ日記。新しいおうち探しは即断即決


出かけるけど一緒に行くか?フレッドが
課題に取り組み中のわたしに話しかけてきた。

ずーっとそれやってたら煮詰まるぞ?

うーん……
目がチラチラする。気分転換に外に出るのもいいかもしれない

ちょっと待って。着替えてくる。

わかった。

簡単なメイク、サマーニットとスカートという格好でフレッドと外にでた。

おなかが痛くないというのは素晴らしい。
昨日は帰る時はただもうひたすらに早く帰りたい一心でふらふらだった。歩きだし。

今日はレンタカーでお出かけなので楽。
ただし、プラハは駐車スペースがなかなかないので専用アプリをいれて前もって見つけておかないとどこでも車をそのへんに路駐というわけにはいかない。

どんな感じなの?

まだ知らないんだ。ヨハン先生が知り合いの不動産屋を紹介してくれたから。

そーなんだ?うちらヨハン先生にお世話になりっぱだね。

知り合いが一人でもいると話が早いのはたしかだ。
 
そうよねえ

…甘いもの食べたい。

甘いもの?どんな?

タルトとか?

さっきチョコレート食べただろ?

それはそれー。別腹ですう

ヨハン先生からチェックされるんじゃないのか?

あ…食事記録出さなきゃだ。
あーでもなんかこう食べたいのよ。

なんでスルーするのよ

…ポケットの中。運転してるから取って

フレッドのジャケットのポケットを探ると小さめな固い何かが手にあたるので引っ張り出したらキャラメルの小さい箱だった。

キャラメル!

ぜーんぶくうなよ?

あんがと。

とりあえずそれでちょっとは我慢できるだろ。

フレッドもいる?

オレ今手が離せないから後でいい。

ヨハン先生と待ち合わせをしているらしい場所までナビを頼りに運転してるフレッドはそれどころではないらしい。

ここか?

そうみたい。


不動産屋さんの前でヨハン先生が立って待ってた。立ってるだけなのにベルばらの背景位に薔薇が舞い散って見える雰囲気がすごい。

お前の師匠はいつ見てもクセ強えよな。

フレッドもアレ見える?薔薇が舞ってる背景。

は?なんだそれ。

えーなんて言うか劇画チックなのよね。

見えないけど言いたい事はわかる。

そんなやり取りをしながら駐車スペースに車を停めてヨハン先生の所に向かう。

あら、ひよこ大丈夫なの?

レッスン休んだのに内覧しにきてバツが悪いです。

それはそれ、これはこれ。少しは良くなった?

おかげさまでフレッドがよく効くお薬を持ってきてくれたので楽になりました。

やっぱりあなたのナイトは優秀ね。これはふっかけないと損ね!

ヨハン先生それはやめてください。

フレッドが苦笑いしている。
 
さ、いきましょ。あそこよ?

へ?不動産屋さんは?

あら、わたしがその不動産屋さんも兼ねてんのよ。

…この人ほんとマルチだな。

というか、知り合いが売るか貸すかしたいって話を持ちかけてきたからよ。掘り出し物よー?

へええ

もとからそんなたくさん物件があるわけじゃないし、条件に見合うものなんてなかなかないしね。

その元のオーナーさんは?今どうしているんですか?

ああ。もうご年配の方達だからあんまり広い家は疲れちゃうって。

ほお。

おのおのそれぞれスペースが欲しいんでしょ?

まあ、仕事したりなんたりで使いたいていうのもありますし。

なら、さっさと決めちゃいなさいな。
多分これよりいい物件ないと思うから。

あるきながらヨハン先生とフレッドは話をしている。私は少し後ろを歩いていてぼーっとふたりを見ていた。

似てないようでなんかどっか被る感じというそんなふたり。姿形はまるで違うのになんとなく被って見えるのが不思議だった。

案内された物件は日が差し込んでものすごくいい空気がしてる。

わあ、何ここ。素敵。

あんたもそう思う?

はい。

フレッドは壁をトントンノックしたり小さなボールを転がして傾斜がないか確かめたりとかいろいろしてた。

ピアノを奥様が弾いていたから防音対策もちゃんとしているわよ。

全体の家の雰囲気が柔らかくて品がよかった。

新しい家じゃないけれどしっかりした造りよ?
地区的にも治安はいい方ね。

お好きに内覧なさって。

フレッドは水回りとかドアの軋みとかクローゼットとかあらゆる所を確認して回ってる。

ひよこ。

はい?

あんたここなんか感じる?

空気いいなーって。品がいい空気がします。
ギスギスしてないし。

あんたほんと鼻が利くわよね。

ここいいお値段しますよね?

そうねいいお値段するわね。

でしょうね。

立地も悪くないしね。

フレッドさんはどう?

駐車スペースはありますか?

あるわよ。

夜街灯は?

もちろんあるわ。

セキュリティは?

心配いらないわ。

日が落ちてからもう一度ここにこれますか?

ええ、いいわ。

日が落ちてから?

当たり前だろ?夜歩いて大丈夫なルートかどうか確認しとかないと。

しっかりしてるわね。

ガイドですからそのくらい当たり前です。

ヨハン先生はニヤニヤしてわたしを突いた。

え?なんですか?

あんた大事にされてるわね。

あー、昔、夜帰る時に裏道に引きずり込まれたことがあるんでそれから2人はかなりそういうのに神経質なんです。

まあっ!!

ヨハン先生は頭をよしよしギュッとハグしてくれた。

あたしがいたらブチのめしてるわ。


ヨハン先生。物件的にはとても満足です。多分これ以上のものは出てこないでしょう。値段はまだ知りませんが。後は周辺の確認ができてから話を詰めたい所です。

そうね。買うか借りるかも決めないといけないし。

買うにしても借りるにしても正直あんまり値切り交渉はしたくないな。この雰囲気だと。

でしょうね。元のオーナーが大事にしてたのがわかるから失礼がないようにしないとな。

あら、紳士ね。

礼儀はちゃんとしておかないと
これから住む街ですしね。

そうね。


プラハもパリと同じで物件は即断即決しないといけないらしく、アルベルトにどうするかフレッドはその場で電話を掛けた。

…ああ。うん。
見取り図?ああ。ちょっと待って

ヨハン先生、この家の間取り図あります?

ええもちろん。

…ああ、メールで送る。
ひよこ?いる。代わる?

ぽいってスマホを渡された。

ひよこちゃん?
アルベルト?うん。元気よ。大丈夫よ。
おうち?雰囲気がいいよ。空気が柔らかくて、日差しがキツくない。…えっとそうだね。イイとこの人が暮らしてた感じがするかな。…そうだね。うん。
ギスギスした雰囲気がしないからとっても穏やかな暮らししてたんじゃないかな。
…あー、そうだね。うん。落ち着いた家だよ。
うん。フレッドに代わるね?

…は。マジ?わかった。
夜に歩いてから決める。りょーかい

電話を切ったフレッドは笑っていた。

なんて?

ひよこちゃんが気に入ったんなら間違いないだろうってさ。お前の野生の勘に全幅の信頼を寄せているらしい。ウケる。見てもねえのに笑

わあ。アルベルト、雑ー笑

な。笑える。

ヨハン先生今日の夜は何か予定あります?

ないわ。

よかったら夕食一緒にどうです?

あら、ご相伴に預かれるの?

フレッドがお鍋を作ってくれるって。

鍋?

和食です。

あら!ヘルシーで素敵ね!伺うわ。

それでまたもう一度日が落ちてから歩いてここまで来たいんですが。

ええ構わないわよ。

良い物に巡り合う時は突然だったりする。



































いいなと思ったら応援しよう!